「迷惑をかけずに家で暮らしたい」Kさんの願いは…
そのころの地域ケア会議では、退院に向けての対策をテーマに話し合いました。Kさんは「迷惑をかけずに家で暮らしたい」という希望を持っており、私たち地域包括支援センターも見守りを継続しました。病院からは「市町村のネットワークを構築していく必要がある」、民生委員は「地域住民へ説明をする」などの声が上がり、連携の形ができあがりました。
退院後の今でも定期的に民生委員と連絡を取り合い、状況確認を継続しています。加えて、Kさんや娘さんに電話で状況を聞き、相談に乗るアプローチも続けています。
地域包括支援センターが間に入り、家族、病院、民生委員、警察、自治会(自治会長)の連携をスムーズにすることで、どんなに問題を抱えていても「困ったら施設へ入所してもらう」ではなく、本人の希望どおり在宅生活が送れるようになると実感しました。
◆「病を抱えながら自宅で過ごしたい」
【ALS(筋萎縮性側索硬化症)患者の在宅介護】
■緊急連絡先を把握しておく
■緊急事態が起こった際の対応策を家族・本人と話し合う
■身体の動きや表情だけでなく、想像力を働かせる
◆「病を抱えながら自宅で過ごしたい」利用者の思いを叶えるために――津中央ヘルパーステーションの事例
在宅介護を利用する人のなかには、がん、老衰、身体の不自由な方などさまざまな方がいます。そのため、病気への知識を深めながら少しでも苦しみをやわらげ、最適なケアをしなければなりません。中でも、難しかったのが、ALS(筋萎縮性側索硬化症)の利用者です。
ALSとは、特定疾患の中に定められている難病の一種で、手足の筋力低下、嚥下、構音障がいの発症が多く、身体全体の筋力が低下する病気です。8割の患者は発症後5年以内に死亡するといわれており、球麻痺のため、人工呼吸器の装着が必要となります。
妻と2人暮らしの利用者・Oさんも、ALSを発症し、自宅で療養していました。当初は、2時間支援を週2回実施、ホームヘルパーを2人派遣して、食事介助や口腔ケア、排泄ケアを担当しました。