開成の元校長として伝えたい…子に悪影響を与える、親の一言

自己肯定感は「成功体験」から作られるものですが、成功体験とは単純に「勝つこと」「うまくいくこと」ではありません。むしろ、敗北や失敗が不可欠なのです。開成中学校・高等学校の校長を9年間務めた筆者が、思春期の男の子の「自己肯定感」を高め、その子の能力を開花させる方法を紹介します。※本連載は、東京大学名誉教授の柳沢幸雄氏の著書『男の子の「自己肯定感」を高める育て方』(実務教育出版)より、一部を抜粋・再編集したものです。

「頑張っても成果が出ない」期間に起きている大変化

あらゆる成長には段階があり、【図表】のグラフに示したような曲線を描くことが知られています(『【図表】成長曲線・学習曲線』参照)。これは「成長曲線」と呼ばれるS字カーブで表され、みなさんも実感を持って理解できることだと思います。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

例えば、ピアノのレッスンを始めたとき、最初は指もうまく動かず、練習してもなかなか思うように弾けるようにはなりません。そこをぐっとこらえて練習し続けると、気がつけばちゃんと指が動くようになっている。「この鍵盤がド、この鍵盤がファ」などと意識しなくても、自然とその鍵盤に指が動くようになっているのです。

 

そうなると、いろいろな曲が弾けるようになりますから、目に見える成長が急激に起きます。ピアノでピンとこないなら、パソコンのキーボードも同じです。最初はキーの配列を意識していたはずが、今では自由に文字が打てているのではないでしょうか。

 

大切なのは、最初の準備期間です。この期間の成長は、自分にも周囲にも見えません。ですから非常につらい。「こんなに頑張っているのに、ちっとも成長しない」と感じてしまうからです。

 

【図表】のグラフの真っ平らな準備期間は「雌伏(しふく)期間」とも呼ばれます。これは雌の鶏が卵を抱いている時期のこと。鶏は21日で羽化しますが、その間、外からは何の変化も見えません。しかし卵の殻の中では、大きな変化が起きているわけです。

 

最初はただの「黄味」でしかなかったのが、20日が近づくにつれて、殻の中の雛はしっかり成長し、ちゃんとクチバシも羽もできて、外に出る日を今か今かと待っているのです。同じような劇的な変化が、この最初の準備期間に起こります。それはピアノのように技巧的なものだけでなく、勉強や運動でも同じ。頭や体の中では、目に見えない変化が起きているのです。

 

【図表】成長曲線・学習曲線

つらい準備期間こそ親の出番…わが子にかけるべき言葉

この準備期間に耐えられれば、次の劇的な成長につながるのですが、ここをこらえるのが厳しいために、挫折してしまう人が多いのも事実です。例えば英語のヒアリングなどは、勉強をスタートしてもすぐには聞こえるようになりません。

 

しかし、ずっと聞いていると、あるとき単語が1つひとつ分かれて聞こえるようになります。そこまでは、勉強している子どもも苦しい。そんなときに「ヒアリングの成績上がらないわねぇ」などとマイナス発言をされれば、子どもはやる気を失ってしまいます。

 

この準備期間こそ、親が適切な声かけをするタイミングです。鶏の雌伏期間の話をしてもいいですし、過去に子どもがした経験を例に出すのもいいでしょう。例えば、自転車。

 

「最初は補助輪がなきゃダメだったし、補助輪外したらよくひっくり返っていたよね。だけど、あるときからパッと乗れるようになったでしょう。それと同じことがヒアリングでも起こるんだよ」

 

そんなふうに伝えることができれば、子どもも「それならもう少し頑張ろう」という気持ちになることができるはずです。親ができるのは、つらい準備期間に「ここを踏ん張れば、ちゃんと目に見える成長が起きる」と、口に出して伝えてあげることなのです。

「停滞期」を乗り越えた経験が、自己肯定感を育む

最初の準備期間を無事超えて、目に見える成長ができたと言っても、そこで終わりではありません。そのまま成長し続けてくれればいいのですが、そううまくはいかないものです。必ずと言っていいほど、「停滞期」は訪れます。これを人々は「壁」と呼びます。人によって壁の程度は様々ですが、ピアノであれば「曲は弾けるようになったけれども、うまくは弾けない」「発表会でミスしてしまう」「コンクールで勝てない」などになるでしょう。

 

そしてこの壁も、じつは最初と同じ準備期間なのです。壁で止まってしまえば、第1段階の成長で終わってしまいますが、ここでもう一歩努力すると、次の第2段階に上がることができます。もちろんこの壁を乗り越えるのは、とても苦しい。しかし、一度でも成功体験があれば乗り越えられる。これが「自己肯定感」につながります。

 

「できなかったことが、頑張っているうちにできるようになった」という経験をしていれば、「たぶん、これももうちょっと我慢して頑張れば、できるようになるに違いない」と思うことができます。そう思えれば続けられる。そうすれば、同じように「気づいたらできていた」ということが起こります。

 

このように考えると、何か1つでも成功体験があるということは非常に大切です。自己肯定感を高め、自分に自信を持つことで、成功の波を乗りこなすことができるようになるからです。親の声かけは、子どもの準備期間にこそ必要です。結果が出たときに褒めるのもいいのですが、子どもにとって必要なのはむしろ、結果が出ていないときの声かけなのです。

 

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東京大学 名誉教授
北鎌倉女子学園 学園長 

1947年生まれ。前・開成中学校・高等学校校長。東京大学名誉教授。開成高等学校、東京大学工学部化学工学科卒業。71年、システムエンジニアとして日本ユニバック(現・日本ユニシス)に入社。74年退社後、東京大学大学院工学系研究科化学工学専攻修士・博士課程修了。ハーバード大学公衆衛生大学院准教授、併任教授(在任中ベストティーチャーに複数回選出)、東京大学大学院新領域創成科学研究科教授を経て、2011年4月から2020年3月の9年間、開成中学校・高等学校校長を務める。2020年4月より北鎌倉女子学園学園長に就任。

シックハウス症候群、化学物質過敏症研究の世界的第一人者。自身も2人の男子を育て、小学生から大学院生まで教えた経験を持つ。

主な著書に『母親が知らないとヤバイ「男の子」の育て方』(秀和システム)、『東大とハーバード世界を変える「20代」の育て方』(大和書房)などがある。

著者紹介

連載グローバル社会に通用する子を育てる!「自己肯定感」を高める思春期教育

男の子の「自己肯定感」を高める育て方

男の子の「自己肯定感」を高める育て方

柳沢 幸雄

実務教育出版

日本の高校生は世界一。しかし、そこから先は海外の学生に抜かれてしまう…。そこには「自己肯定感」が大きく関係しているのです。 男子教育のスペシャリストである開成(東大合格者数39年連続1位!)の元校長先生が、ハー…

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