●4-6月期決算は8月7日時点で8割強終了し減収減益に、業種別では8業種が赤字に転落した。
●通期予想もかなり厳しい数字だがコロナの影響が業績の追い風となる企業群は増収増益を予想。
●業績予想の2極化は織り込み済み、コロナが収束した後もDX関連銘柄の優位性は維持されよう。
4-6月期決算は8月7日時点で8割強終了し減収減益に、業種別では8業種が赤字に転落した
日本では、3月期決算企業による4-6月期の決算発表が一巡しつつあります。そこで、今回のレポートでは、東証株価指数(TOPIX)を構成する3月期決算企業(金融を除く)を対象に、8月7日までに発表された決算の内容を検証していきます。なお、対象企業のうち、8月7日時点で決算発表を終えた企業の割合は約88%に達し、時価総額では約91%を占めています。
はじめに、4-6月期の実績を確認すると、前年同期比で売上高は約17%減、営業利益は約51%減、経常利益は約48%減、純利益は約63%減という結果になりました。業種別にみると、純利益が増益となったのは「その他製品」など6業種のみで、「繊維製品」などの14業種は減益、「石油・石炭製品」などの8業種は赤字に転落するなど、厳しい決算となりました(図表1)。
通期予想もかなり厳しい数字だがコロナの影響が業績の追い風となる企業群は増収増益を予想
次に、2020年度通期の業績予想を確認すると、前年度比で売上高は約9%減、営業利益は約27%減、経常利益は約25%減、純利益は約27%減と、コロナの影響が今年度の業績に強く残る見通しが確認されました。業種別にみてみると、純利益が増益予想となったのは「倉庫・運輸関連業」と「水産・農林業」の2業種のみで、23業種は減益予想となりました(図表2)。
今年度、売上高の増収と純利益の増益を予想する企業は、やはりコロナの影響が追い風となっている先が多くみられます。具体的には、ヤマトホールディングスやSGホールディングス(ネット通販の配送)、ZOZO(電子商取引の利用拡大)、日清食品や亀田製菓(巣ごもり消費)、東京エレクトロン(デジタル化需要の増大)、インターネットイニシアティブやネットワンシステムズ(クラウド、テレワーク関連)などです。
業績予想の2極化は織り込み済み、コロナが収束した後もDX関連銘柄の優位性は維持されよう
一方、今年度、売上高の減収と純利益の減益を予想する企業は、当然ながらコロナの影響が向かい風となっている先が多くみられます。具体的には、小田急電鉄や京浜急行電鉄(外出や旅行の自粛、いずれも赤字転落の予想)、トヨタ自動車や本田技研工業(景気敏感な業種)、日本郵船(同じく景気敏感業種)、リゾートトラストやよみうりランド(買い物やレジャーに出かける機会の減少)などです。
8月の日本株は底堅く推移していることから、このような業績2極化の動きは織り込み済みだったと思われます。この先、世界的にコロナの感染拡大がピークアウトに向かい、景気回復が持続する展開となれば、今年度減収減益予想の銘柄にも、業績の上方修正期待から買いが入ることは十分想定されます。ただ、デジタルトランスフォーメーション(DX)の流れは変わらず、関連銘柄の優位性は維持されると考えます。
※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2020年4-6月期決算~一巡しつつあるなかでみえてきたこと』を参照)。
(2020年8月12日)
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント シニアストラテジスト