グローバル社会を生き残る人材には、学習意欲やチャレンジ精神が不可欠です。しかし、それらを発揮するには、本人が「自己肯定感」をもっていなければなりません。開成中学校・高等学校の校長を9年間務めた筆者が、思春期の男の子の「自己肯定感」を高め、その子の能力を開花させる方法を紹介します。※本連載は、東京大学名誉教授の柳沢幸雄氏の著書『男の子の「自己肯定感」を高める育て方』(実務教育出版)より、一部を抜粋・再編集したものです。

自己肯定感を育てる第1歩…「ダメ」と言わない

すでに大きくなったお子さんの自己肯定感を育てることは、難しいように思えます。しかし、そんなことはありません。さまざまな刺激に敏感な年代だからこそ、小さなアクションでも大きく影響を及ぼすことができるのです。

 

私がまずお伝えしたいのは、「ダメ」と言わないことです。思春期を迎えたお子さんの自己肯定感を育てるのに、何から始めたらいいか迷ったら、まずここから始めてください。なぜなら親御さん自身が自覚している以上に、息子さんへのダメ出しをしているはずだからです。

 

「ダメ」という言葉について、ちょっと考えてみましょう。提案する側というのは、自分の周りに存在するあらゆる可能性の中から、1つを選んで提示します。それが10個、50個、100個、無限に、という場合もあるでしょう。それぞれの可能性の良し悪しを検討した上で、通常1つの案に絞るわけです。

 

みなさんも仕事で何か提案や企画をしなければならない場合、テーマ、予算、納期、人材など、あらゆる要素を勘案して、1つの提案にまとめているはずです。料理にも似たような部分があります。素材、切り方、調味料、調理法など、無限にある中から方法を決めて、1つのおかずを仕上げるわけです。提案というのは、無限の可能性から1つのものを取り上げる行為と言ってもいいでしょう。

 

一方、ダメ出しはそうではありません。上記の過程を経て提示された1つのものに対しての可否を、上から判断するだけです。たった1つのことだけを考えればいいのですから、これは提案と比べればとても簡単なことです。

 

ですから私は、昔からただダメ出しをするだけの人は信用しないようにしています。これほど単純で、配慮を欠いたものの言い方はないからです。もし、手間暇かけてつくったおかずに、旦那様から一言「まずい」と言われたらどうでしょう…。ダメ出しされる息子さんも、そんな気持ちになっているのです。

 

ただ一言「ダメ」というだけでは(※写真はイメージです/PIXTA)
「ダメ」の一言だけでは、ただ考える機会を奪うだけでデメリットしかない(※写真はイメージです/PIXTA)

どうしても「ダメ出し」をするときのコツ、2つ

もちろん、息子さんが何か提案してきたときに、ダメ出しをしなければならないこともあるでしょう。その場合にできることは2つあります。

 

1つは、提案のいい部分を認めること。

もう1つは、代案を出すことです。

 

ダメと言うからには、「良いこと」がわかっているはずです。そうであるならば、親自身が考える良いことを必ず伝える。それがフェアなやり方です。

 

「この部分は面白いけど、こっちのほうがいいと思うよ。だって、この部分で優れているから」という会話ができれば、息子さんも納得するはずです。頭ごなしのダメ出しでは、親子ともに考える機会を失ってしまいます。

 

日本では、単なるダメ出しが「あの人ははっきりものを言う」というように、肯定的な評価を受けることがあります。これは馬鹿げたことです。代案のないダメ出しが、新しい物事を生み出すことは決してないのです。「ダメ」が思考と関係性を閉ざすということを、覚えておいてください。

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男の子の「自己肯定感」を高める育て方

男の子の「自己肯定感」を高める育て方

柳沢 幸雄

実務教育出版

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