高度医療まで対応できる病院が望まれている
高度医療に対する飼い主のニーズは近年、大きく強まっており、かかりつけの動物病院を選択する際の判断材料としても重視され始めています。
たとえば、NTTナビスペースが平成21年8月に行った「獣医療に関するアンケート」の中では、「あなたが獣医師に求める治療技術の水準はどのくらいですか、次の中から近いものを一つ選んでください」という質問が行われており、それに対して、以下のような回答結果が示されています。
【獣医療に関するアンケート結果】
③の回答の割合の高さが示すように、「専門の病院にわざわざ行かないでもすむように、かかりつけの動物病院で高度医療に対応してほしい」という要望をもつ人は少なくありません。そのような飼い主の要望への対応を前向きに考えるのであれば、最新医療設備を積極的に導入するスタンスが求められることになるのかもしれません。
もっとも、医療機器の導入は予算とのかねあいもありますし、無理をして購入をすれば、後々、病院の資金繰りが苦しくなるおそれがあります。そもそも、医療機器は技術革新のスピードが速いために短期間での性能向上が期待でき、「1年待っていたら、求めていた機能を備えた機械が低価格で入手できた」ということがよくあります。したがって、高額な医療機器の導入に関しては、最新情報などに目を配りながら、どのタイミングで購入するべきかを慎重に検討することをおすすめします。
病院と自宅の兼用で住宅ローンの利用が可能に
開業時に、テナントを借りるのではなく、土地を購入して動物病院を建てることを選択する場合には、病院を自宅と兼用にすることも検討してみましょう。病院を自宅とすることにより住宅ローンの利用が可能となるからです。
一般に、住宅ローンには以下に挙げるような大きなメリットがあります。
①資金調達の可能性が広がる
後述するように、獣医師に対する融資について民間の金融機関はなぜか消極的です。そのため、十分な自己資金がない場合には、開業資金を公的な融資か親からの援助などに頼らざるを得ません。しかし、住宅ローンを利用できるのであれば、資金調達の選択肢が増えることになります。
②他の融資に比べて条件がよい
住宅ローンは利率が低く、返済期間も20年、30年と長期であるのが一般的です。
③税務上のメリットがある
住宅ローン控除などの税制上の優遇措置が用意されています。
もっとも、一般に、総面積の50%以上が住居として利用されることが、住宅ローンの融資条件となるので、自宅との兼用を考える場合には建物の構造に十分な注意を払う必要があります。たとえば、「病院に必要な面積を確保しようとすると、50%を超えてしまう」というような場合には住宅ローンの利用を断念しなければなりません。
また、すでに住宅ローンを利用している場合には、さらに別の住宅ローンを使うことはできません。そのため、どうしても自宅と兼用したいという場合には、まずは既存の住宅ローンを一括返済することが必要となります。
なお、たとえば1階を病院として、2階、3階を住宅とするようなケースでは、1階部分については事業者ローンを利用するよう求めてくる金融機関が、近時増えています。自宅と兼用する場合、このように住宅ローンと事業者ローンを組み合わせることになる可能性があることも認識しておく必要があるでしょう。