インドは中国に次いで世界第2位の14億人の人口を誇る。豊富な人口に加え、平均年齢が27歳と中国より10歳若く、中国経済が減速する中、インドの本格的な成長が期待されている。今後、インドは世界市場の「最後の成長のエンジン」となれるのか。日本企業は成長の果実を得ることができるのか。本連載はグルチャラン・ダス著『日本人とインド人』(プレジデント社)の抜粋原稿です。

トヨタの強さはサービス力と販売力

グルグラム(グルガオン)はデリーから車で30分のところにあり、日本人駐在員が多く暮らしている経済都市です。そこで見たトヨタの販売店はかなりの実績を上げていました。

 

販売店はカーディーラーです。メーカーではなくサービス業の範疇に入ります。トヨタがインドで車を売って実績を上げているのは、サービス業として優れたカーディーラーを抱えているからでしょう。

 

インドで関税125%のレクサスを売りまくるトヨタ。(※写真はイメージです/PIXTA)
インドで関税125%のレクサスを売りまくるトヨタ。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

そのひとつが私が見たMGFトヨタでした。MGFトヨタは1960年に設立され、自動車販売事業の他、不動産事業、ショッピングモールの開発等も行っています。

 

2000年にトヨタの第1号ディーラーになったときの従業員数は23名でしたが、現在は1100名。また、2000年の販売台数は900台で、かつ点検、修理などサービスをした車両は2800台に過ぎなかったのが今では販売が4200台、サービスは6万5600台の入庫となっています。

 

店舗数はグルグラムに5店、デリーに1店。同社は販売よりもサービスを重視しているようで、従業員のうち、販売担当が200名ほどなのに対して、サービス担当の陣容は870名以上にのぼっています。

 

2019年上半期(1~6月)のインド自動車市場は、2018年に比べると10パーセント減と縮小していますが、MGFトヨタは前年比20パーセント増を達成しているとのこと。そのうえ、同社は高級車レクサスの販売でも好調を維持しています。インドで造った車にはむろん輸入関税はかかりません。しかし、レクサスのような高級車を輸入すると125パーセントの高関税がかかります。日本で買う倍以上の高価な車を売ってしまうのだから、MGFヨタはサービス力と販売力のある会社なのでしょう。

 

ちなみにインドにおける自動車の販売シェアは次の通り。トヨタのシェアはまだ小さいですが、売っている車は他よりも高価です。

 

1.マルチ・スズキ・インディア 48.2%
2.ヒュンダイ 16.0%
3.マヒンドラ・アンド・マヒンドラ 13.2%
4.タタ 5.6%
5.ホンダ 5.0%
6.トヨタ 4.2%
7.フォード 2.5%
8.ルノー 2.3%

 

見たところ、MGFトヨタは点検修理サービスに力を入れていて、しかも、他の販売店にはない特長がありました。

 

ひとつは徹底した顧客志向です。「お客様は神様です」を実践していました。

 

予約した客が車を持ってきたら、入り口の警備員が全店の従業員に向けてゲートインを知らせる。その後、すぐに世話係が飛んできて、入庫、客との面談、点検修理箇所のチェックなどを済ませる。点検、修理に入るのはそれからです。マンツーマンで客の世話をします。

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日本人とインド人

日本人とインド人

グルチャラン・ダス

プレジデント社

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