なぜ当社に依頼したのか聞いてみると「スーパーでの販売が苦戦している」とのことで、さっそく現場で他社商品とも比較してみたところ、おもしろいことがわかりました。
ほとんどの海産物は画一的に「ひじき」とだけ書いてある商品が多く、パッケージも海産物を象徴するような青、白、黒などの寒色系の色使いが大半です。
同漁連に「自社商品の強み」を確認すると、「100%徳島県産のひじきしか使っていない」ということでした。他社製品の多くは外国産で、国産であっても県名まで明記している商品はありませんでした。これはすばらしい強みです。
そこで、お客様に伝わりやすいように、ネーミングから変更することを提案しました。そして完成したのが、写真の「徳島生まれの 徳島の漁師による とくしま漁連がおすすめする ひじき」です(この記事の写真を見る)。
他社商品と同じ棚に並べられたときに目立つように「朱色」を採用。ネーミングに
は「徳島」が3回も出てくる徹底ぶりで、このネーミングならさすがに外国産とは思
われません。さらにスーパーで販売するので、若い主婦をターゲットに「子育てママ
応援」という要素をイラストと文字で伝えました。
パッケージリニューアル後、県内2系列のスーパーから声がかかり、すぐに23店舗導入の運びとなりましたが、それだけでは終わりませんでした。営業もしていない、会ったこともない土産物屋や産直市から、同漁連に電話がかかってくるようになったのです。
「おたくの徳島生まれのひじき、当社でも取り扱いさせてもらえませんか?」
地元のお土産として認識されたのです。幸いひじきは常温で日持ちもするため、お土産としてもうってつけでした。こうして次々に販路が広がっていったのです。
重要なことは、ひじきの販路が広がったことにより、「海苔もわかめも一緒に」と、ほかの商品も新たな販路で販売できるようになったということです。同漁連の林氏は「営業もしていないのに、販路が広がりました」とご満悦の様子。一点突破ですばらしい価値を表現した効果です。
1.中身と同じようにパッケージも重視
2.商品が使われるシーンをイメージしてパッケージを考える
3.パッケージは24時間365日働く有能な営業マン
4.商品がユーザーに与える価値をあらゆる視点から考える
5.商品が生まれるまでのストーリーが価値になることもある
6.ピンチはチャンス! 逆境を価値に変える大胆な発想をもつ
7.商品の強みを一点に絞ってアピールする
松浦 陽司
株式会社パッケージ松浦 代表取締役社長
※本連載では、世界でただ一人の“パッケージマーケッター”松浦 陽司氏の著書『売上がグングン伸びるパッケージ戦略 赤字商品が大ヒット商品に化ける!!』から一部を抜粋して、売れるパッケージの秘密について解説します。