嵐『カイト』初動91万枚!JRA売上改善は景気回復の兆しか?

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「宅森昭吉のエコノミックレポート」の『経済指標解説』を転載したものです。

 

8月のトピック

景気は20年5月までの19ヵ月の後退局面から抜け出るか? 大幅悪化から幾分持ち直した6月の経済指標。藤井聡太七段の棋聖獲得、嵐「カイト」初動91万枚、照ノ富士復活優勝など明るい話題も。主役に躍り出たEVIL、コロナ禍の中でのプロレスの新しい動き。

景気動向指数を使った景気判断は「悪化」が続いているが、早ければ8月分で「下げ止まり」に転じそう

景気は、新型コロナウイルス感染症の影響で緊急事態宣言下では極めて厳しい状況にあったが、5月頃を景気の谷として、緩やかな回復局面に入った可能性が大きい。ただし、7月に入り新型コロナウイルス感染者が増加し、8月初めまでで収まる気配がないことから、先行きの不透明さは拭えない。

 

2012年12月から始まった景気の拡大局面は18年10月を暫定的な山として終了し、後退に転じたと内閣府が認定した。ヒストリカルDIは18年11月に景気判断の分岐点50を下回った(図表1)。景気の拡大期間は71ヵ月にとどまり、戦後最長だった「いざなみ景気」(02年2月~08年2月)の73ヵ月には届かなかった。企業部門は好調だったが人手不足経済と言われながらも、賃上げの勢いは鈍く個人消費が盛り上がりを欠いた景気拡張局面だった。この間の経済成長率は年平均+1.1%にとどまった。

 

 

景気動向指数を使った景気判断は、現在「悪化」が続いているが、早ければ10月7日公表予定の8月分で「下げ止まり」に転じる可能性が出てきた。

6月分鉱工業生産・前月比5ヵ月ぶり上昇、製造工業生産予測指数・前月比は7月・8月と上昇

鉱工業生産指数・6月分速報値・前月比は+2.7%と5ヵ月ぶりの上昇になった。季節調整値の水準は80.8で2015年基準では2番目の低水準だが、15年1月の+3.0%以来2番目の上昇幅である。新型コロナウイルス感染症の影響からの回復がみられた。経済産業省の基調判断は、4月分・5月分の「総じてみれば、生産は急速に低下している」から、6月分では、「生産は下げ止まり、持ち直しの動きがみられる」に上方修正された。

 

6月分速報値の鉱工業在庫指数は、前月比▲2.4%と3ヵ月連続の低下、前年同月比は▲3.4%と2ヵ月連続のマイナスとなった。4月・5月と、感染拡大防止のための工場の稼働の低下、操業停止などで結果として大幅な生産調整が行われたことになり、在庫の前月比、前年同月比のマイナスにつながった。緊急事態宣言の影響がなくなった6月分の生産がしっかりした前月比プラスに転じた要因のひとつである。

 

鉱工業生産指数の先行きを製造工業予測指数でみると7月分は前月比+11.3%の上昇、8月分は前月比+3.4%の上昇の見込みである。過去のパターン等で製造工業予測指数を修正した経済産業省の機械的な補正値である先行き試算値最頻値でみても7月分の前月比は+3.1%と上昇になる見込みである。順調にいけば、鉱工業生産指数は3ヵ月連続の上昇が見込まれる。

4月に最悪だった「消費者マインドアンケート調査」や「消費動向調査」は、3ヵ月連続緩やかに持ち直し

4月「消費動向調査」の消費者態度指数(二人以上の世帯、季節調整値)は前月比9.3ポイント低下し、21.6だった。調査方式が異なるが、リーマン・ショックの影響が残る09年1月(27.5)を下回り、過去最低を更新した。しかし、5月調査では24.0、6月調査では28.4、7月調査では29.5と緩やかながら3ヵ月連続改善した。また、内閣府「消費者マインドアンケート調査」で、暮らし向き(半年後)の5段階の回答から「景気ウォッチャー調査」と同様な手法により判断DIを作成すると、4月分は20.7と16年9月からある統計史上で最低水準になった。全員が「やや悪くなる」と回答した時のDIである25.0を下回っていた。しかし、4月を底にして、5月21.5、6月28.4、7月は33.4へと上昇した(図表2)。

