「毎日辛い。私は親不孝者?」在宅介護の実態に医師が思うこと

高齢化に伴い、終末期医療についての話題がたびたび上るようになりました。ほとんどの人が「在宅死」「在宅看取り」を希望しますが、それと同時に介護家族への負担や自宅の医療設備を理由に諦めている実態があります。在宅療養は本当に非現実的なものなのでしょうか。※本記事は『大切な親を家で看取るラクゆる介護』(幻冬舎MC)から抜粋・再編集したものです。

負担のない「在宅療養」を実現するポイント

以前の記事『「皆寝たきり」老後のリアル…人生100年時代で問うべき“最期”』では、「高齢の親が家にいられる」ことと「介護をする家族にも負担が少ない」ことを両立するためのポイントとして、次の10項目を紹介しました。

 

【ラクゆる介護10のポイント】

①在宅医療…「親が家で暮らせる」ことを最優先。不安から治療・入院を急がない

②家族の介護…介護保険サービスを活用し、家族の介護は「50点」でいい

③食事…食事は配食サービスでもいい。塩分・糖質・カロリーは気にしすぎない

④移動…歩きたい人は自由にさせる。転倒を必要以上に恐れない

⑤排泄…トイレやおむつは、介護する人が「夜に眠れる」方法を考える

⑥認知症…認知症が出てきたときは、「否定」をせず、「話を合わせる」

⑦経管栄養…口から食べられなくなったときの選択肢を知っておく

⑧延命治療…苦しいだけの延命治療、無用な救急搬送は、できるだけ避ける

⑨看取りの方針…看取りの方針で意見が割れたら、「本人の希望」に戻る

⑩看取りの実際…「臨終に立ち会わなければいけない」という思い込みを捨てる

 

本記事では、ポイント②、③を詳述します。

家族の介護は「100点満点中、50点」がちょうどいい

ラクゆる介護のポイント②【家族の介護】

介護保険サービスを活用し、家族の介護は「50点」でいい

 

高齢者が家にいてご家族が介護をするときは、医師である私がこういうのもなんですが、介護を頑張りすぎないようにしてください。親孝行のまじめな方ほど、親のためにと懸命になり、病院で医療スタッフが行うような看護やケアを自宅でもしようとされます。

 

しかし実際は息子さん、娘さんにも自分の仕事があり、生活があります。そのなかで家族の力だけで100点満点の介護をしようとすれば、必ずどこかで無理が生じ、在宅での介護を続けられなくなります。

 

要介護の親御さんにとっては、「家族の理解を得て、家にいられる」というだけで十分に幸せなことです。在宅医療を選んだことですでに親孝行をしているのですから、あとは介護保険サービスをフル活用し、家族の介護は50点を目指すというくらいでちょうどいいと思います。

 

「家族の理解を得て、自宅にいられる」ことが何よりの親孝行
「家族の理解を得て、自宅にいられる」ことが何よりの親孝行

 

在宅医療を始めるときに息子さん、娘さんにしてほしいことは、在宅医や訪問看護師、ケアマネージャーなど在宅医療チームのスタッフとよく話し合いをしていただき、高齢者本人やご家族にとって無理のないケアプランを作ることです。

 

そしてケアプランが決まったら、あとは親御さんを家にいさせてあげれば、それでいいのです。

 

昼間に仕事がある人や家庭のことで介護の時間がとれない人なら、朝と夜に「おはよう」「おやすみ」と声をかけ、顔色を見るというくらいでかまわないと思います。

 

そのときも「訪問介護のヘルパーさんまかせで申し訳ない」とか、「息子・娘として十分に手をかけてあげられず、罪悪感を覚える」などと思う必要はありません。

 

以前の記事『「延命で苦しむのはイヤだ」「慌てて救急車」…在宅死のリアル』でも述べましたが、歳をとって要介護になるのは特別なことではなく、生物として自然なことだからです。私の経験からすると、ある意味ちょっといい加減というか、あまり杓子定規に考えすぎず、「本人がそれでいいなら、そうしてあげて」というくらいのゆるいご家族のほうが、在宅医療がとてもうまくいく印象があります。もちろんご家族の関係性や性格はそれぞれかとは思いますが、ご家族はぜひ肩の力を抜いて、親御さんの介護に向き合ってください。

デイサービスやショートステイは、家族のためにも必要

在宅介護の悩みでは、介護保険サービスをもっと利用したいけれど、高齢者本人が嫌がるという問題もあります。特に男性の場合、他人と一緒に子どもみたいなことをさせられると、デイサービスに行くのを嫌がる人は珍しくないようです。

 

けれども、同居で介護をするご家族にとっては、要介護の高齢者が毎日毎日家にいるという生活は、ゆっくり買い物に行く時間もとれませんし、家族の気が休まるときがありません。

 

ここは本人が嫌がっても、家族のためにデイサービスに行ってもらいましょう。うまく通ってもらう秘訣は、朝から「今日はデイサービスだからね」と親御さんを説得しようとしないこと。家族がいうと逆に甘えが出て「絶対に行きたくない」とごねる時間が長くなります。ただ「お迎えが来たら行ってね」とさらりと伝えればいいのです。

 

男性は長く社会で生きてきて、外ではいい顔をしたいところがあります。家族の前ではさんざん嫌がっていても、実際に介護スタッフが家へ来ると「よく来てくれた」「じゃあ、行ってくるか」となることもよくあります。

 

そのへんの誘い方は介護スタッフも心得ているので、介護のプロの力を頼るといいと思います。デイサービスの施設で入浴も済ませてもらうようにすれば、家での介助が減り、ご家族もラクになります。

 

また在宅療養は、いつまで続くという明確な目安はありません。高齢者の状態は良くなったり悪くなったりを繰り返しながら、日々の生活が続いていきます。介護をする人もその間、ずっと神経を張りつめたままでは疲れ果ててしまいます。たまには短期間の宿泊ができるショートステイなどのサービスも使い、堂々と息抜きをしてください。

医療法人翔樹会 井上内科クリニック 院長

1972年、東京大学に入学後、医学を志し1976年に名古屋大学に再入学。1982年、名古屋大学医学部卒業。袋井市民病院、中津川市民病院に勤務ののち、市立四日市病院、臨港病院等で消化器科部長を歴任。1996年に井上内科クリニックを開院、同時に在宅医療をスタート。

2001年からは地域に根ざした医療・介護の担い手として「デイサービスセンターほほえみ(現・デイケアほほえみ)」の運営に着手し、2020年現在、同グループは訪問看護ステーション、住宅型有料老人ホーム等14事業所を手がける。

クリニックおよびグループ全体で「『その人らしく』を最後まで」を理念に、患者と家族の在宅生活・在宅介護のサポートを続けており、在宅での看取り実績は累計1,000人以上。

著者紹介

連載幻冬舎ゴールドオンライン人気記事ピックアップ

大切な親を家で看取るラクゆる介護

大切な親を家で看取るラクゆる介護

井上 雅樹

幻冬舎メディアコンサルティング

介護保険制度が始まって20年近くが経ち、「在宅医療・介護」「在宅看取り」という言葉は以前より知られるようになっています。 しかし実際は、高齢者の希望をくんで在宅介護を始めたものの、家族のほうが疲弊してしまい、在…

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

登録していただいた方の中から
毎日抽選で1名様に人気書籍をプレゼント!
会員向けセミナーの一覧