長寿企業の承継成功の秘訣は「的確な後継者教育」
事業承継が進まない大きな理由の一つとして「後継者がいない」ということがあげられています。
既存の「事業承継=相続」の考え方では、事業とは単なる「モノ」ということですので、相続する人がいないのならM&Aで誰かに売っ払ってしまえ、となるのですが、中小企業の事業とは決してそのような軽々しいものではないと思います。
実際に長寿企業と言われる中小企業では、後継者を広い範囲から見付け出し、そして的確な後継者教育を施して、本当に正しい事業承継を何百年にもわたって繰り返しているのです。
もちろん、それぞれの人にはそれぞれの人生があるのですから、経営者の子であるからと言って必ずしも後継者になる必要はありませんし、また従業員の誰かが後継者に指名されたからと言って必ずしも受諾する必然性はありませんが、後継者となることを決意した限り、その責任を果たす必要がありますし、またがあるのではないかと思います。
ところが、意外なことに、我が国には「これが最高の後継者教育だ」というものは存在していません。そして、現実にはそれぞれの経営者がそれぞれに考え、工夫して後継者を育成しているという状態なのですが、どの方法にも一長一短があります。
後継者教育に共通する「3つ」のポイントとは?
ただ、後継者教育に関して共通して言えるのは、以下の3点ではないかと思います。
①経営理念の承継の重要性
経営理念のない企業が長寿を保つ可能性は極めて低いのですが、実際のところ、経営理念を承継するのは非常に難しいことです。後継者には、現経営者の理念を徹底的に伝え、新たな理念を構築させるくらいに理解度を高める必要があります。
②他の後継候補者や従業員との調和
やはり長寿企業の特徴として表れていることとして、「和をもって尊しとする」という考え方があります。
現在の会社経営の考え方では、ともすれば利益優先で人間関係などは二の次となりがちなのですが、いかに時代が進んでも、最後に物事を決めるのは「人の心」なのですから、後継者には、不要な対立を避け、誰とでも調和ができる人格と人間性が必要であると思います。
③現経営者及び経営幹部の全面協力
事業承継の失敗例となりやすいのが、代表取締役だけは若い世代に交替しても、新社長よりも遥かに年長の前経営者や経営幹部が未だに実権を握ったままと外部から見られてしまうケースです。
前経営者は代表取締役の座を譲った限りは経営の第一線から退くべきですし、また新社長の周囲を固める経営幹部も若い世代に交替させ、任せるべきところは全面的に任せて、決して余計な口出しをするべきではないのです。
その意味では「黄金株」などという発想自体が間違っていると言えるのかもしれません。以下に後継者教育の各種手法と問題点を示しておきますので、参考にしてください。
[図表]後継者教育の手法と問題点