最近、巷ではTBS日曜劇場『半沢直樹』が大人気です。前半編で描かれる、「東京セントラル証券出向中の半沢直樹が親会社のメガバンクに戦いを挑み、相手の隙を突く知恵と策略で形勢逆転をしていく」というストーリーは、4話平均視聴率22.9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録する大ヒットとなっています。さて、現実世界では、半沢直樹のように資本も人材も限られた状況において、どんな戦略をとるべきでしょうか? 上場企業から中小企業まで幅広く経営支援を行っている森琢也氏が、モノづくり企業の例を参照に解説します。

「引き算」思考は中小企業こそ実践すべき

モノづくり企業、特に一般消費者向けの商品を手掛けるBtoC企業では、各社新商品開発に追われ、しのぎを削っています。従来、新商品開発ではいかに新たな価値や機能を追加するか、という観点が重視されます。これは言わば「足し算」の商品開発です。先進技術の開発では、やはり人もお金も豊富にある大手が圧倒的に有利なのは揺るぎない事実……。しかし、「足し算」の商品開発に邁進した結果、価値や機能は増したけれど、操作や理解が難しくなり、ユーザーである我々が使いこなせなくなってしまうケースは多々見られます(特に日系企業で顕著な気がします)。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

その一方で、「引き算」思考の商品開発もあります。わかりやすい代表例が、アップルの『iPhone』でしょう。2017年に登場した『iPhone X』では、なんとホームボタンを廃止……。あのトランプ米大統領もTwitterでホームボタン復活を求める投稿をしたほどだとか(ちなみに、2019年発売の『iPhone SE』では何事もなかったかのように復活)。禅の思想に影響を受けたという故スティーブ・ジョブス氏は、徹底的な「引き算」思考で大ヒット商品を続々と生み出していきました。

 

「引き算」思考の商品開発は、アップルのような大手企業だけでなく、資金や人的資源に限りのある中小企業でも十分真似できる施策です。正しく機能すれば、大手ではできない尖ったヒット商品を生み出すことも可能でしょう。

本物志向が愛用する「入浴剤」…宣伝は口コミだけ?

ここで一例を出してみましょう。『薬用ホットタブ重炭酸湯』という入浴剤をご存知でしょうか。この商品は、元TBSアナウンサー、そして現在は女優や美容家として女性からの好感度が爆上がりの田中みな実さんをはじめ、「奇跡の美ボディ」と評されエイジレスな美しさをキープする平子理沙さんなどが様々なメディアで愛用を公言したことでも脚光を浴びました。

 

この商品も常識の逆を行く、「引き算」思考で開発された商品です。市販の入浴剤を購入する際に重視することを尋ねた一般消費者向けアンケートでは、「香り」がダントツ1位(63.1%、インターワイヤード調べ)、そして「湯の色」も5番目(33.3%)につけていますが、『薬用ホットタブ重炭酸湯』は無香料無着色。消費者の心を掴むはずの「香り」「湯の色」を完全に排除し、「引き算」を徹底した点が非常にユニークと言えるでしょう。

 

出典元:インターワイヤード調べ(調査方法:2014年9月8~19日、DIMSDRIVEモニター6,315人から回答取得)
出典元:インターワイヤード調べ(調査方法:2014年9月8~19日、DIMSDRIVEモニター6,315人から回答取得)

 

なぜ、無香料無着色という尖った商品開発を行ったのでしょうか? 担当者に開発の経緯を聞くと、「香料や着色料は化学物質が多く含まれている。人間は皮膚から多くの物質を体内に吸収する生物であるため、有害物質の体内吸収を危惧し、香料と着色料を排除した」とのこと。

 

さらには、水道水に含まれる塩素を中和させる中性重炭酸イオンの血行促進・温浴効果のみを宣伝文句にプロモーションした結果、大手のように宣伝費かけられない中でも、本物志向の医療関係者、美容家、タレント、プロアスリート、薬局店舗から好評を得ることができました。彼らはノーギャラで宣伝してくれるので、特に広告を打たなくとも、口コミ主体で売上を伸ばしているとのことです。

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