「同調」を意識した会話のキャッチボール
こういったシーンは、珍しいことではありません。なぜこの夫婦は仲良く話せなかったのか。それは、男性と女性で会話に求めているものが違うからです。
前の例ならば、次のような切り返しができていれば良かったかもしれません。
「今日ね、買い物に出かけたら大学時代の友達に会っちゃって。でね、カフェに入ってお茶でもしようかってことになったのよ」
夫は、読んでいた新聞を横に置いて顔を上げると、妻の顔を見て言いました。
「へえ、それは良かったね」
ここで妻は「この人は私の話を聞こうとしてくれている」とうれしくなります。
「でね、キャラメルなんとかってやつを飲んだんだけど、それがけっこうおいしくて!」
妻は相変わらず楽しそうに話し、夫はそれをうなずきながら聞いています。
「うんうん」
「それでね、友達の職場があなたの職場と近かったの!」
「それはすごい偶然だなあ。どのあたり?」
「ほら、あなたの職場の近くの信号を右に曲がるとコンビニがあるじゃない。セブン─イレブン。その隣のビルなんだって!」
「ああ、あのビルね。確かに近いなあ」
夫は心のなかで「右にあるのはローソンだけど……」とツッコミながらも、正しい店名はこの話の本筋ではないと瞬時に理解し、なお聞き役に徹します。
妻は夫が同調してくれることに喜びを感じ、ますます弾んだ声で話し続けました。
「でしょ? もしかしたらすれ違ってるかもしれないわよ」
「そうだね、どんな人なの?」
「えっとね~」
夫がさらに質問をしたことで、会話のキャッチボールが成立しました。
妻はうれしそうにニコニコ。
夫もそんな様子を見てほほえんでいます。