本当に「住み心地のいい家」「理想の家」とは何か
・耐久性の高い家
30年以上も住宅ローンを払い続けて、払い終わった頃には、柱や土台の腐食やシロアリ被害など、構造材に問題が生じてしまう。それではあまりにも悲しすぎます。本来、木造住宅というものはもっと長持ちするものです。
木という素材が持つもともとの性質を無視して、柱と柱の間に断熱材を入れる内断熱工法で家を造るようになってから、このような事態が多く見られるようになりました。内断熱工法では、柱などの木材が空気に触れず、カビやそれをエサにするダニが発生しやすくなります。また、壁の中で発生した結露により腐朽菌が発生し、構造材そのものが腐り、住宅の寿命を縮めていたケースもあるのです。
いくらボルトなどの金具で補強しても、もとの柱や土台がボロボロに腐ってしまっていたら、耐震性・耐久性の高い家になるはずがありません。
木を腐らせないようにするためには、とにかく空気に触れさせることが一番です。柱の外側にすき間なく断熱材を張り巡らせる外断熱工法なら、壁内の温度や湿度が一定に保たれ、結露の発生が抑えられます。また壁内が空洞になるので柱が直接空気に触れると、木材の調湿機能がより高まります。
ひき板や小角材を接着剤で組み合わせた集成材の場合は、年月を経た後の耐久性が不安ですが、無垢材であれば、100年経っても200年経っても丈夫な木造住宅は理論的に可能です。外断熱工法を用い、無垢材の特性をさらに活かした家を建てれば自然と高耐久の家になるのです。
・壊れない家ではなく、揺れない家
また、いい家の条件として、地震対策がしっかりと施されているということがあります。1981年以降の新耐震基準で造られた住宅であれば、震度6程度までの揺れには耐えられると言われていますが、日本の国土はいつ大地震が起こってもおかしくない状況にあります。万が一の事態に備えるに越したことはありません。
住宅における地震対策の考え方は大きく分けて3つあります。
まずは耐震。これは柱や梁、土台などの構造材同士を金具などでがっちりと固定したり、壁を筋交いや合板などで補強したりして、建物自体の強度を高め、損傷や倒壊を防ぐことを目的としています。地震のエネルギーは減衰されず、そのまま建物に負荷がかかるので大きく揺れ、また建物自体へのダメージも大きく、疲労が蓄積するため耐震性が下がります。また、揺れ自体は減衰しないので、室内の家具の転倒などによってケガをする可能性もあります[図表1]。
次に制震。これは建物の壁の中に、揺れや衝撃を吸収する制震ダンパーなどの装置をつけ、建物にかかるエネルギーを抑えることを目的にしたものです。建物の損傷や倒壊の防止だけでなく、テレビや家具などの転倒や壁のヒビなどの損傷被害の軽減も可能です。また室内で体感する揺れも低減し、家具の転倒なども起こりにくくなります[図表2]。
そして免震。これは、建物と地盤との間に鋼球や積層ゴムなどの免震装置を設置し、揺れを伝えにくくする仕組みです。建物にかかる衝撃は最小限に抑えられますが、地盤改良が余計にかかったり、土地にある程度の広さがないと適用できなかったり、それらの条件をクリアして工事を進めたとしても、300万〜400万円ほど金額がアップしてしまったりと、そう容易に導入できるものではありません。また、免震構造の建物は、工法によっては風の影響も受けるので環境によっては向き不向きがあります[図表3][図表4]。
誤解されやすいのですが、地震自体の大きさと建物の揺れ方は必ずしも比例しません。その土地の地盤の固さや、建物自体の固さによって、共振しやすい地震の周期というのは異なります。たまたま自分の家と共振する周期の地震が発生した場合、ほかの家と比べて大きく揺れるということがあるのです[図表5]。
ちなみに東日本大震災のときは、新宿にある超高層ビル群が長周期地震動と共振して大きく揺れましたが、首都圏の一般の住宅は長周期地震動の影響はほとんど受けませんでした。
住宅には耐震等級という建物がどの程度の強度かを示す3段階の基準があります。耐震等級1が建築基準法の基準を満たした等級で、さらに強度が上がれば耐震等級2、3と上がりますが、耐震等級1の家と2の家に、同じ地震の揺れを与えた際、より強度のある等級2の家の方が壊れてしまったという実験結果もあるのです。
いつどのような周期の大地震が来るかはわかりません。同じ金額をかけて地震対策をするのであれば、がちがちに家を固める耐震工法にするよりも、実際に住宅にかかる揺れそのものを吸収する制震工法のほうが効果的と言えるでしょう。適切な地震対策が施されていれば、住宅の寿命がさらに延びることにもなります。