同居している、あるいは実家の近くに住んでいて親の面倒を見ている兄弟姉妹が、生前に財産を消費してしまっていることが原因で「争族」となってしまうケースは、非常に多くあります。このご家族の場合も裕福だった父親が億を超える預金を母親に遺しましたが、その母親が亡くなった後の二次相続でわかったのは銀行残高が数十万円にまで激減していたことでした…。 ※本記事は、一般社団法人相続終活専門協会代表理事・江幡吉昭氏の書籍 『プロが教える  相続でモメないための本』(アスコム)より一部を抜粋したものです。

海外旅行、ベンツ…長女は「黒」なのか?高まる疑惑

「このところ、お姉ちゃんちは、ご主人が定年になったにもかかわらず、自宅をリフォームしたり、海外旅行へ行ったり、ベンツを買ったり、羽振りの良い生活をしてると思ってたのよ。この取引明細書見てピンときたわよ」

 

「バカじゃないの、あんた。そんなもん夫の退職金を使ったからに決まっているじゃない」

 

春美はまったく悪びれない。

 

「そんなの信じられるわけないじゃない。私の夫だって退職金もらったけど、年金だってあてにならないのに、そんな羽振り良く使えるわけないでしょ。そんな嘘が通用すると思ってるの?」

 

「嘘なんかついてないわよ。だいたい、あんたたちみたいに遠くに住んでて、ときどき『お母さん元気!』とか電話してくるだけなのに何がわかるっていうの。介護って半端じゃないのよ」

 

書籍『プロが教える 相続でモメないための本』(アスコム)
書籍『プロが教える 相続でモメないための本』(アスコム)

「だから、たくさんお駄賃をもらいましたで、私たちが納得するとでも思ってるの? 信じらんない」

 

姉妹の言い争いはエキサイトしていく。仲良しだった姉妹の「争族」には、もはや解決の糸口は見えなかった――。

 

■一次相続では多額の資産をトラブルなく分割したのに……

 

私の事務所を訪れた奈津美さんと秋絵さんは、「聞いてくださいよ」と口を開くなり、長女の春美さんへの不平不満がマシンガンのように飛び出しました。私はおふたりのお話が一段落するまでじっくり待ってから口を開きました。

 

「おふたりの気持ちは、とてもよくわかります。私も長く相続のご相談を受けていますが、同居あるいは実家の近くにお住まいのご家族による預金引き出しは、『争族』原因のトップ3に入るくらい、よくあるパターンなんですよ。ただ、とても申し上げにくいことですが、このパターンは問題が長期化する可能性がありますから、覚悟して臨まないといけません」

 

「やっぱり、そうなんだ」

 

三女の秋絵さんはため息をつきます。

 

「こういうときは、やはり同居されているご家族の言い分が通ってしまうケースが非常に多いのです」

 

「私たちが何を言っても、お姉ちゃんはあなたたちは知らないだろうけどとか、私がどれだけ苦労しているのかって話にすりかえちゃうんですよ」

次ページ父の死後「億単位にのぼる資産」を受け継いでいたが…

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