驚異の2台に1台!インドでスズキ車が異常に愛される理由

インドは中国に次いで世界第2位の14億人の人口を誇る。豊富な人口に加え、平均年齢が27歳と中国より10歳若く、中国経済が減速する中、インドの本格的な成長が期待されている。今後、インドは世界市場の「最後の成長のエンジン」となれるのか。鈴木修・スズキ会長がインドについて、世界の自動車産業の未来について語る。本連載はグルチャラン・ダス著『日本人とインド人』(プレジデント社)の抜粋原稿です。

幹部と社員に壁を作る「個室は絶対認めない」

スズキは今年(2020年)、100周年です。当社がインドに進出したのが1983年ですから、すでに40年近くが経っていることになります。おかげさまでインドで走っている車の半分は、スズキの車になっています。

 

2019年、インドの自動車産業は経済成長の鈍化で売れ行きが伸びませんでしたが、今後はまたさらに成長していくでしょう。

 

スズキがインドに進出して40年。インドで走っている車の半分がスズキ車」と鈴木修・鈴木会長。
「インドに進出して約40年。インドで走っている車の半分がスズキ車です」と鈴木修・スズキ会長。

 

インドに進出したとき、私が折衝した相手はインド政府の官僚でした。日本の官僚と同じように、国を代表して事にあたるという気概を持った方だった。四角四面の人で、ジェントルマンでした。インド人らしさや、自分の個性を出すことなく、国の代表としての意識が強かった。

 

ただ、いざ、会社を設立して、仕事を始めたら、インドの人たちは変わりましたね。悪く変わったわけではなく、インドの慣習、風習が前面に出てきました。

 

たとえば、工場は「日本的な経営にする。スズキが全面的に運営する」はずだったのですが、こちらに無断でボードメンバーやマネジャークラスは自分たちの個室を作っていました。

 

私は言いました。

 

「事務所のレイアウトは日本流でやると約束したじゃないか。幹部と社員の間に壁を作るような個室は絶対に認めない」

 

すでにでき上がっていた個室の壁を全部取り払い、大部屋にして執務するように変えさせました。

 

これはグルグラム(グルガオン)の工場の話です。

 

当社が進出した1980年代の初め頃は、まだカースト制度が残っていました。当初、幹部たちは生産現場のワーカーと同じ食堂で食事をするのを嫌がりました。幹部たちはワーカーが食堂で列を作って並んでいるのを事務所の二階から見下ろして、なんともいえないといった顔をしていましたよ。

 

これはもう率先垂範しかありません。私以下、日本人出張者、駐在員が同じ作業服を着 て、ワーカーの列の最後尾に並び、自分の順番が来るまで待ちました。

 

私が毎月、インドへ行って、食堂の列に並ぶものだから、半年もしたら、上のカーストのマネジャークラスも黙ってワーカーの列の後ろにつくようになりました。

 

今は、それが当たり前になりました。ですから、私は思うのです。インド人に限らず、人間の心はどこへ行っても変わらないですよ。変わったのは風習であり、慣習だと思います。

 

スズキの車がインドで売れているのは運がよかったことに尽きます。そして、私たちなりに、かなりな努力をしたこともよかったのかな、と。むろん、インドのみなさんの力添えがあったからこその話ですが。

著述家、経営コンサルタント

著述家、経営コンサルタント(特に企業のグローバル戦略)。「タイムズ・オブ・インディア」に定期的にコラムを執筆。「ウォールストリート・ジャーナル」、「フィナンシャル・タイムズ」などに随時寄稿する世界知識人の一人。ハーバード大学哲学・政治学科卒業、ハーバード・ビジネス・スクールで学ぶ。リチャードソン・ヒンドスタンの会長兼最高経営責任者(CEO)、プロクター&ギャンブル(P&G)インディ アのCEO、P&G本部の経営幹部(戦略企画担当) を務めた。小説『A Fine Family』(ペンギン)、劇作集『Three English Plays』 (オックスフォード大学出版局)、エッセー集『The Elephant Paradigm』(ペンギン)などがある。ニューデリー在住。

著者紹介

連載インドは「世界の成長エンジン」になり得るか?

日本人とインド人

日本人とインド人

グルチャラン・ダス

プレジデント社

インドは中国に次いで世界第2位の14億人の人口を誇る。豊富な人口に加え、平均年齢が27歳と中国より10歳若く、中国経済が減速する中、インドの本格的な成長が期待されている。今後、インドは世界市場の「最後の成長のエンジン…

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