自己肯定感を高め、生きる力の土台を築く「お手伝い」
すでに思春期を迎えた息子の自己肯定感を、具体的にどのように伸ばしていけばいいのか。簡単に家でできるのは、お手伝いをさせることです。「これは自分がやらなければならない」というものを、毎日の生活の中につくるのです。
例えばペットの世話や散歩、お風呂掃除や皿洗いなど毎日の家事を分担してもらうのもいいでしょう。また男手がありがたい新聞やダンボールを束ねて出すことは、だんだん力仕事が億劫(おっくう)になってくる親世代にはありがたいはず。男の子が好きな家事である、靴磨きや自転車のメンテナンスなどもいいですね。こういった母親が見過ごしがちな家事の担当になってもらうのはいいものです。
このように、家事をきちんと担当させることが、子どもの自己肯定感を上げてくれます。そのために必要なのは、言葉にしてきちんと褒めること、お礼を言うこと。できるだけ具体的に言葉にしてください。ルーティーンになってくると、つい褒めることを忘れがちですが、あえて言葉にして伝える努力を惜しまないようにしましょう。
「いつも湯船がキレイでうれしいわ」「靴磨きはつい忘れちゃうから、助かる!」「タイヤに空気がちゃんと入っていると、走りやすいわね〜」など、なんでもいいのです。感謝されることで、子どもは自分の存在感を得ることができます。
私の子ども時代は、家事は当たり前に生活の中に組み込まれていました。小学校時代、遊ぶときには妹や弟を背中にくくりつけて遊んでいた子が多くいました。それだけ子どもの数も多く、親も手が回らなかったので、子どもは家事の担い手でした。ですから、子どもたちは、「自分がいないと親が困る」と感じていました。それは自己肯定感を自然に育むことにつながっていたのです。
不器用な男の子のお手伝いは、ともすると「してもらわないほうが家事が進む」ということにもなりかねません。でも、そこはぐっとこらえて担当してもらいましょう。のちのちラクができます。「お手伝いはいいから勉強して」ということが日常になると、子どもは「自分はお手伝いをしないほうが母親は助かる」という価値観を身につけてしまいます。
将来の1人暮らしのためにも、伴侶(はんりょ)を見つけた後のためにも、掃除、洗濯、料理といった生活の基本を身につけていなければ、その子自身が苦労することになります。お手伝いは、自己肯定感を育むだけでなく、その後の生活を支える土台をもつくってくれます。親が思う以上に、お手伝いは子どもにとって大切なことなのです。