いつまでも昭和と思うなよ…「働けばいい」は夫の免罪符か

産後の夫婦関係はその先何十年を左右する。日本では「産後うつ」になる女性が30%を超えるが、男性のサポートが得られなかったことも大きな原因だろう。産婦人科院長を務める著者が、夫婦で仲良く過ごすための男性からの働きかけのヒントを伝授する。本連載は、東野産婦人科院長の東野純彦氏の著書『知っておくべき産後の妻のこと』(幻冬舎MC)から一部を抜粋した原稿です。

産後の身体はデリケート…ヒステリーと呼ばないで

髪が抜け落ちたり、シミが増えたり、肌がカサカサになったり……。赤ちゃんを産んだ女性は、今までに経験したことのない変化に驚きます。その原因は女性ホルモンです。女性ホルモンには女性らしさを生み出すために欠かせない「エストロゲン」と妊娠を助ける「プロゲステロン」の2種類があります。女性はこの二つのホルモンがうまくバランスを取れている状態で、日常生活を送っています。

 

ところが、出産をするとこのバランスは大きく崩れ、エストロゲンが減少します。厳密にいえば、妊娠~出産時にかけてどんどん分泌されていくエストロゲンは出産時にピークを迎え、赤ちゃんを産んだあと一気に減ってしまうのです。なぜなら、エストロゲンには、母乳の分泌を抑える働きがあるからです。

 

産まれたばかりの赤ちゃんにとって、母乳はまさに命綱。そのため女性の身体は「母乳の分泌を増やさなければ」と自動的にエストロゲンの働きを弱めるというわけです。このようにして女性の身体は分娩をした瞬間に「母親」に切り替わるのです。

 

また、「子どもの世話をしようとしているのに、妻が嫌な顔をする」といった声を耳にすることがよくあります。「せっかく寝かしつけたのに、あなたの足音で起きてしまった」「あなたのいびきがうるさいから子どもが夜泣きをする」など、ほんのささいなことで妻から怒鳴られてしまい、やがて夫は育児参加をしなくなり、夫婦関係も悪化してしまう……。このようなケースは少なくありません。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

「こっちだって努力しているのに、なんでそんな言われ方をしなきゃならないんだ!」と、別人のように変わってしまった妻を理解できず、「産後、奥さんがヒステリーになっちゃって大変」という男性もいるのではないでしょうか。

なぜ夫は「父親」になってくれないの?

その原因は、別名「愛情ホルモン」ともいわれる「オキシトシン」の働きによるものです。オキシトシンとは男女問わず体内に生成されるホルモンで、セックスと分娩のときに最も分泌されます。さらに、産後間もない母親は授乳中など、わが子と密着してゆっくりした時間を過ごしている間によく働いていることが、あらゆる研究から明らかになっています。

 

つまり、オキシトシンが十分に分泌されれば、赤ちゃんやパートナーを愛おしく感じ、愛情を深めていくことができるのです。このようにして人と人の絆をつくることから「愛情ホルモン」と呼ばれているというわけです。

 

そんな別名があるにもかかわらず、なぜオキシトシンが産後の母親を別人にさせるのか。それは、わが子への愛情が深まるのと同時に「わが子を守ろう」と母親の攻撃性をも高めてしまう作用があるからです。

 

これは動物的本能であり、決して母親がヒステリーになっているのではありません。よく、子育て中の動物は気が立っているといわれますが、人間にも同様の時期があります。「他人の衛生状態が気になって、誰にもわが子を触られたくない」「実の親でさえ抱っこさせたくない」「他人に赤ちゃんを取られるかもしれない」そんな感情が生まれることで、パートナーの夫にさえ攻撃的になってしまうというわけです。

 

まさに野生動物のメスが外敵に「ガルガル」と威嚇をし、子どもを守ろうとする様子に似ていることから「ガルガル期」と呼ばれることもあります。このホルモンが原因で「なんで私が決めたルールを守ってくれないの!」「私はこれだけ頑張っているのに!」と、夫に強く当たってしまう妻もいます。

 

あるいは、母親が子どもをコントロールしたくなるのもオキシトシンが原因なのです。まさにオキシトシンは、愛情と攻撃のてんびんが大きく揺れ動くホルモンといえます。このような状況に自己嫌悪に陥る母親も多いのですが、産後の母親が攻撃的になるのは正常なことで、おかしな現象ではありません。むしろ子どもを産んだことで、脳や身体が「母親」として正常に作動しているのです。

 

このように、ほとんどの女性はすぐに「母親」としてのスイッチを入れることができます。では、おなかが大きくなるわけでもなく、出産を経験するわけでもない男性は、どうすれば「父親」になれるのでしょうか。

東野産婦人科院長 

東野産婦人科院長
1983年久留米大学医学部卒業後、九州大学産婦人科教室入局。1990年国立福岡中央病院に勤務後、東野産婦人科副院長に就任。その後、麻酔科新生児科研修を行う。1995年同院長に就任。東野産婦人科では“女性の一生に寄り添う。これまでも、これからもずっと。"をテーマに、妊娠・出産・育児にかかわらず、思春期から熟年期、老年期まで女性の生涯にわたるトータルケアを目指す。お産については家庭出産と医療施設の安全管理の長所を活かした自然分娩を提唱。フリースタイル分娩、アクティブバースの推進など、母親の希望の出産に合わせてサポートしている。また、赤ちゃんとの関わり方が分からない父親のための「赤ちゃんサロン~パパ&ベビークラス」や、育児における父親の役割を学ぶための「父親教室」なども開催。子育てに取り組む夫婦にしっかり寄り添うクリニックとして定評がある。

著者紹介

連載「産後クライシス」…冷え切った夫婦仲を修復する処方箋

知っておくべき産後の妻のこと

知っておくべき産後の妻のこと

東野 純彦

幻冬舎MC

知らなかったではすまされない「産後クライシス」―― 産後の妻の変化、訪れる最大の離婚危機…… カギを握るのは夫の行動!? 女性の生涯に寄り添ってきた産婦人科医が伝授する夫婦円満の秘訣とは

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