投資適合国「フィリピン」…21年連続成長、止まる
中国の国家統計局は、第2四半期の国内総生産の実質成長率が、前年同期比で3.2%+だったと発表しました。ベトナムも同様に、新型コロナウイルスの感染拡大をうまくコントロールしてプラス成長を続けています。このような報道により、中国とベトナムの動向には、世界が注目しています。
一方のフィリピン。コロナ前の同国は、世界のなかでも有数な投資適合国として注目されていました。米国の『U.S. News & World Report』誌は2018年版の「投資するのに適した国々(Best Countries to Invest In)」という記事で、投資に適した国の第1位にフィリピンを選びました。
HSBCは「2050年の世界のGDP予想ランキング」で、2012年世界41位だったフィリピンを、2050年には世界16位になると予測し、「世界で一番成長する国」としてフィリピンを選びました。
しかしフィリピンの第2四半期国内総生産の実質成長率は前年同期比で-16.5%と、コロナの影響を最も被っている国のひとつとなってしまいました。
ただし、現在の経済危機は、コロナ感染という明確な特殊要因によるものです。歴史的に、戦争や感染症蔓延などの社会的危機が去ると、経済は大きくリバウンドしてきました。同じ感染症である、スペイン風邪の際も、収束後に経済成長率は大きくリバウンドしています(図表1)。
2000年代の経済成長率をみると、アジアではインド、フィリピン、中国、ベトナム、さらにインドネシアあたりが高い成長率を誇っていました(図表2)。新型コロナで大きな影響を受けていますが、それは一時的なもので、フィリピンのファンダメンタルズ(構造的な経済基盤)の強さは、まったく変わっていません。
コロナでも変わらない、フィリピンの強さ
フィリピンの人口は1億人以上で、ASEANのなかでは、インドネシアに次いで第2位の規模を誇ります。さらに注目すべきは、総人口に占める生産年齢人口の割合が上昇し続ける「人口ボーナス」です。
人口ボーナス期の終了年は、タイでは2031年、ベトナムでは2041年、インドネシアでは2044年、ミャンマーでは2053年といわれていますが、フィリピンでは2062年と、圧倒的に長く、世界の国で最長といわれています。
またフィリピンは若い世代で構成されているのが最大の強みです。国民年齢の中央値は、日本48.9歳に対し、フィリピンは23.5歳と、圧倒的に生産年齢人口が多いのです。
さらにフィリピンは公用語のひとつが英語であり、世界のビジネスシーンで共通言語として使われている英語を話せる労働力が豊富です。優秀かつ安い人材を求めて、欧米の世界的企業で、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)、なかでもIT企業を中心としたコールセンターの集積が進み、その規模はフィリピンGDPの約1割といわれています。
フィリピンのBPO事業は、コールセンターのほか、医療情報管理、ITのオフショア開発、アニメーション開発、オンライン英会話、バックオフィス業務など、「英語力」×「IT力」を活用した、幅広い分野に広がっています。さらにwithコロナの時代にはそのニーズの高まりが予測されており、フィリピンへの投資が強まると考えられるのです。
さらにフィリピンは個人消費中心の経済構造をしています。民間消費支出は、先進国の場合60%程度ですが、フィリピンの場合は73.8%と高く、リバウンド消費がGDPを押し上げると考えられます。
このように、長期的、構造的なフィリピン経済のファンダメンタルズの強さは変わっていません。フィリピン経済はこの10年以上、継続的に力強い成長を継続していますし、特に直近の3年で成長にドライブがかかっている状況でした。
新型コロナの影響は、あくまでも一時的なもので、歴史を振り返ると、必ず、リバウンドが起こります。そのように考えると、コロナ禍の前に成長の加速度を増していたフィリピンはいま、投資の絶好の仕込み時期だといえます。
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