実は侵入窃盗が増えている病院などの医療機関
動物病院は基本的に外部に対して開かれた構造となっていることから、不特定多数の人が建物や敷地内に入ることが容易です。そのため、駐車場に置かれた車が何者かにいたずらされたり、不審者が侵入し窃盗を試みるなど、犯罪被害にあうリスクが少なくありません。
動物病院ではなく一般の病院・医院に関するデータになりますが、平成23年における、病(医)院診療所での刑法犯は9359件であり、うち殺人や強盗などの凶悪犯が38件、暴行や傷害など粗暴犯は472件、侵入窃盗は1947件発生しています。他の犯罪が減っており、侵入窃盗全体も減少している中で、病院など医療機関の侵入窃盗は大きく伸びています。その背景としては、「医療機関の防犯意識の低さ」も指摘されています。
犯罪者からみれば、警戒心に乏しい医療機関は“格好のターゲット”ということになるのでしょうが、スタッフの身の安全を守るためにも、防犯対策に力を入れること、具体的には警備会社などによって提供されている防犯システムを導入することが必要となります。院外はもちろん院内にも防犯監視カメラを設置することで、入院している動物たちの安全も守ることが可能となります。
また、パソコンやiPadなどのタブレット端末、スマートフォンなどに映像が転送される仕組みになっているのであれば、防犯カメラを通じて、動物たちに異常がないかどうかを、自宅や出先で確認することもできるでしょう。しっかりとした防犯対策がとられていることをアピールできれば、愛犬や愛猫を預ける飼い主に対しても強い安心感やよい印象を与えることができるでしょう。
医療行為以外での付加価値が求められる動物病院
本連載の第10回でCS(Customer Satisfaction)について触れましたが、通院するペットの飼い主の満足感を高めるという観点からは、ペットサロンやあるいはペットホテルを併設することを積極的に検討してみてもよいかもしれません。
まず、ペットサロンについては、プードルやダックスフントなど、現在、ペットとして飼われている犬の多くはトリミングを必要としています。行きつけのペットサロンがあるという場合は別として、「トリミングをしてもらえるならどこでも」という人であれば、病院にペットサロンが併設されていれば「診療と同時にトリミングもしてもらえるので便利だ」と思うはずです。
一方、ペットホテルについては、飼い主を対象とした各種アンケートからも、その強いニーズが窺われます。たとえば、「ペットの為の総合情報サイト」を謳う「ペット情報局」で「医療行為以外で病院に望むことはなんですか?」というアンケートを行ったところ、「親身な対応」(18%)、「アドバイス・指導」(16%)、「相談・相談しやすい環境づくり」(11%)、「しつけについて」(11%)の次に「一時預かり・ペットホテル」(4%)があがりました。
たしかに、突然の出張や旅行などの予定が入ったときにかかりつけの動物病院で預かってもらえるのであれば、飼い主の立場としては大変に安心です。また、これらの施設があることは、既存の患者の満足度を高めるだけでなく、新たな患者の獲得につながることも期待できます。ペットサロンやペットホテル目当てで訪れた人たちの多くは、ペットが病気になったりケガをした場合にはそのまま病院で診療を受ける可能性が高いからです。