学習意欲やチャレンジ精神には「自己肯定感」が不可欠です。自己肯定感がどう育つかは「親次第」、つまり家庭での教育が重要です。開成中学校・高等学校の校長を9年間務めた筆者が、思春期の男の子の「自己肯定感」を高め、その子の能力を開花させる方法を紹介します。※本連載は、東京大学名誉教授の柳沢幸雄氏の著書『男の子の「自己肯定感」を高める育て方』(実務教育出版)より、一部を抜粋・再編集したものです。

自己肯定感を高め、生きる力の土台を築く「お手伝い」

すでに思春期を迎えた息子の自己肯定感を、具体的にどのように伸ばしていけばいいのか。簡単に家でできるのは、お手伝いをさせることです。「これは自分がやらなければならない」というものを、毎日の生活の中につくるのです。

 

例えばペットの世話や散歩、お風呂掃除や皿洗いなど毎日の家事を分担してもらうのもいいでしょう。また男手がありがたい新聞やダンボールを束ねて出すことは、だんだん力仕事が億劫(おっくう)になってくる親世代にはありがたいはず。男の子が好きな家事である、靴磨きや自転車のメンテナンスなどもいいですね。こういった母親が見過ごしがちな家事の担当になってもらうのはいいものです。

 

このように、家事をきちんと担当させることが、子どもの自己肯定感を上げてくれます。そのために必要なのは、言葉にしてきちんと褒めること、お礼を言うこと。できるだけ具体的に言葉にしてください。ルーティーンになってくると、つい褒めることを忘れがちですが、あえて言葉にして伝える努力を惜しまないようにしましょう。

 

「いつも湯船がキレイでうれしいわ」「靴磨きはつい忘れちゃうから、助かる!」「タイヤに空気がちゃんと入っていると、走りやすいわね〜」など、なんでもいいのです。感謝されることで、子どもは自分の存在感を得ることができます。

 

私の子ども時代は、家事は当たり前に生活の中に組み込まれていました。小学校時代、遊ぶときには妹や弟を背中にくくりつけて遊んでいた子が多くいました。それだけ子どもの数も多く、親も手が回らなかったので、子どもは家事の担い手でした。ですから、子どもたちは、「自分がいないと親が困る」と感じていました。それは自己肯定感を自然に育むことにつながっていたのです。

 

不器用な男の子のお手伝いは、ともすると「してもらわないほうが家事が進む」ということにもなりかねません。でも、そこはぐっとこらえて担当してもらいましょう。のちのちラクができます。「お手伝いはいいから勉強して」ということが日常になると、子どもは「自分はお手伝いをしないほうが母親は助かる」という価値観を身につけてしまいます。

 

将来の1人暮らしのためにも、伴侶(はんりょ)を見つけた後のためにも、掃除、洗濯、料理といった生活の基本を身につけていなければ、その子自身が苦労することになります。お手伝いは、自己肯定感を育むだけでなく、その後の生活を支える土台をもつくってくれます。親が思う以上に、お手伝いは子どもにとって大切なことなのです。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

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男の子の「自己肯定感」を高める育て方

男の子の「自己肯定感」を高める育て方

柳沢 幸雄

実務教育出版

日本の高校生は世界一。しかし、そこから先は海外の学生に抜かれてしまう…。そこには「自己肯定感」が大きく関係しているのです。 男子教育のスペシャリストである開成(東大合格者数39年連続1位!)の元校長先生が、ハー…

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