古い歴史をもつフィリピン株式市場
フィリピン株式市場の歴史は東南アジアのなかでも古く、1927年にマニラ証券取引所が開設されています。当時の宗主国であった米国をモデルにしたもので、1963年には米国系以外の国内証券会社などが中心になってマカティ証券取引所が設立。両取引所は1993年に合併して、現在のフィリピン証券取引所(Philippine Stock Exchange:PSE)となりました。
フィリピン証券取引所には、ファーストボード、セカンドボード(東京証券取引所の第一部、第二部に該当)などの区分は一応ありますが、同じシステムで取引されています。また上場銘柄数は270銘柄程度。東京証券取引所の第一部、第二部合計の約10分の1で、非常に銘柄数が少ないことがフィリピン証券取引所の特徴です。
また財閥系企業が多くを占め、時価総額上位の銘柄は財閥の持株会社が多く、他には不動産、金融、資源・エネルギー、インフラなどの基幹産業が目立ちます。
このような特徴のフィリピン株式市場ですが、世界の投資家が注目するマーケットでもあります。その理由が「人口ボーナス」による成長促進効果が長期間続くという予測。フィリピン国民の現在の平均年齢は24歳(日本は46歳)で、出生率が約3人と、アジア地域でも高水準で高止まりしています。ジェトロ(日本貿易振興機構)が2015年に出したレポートでは、フィリピンでは東南アジア諸国のなかでも最長の、2062年までの人口ボーナスが続くと述べられています。
この長期にわたる人口ボーナス期の継続は、長期の経済成長を下支えします。世界最大級の金融グループであるHSBCが2012年に出した『The World in 2050』では、2050年フィリピンのGDPは世界で16位にまで成長すると見られ、その成長率は世界ナンバー1としています。ほかにも世界各国の調査機関において、フィリピン経済の長期成長は太鼓判を押されています。
コロナ禍で、世界情勢は大きく変わり、不確実な要素も多くありますが、今後も、ここ5~10年においては、世界トップレベルの実質成長率を誇る国である可能性は極めて高いといえます。世界の投資家がフィリピン株式市場に注目しているのは、このような背景があるのです。