今回は、相続税申告を数百件経験した相続・事業承継専門の税理士法人ブライト相続の北川聡司税理士が、「住宅取得資金の贈与の特例」について解説していきます。

親が子どもの自宅を建てた場合の節税効果は?

では「住宅取得等資金の贈与税の非課税」を活用せず、子どもや孫の住居を支援することはできないのでしょうか? 父母や祖父母が子どもや孫の住むための家を建築・購入し、それをタダで貸してあげるという方法は可能です。

 

仮に子どもが住む家を父が3,000万円で建築したとします(家の名義は父のものです)。

 

父は「お金」が3,000万円減少し、代わりに「家屋」という財産を持つことになります。一般的に家屋の評価額は建築価格の60%といわれていますが、筆者の経験上、木造家屋の相続税評価額は50%以下にはなります(低いケースでは20%ということもありました)。仮に50%としても3,000万円×50%=1,500万円の評価額です。

 

お金が3,000万円減少し、家屋として1,500万円を取得しますので、財産を1,500万円圧縮させることが可能です。税額では1,500万円×10~55%で、こちらも150万~825万円の節税効果は期待できそうです。

 

さらにこれは建築初年度の場合ですので、建築から年数が経過するにつれ、家屋の評価額は減少し、その節税効果はさらに大きくなっていきます。

 

一方、家屋は親名義です。子どもが家屋を相続すると名義変更のためには登録免許税の負担が生じます。建築初年度に相続が発生すると1,500万円×0.4%=6万円の登録免許税です。手続きを司法書士に依頼すればその手数料もかかりますが、それほど大きな負担にはならないでしょう。

 

■まとめ 

「住宅取得等資金の贈与税の非課税(1,500万円)」を利用した場合と、「親が子どもの家を建築してタダで貸す場合(木造3,000万円)」では、相続税自体の負担は初年度でもほぼ変わりません。ただし、建築から相続までの期間が長ければ明らかに後者が有利になります。

 

新築・購入時の不動産取得税と不動産取得税については、前者は子どもに、後者は親に課税されるのも税負担の相違点です。これは後者の方が有利です。

 

また、前者には税理士報酬が、後者には相続登記の登録免許税と司法書士報酬というコストが生じますが、判断を左右するほど大きな金額にはならないでしょう。

 

節税効果以外に着目すると、前者は家屋の名義が子どもとなり、後者は名義が親です。子どもは自分の家ではないので、親からタダで借りている立場になります。「親にタダで住ませてもらっている」という状態になりますので、感謝が長く続くことになりそうです。

 

安易に生前贈与ではなく、親が子どもの家を建てるということも選択肢として考えるべきと思うのですが皆様はどう思われましたでしょうか。筆者であれば迷いなく後者を選びます。

 

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