産後の夫婦関係はその先何十年を左右する。日本では「産後うつ」になる女性が30%を超えるが、男性のサポートが得られなかったことも大きな原因だろう。産婦人科院長を務める著者が、夫婦で仲良く過ごすための男性からの働きかけのヒントを伝授する。本連載は、東野産婦人科院長の東野純彦氏の著書『知っておくべき産後の妻のこと』(幻冬舎MC)から一部を抜粋した原稿です。
妻の事情に過剰に介入する「うっとうしい夫」
【とある夫婦の事例】
とある日曜日、夫が11時ごろ起きてくると妻が不機嫌そうな顔でソファに座っています。「やばい、ちょっと寝すぎちゃったかな」と思い、恐る恐る「おはよう」と声をかけても完全に無視。
夫はご機嫌をとろうと「コーヒー入れようか?」「今日のお昼ごはんは俺がつくるよ」「部屋の掃除とかやっておくから、たまには外でゆっくりしてきたら?」と、あの手この手で妻を喜ばせようとしますが、それでも妻の顔色は変わりません。眉間に刻まれた皺は深くなるばかり。
次第に、夫はこんな気持ちを抱くようになります。
「毎日遅くまで仕事して疲れてるんだから、たまの休日くらい好きなだけ寝かせてくれよ。大体、これだけ気を使ってるのになんで妻は態度を変えないんだ? なんで俺ばっかりぺこぺこしてるんだ?」
そして、いつしか心のなかだけにとどまらず、つい口に出してしまうのです。
「いい加減にしろよ! 何を怒ってるんだか知らないけど、俺だっていろいろやってるだろ? どうすれば気が済むんだよ!」
妻も負けじと反論します。
「は? 私、何かやってくれとか頼んでないけど。ていうか別にいつもどおり、普通だし」
「どこが普通なんだよ。俺が起きてきた瞬間からずっとしかめっ面してただろ!」
東野産婦人科院長
東野産婦人科院長
1983年久留米大学医学部卒業後、九州大学産婦人科教室入局。1990年国立福岡中央病院に勤務後、東野産婦人科副院長に就任。その後、麻酔科新生児科研修を行う。1995年同院長に就任。東野産婦人科では“女性の一生に寄り添う。これまでも、これからもずっと。"をテーマに、妊娠・出産・育児にかかわらず、思春期から熟年期、老年期まで女性の生涯にわたるトータルケアを目指す。お産については家庭出産と医療施設の安全管理の長所を活かした自然分娩を提唱。フリースタイル分娩、アクティブバースの推進など、母親の希望の出産に合わせてサポートしている。また、赤ちゃんとの関わり方が分からない父親のための「赤ちゃんサロン~パパ&ベビークラス」や、育児における父親の役割を学ぶための「父親教室」なども開催。子育てに取り組む夫婦にしっかり寄り添うクリニックとして定評がある。
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連載「産後クライシス」…冷え切った夫婦仲を修復する処方箋