 

6月分完全失業率2.8%、雇用環境はコロナ禍で厳しいが2%台キープ。6月分刑法犯は前年比減少

新型コロナウイルス感染拡大対応としての経済活動自粛の影響が完全失業率の上昇要因になり、5月分は2.9%(2.88%)、直近ボトムの19年12月の2.2%(2.19%)から5ヵ月連続上昇した。しかし、6月分は2.8%(2.83%)に若干鈍化し依然2%台はキープしている(図表3)。完全失業率と警察庁「自殺統計」の自殺者数の相関係数を、共通データがある78年~19年で算出すると、0.912と高い。経済生活問題を理由とした自殺も多いからだろう。一部で増加が懸念された6月分の自殺者数は暫定値で1,519人、前年比▲7.4%となった。年初からの累計は9,429人、前年比▲9.9%である。また、1~6月分の刑法犯総数は前年同月比▲15.6%、6月分は同▲15.4%と減少している。現在、雇用悪化、自殺者の増加といった事態を回避するための雇用調整助成金の拡充などの政策がそれなりに効いているとみられる状況だ。

 

 

新型コロナの影響で企業の資金需要は急拡大、それに対する政策的対応もあり、6月分の貸出(銀行・信金計)は前年同月比+6.2%、6月分マネーストック・M2は前年同月比+7.2%で、各々3月分の+2.0%、+3.3%から大きく伸びている。

新型コロナウイルス関連・判断DI5月・6月調査で持ち直し、コメント数も減少傾向。7月は豪雨に注目

景気に敏感な立場にいる人々の意見を聞く「景気ウォッチャー調査」はこの4月調査で各判断DIが統計開始以来の最低を記録した。現状判断DIは7.9であった。5月調査15.5、6月調査で38.8と持ち直した。また、2~3ヵ月先の景気の先行きに関する先行き判断DIは4月調査の16.6から6月調査では44.0まで戻した。ただし、どちらも、全員が「変わらない」と答えた場合の50を下回っている。なお、4月調査では▲3.1と初のマイナスという前代未聞の事態になった飲食関連の現状判断DIも、5月調査で8.6、6月調査39.6と持ち直した。

 

新型コロナウイルスに関するコメントをした景気ウォッチャーの回答だけを使い、新型コロナウイルス関連・現状判断DI、先行き判断DIを独自に作成すると、新型コロナウイルス関連・現状判断DIは4月には8.7と3月の12.0から1ケタに下落したが、5月に13.1に、6月には35.0に戻った。一方、新型コロナウイルス関連・先行き判断はいち早く底打ち感が出ていた。3月16.3を底に6月43.6へ上昇している(図表4)。なお、6月の新型コロナウイルスのコメント数は現状553名、先行き702名と依然多いものの、最多だった3月の現状998名、先行き1,086名に比べどちらも減少している。

 

 

6月調査では豪雨に関するコメントはなかった、梅雨に関するコメントも、現状・先行き各2件ずつしかなかった。平成30年7月豪雨の時は7月調査での豪雨のコメント数が175、豪雨関連現状判断DIが33.9となり、景況感に悪影響を及ぼした(図表5)。令和2年7月豪雨の影響は8月11日発表の7月調査に現れると思われるが、どういう結果になるか注目される。

 

EVIL新日本プロレスの主役に躍り出る。NJC優勝、バレットクラブ入り、IWGP2冠奪取

コロナ禍の世の中では、ウイルスと付き合いながらの生活になる。スポーツ観戦においてもこれまでとは異なるスタイルが求められる。日本最大のプロレス団体新日本プロレスは6月15日から無観客興行を開催し、7月11日・12日の両日の大阪城ホールでの大会から通常の3分の1程度を上限に観客を入れた。無観客興行でも日本中のプロレスファンを大熱狂させたのが、7月3日だった。BS朝日の放送だったが、34年ぶりに新日本プロレス金曜8時生中継が行われNEW JAPAN CUP決勝への切符をかけた準決勝の激闘は、「#金8はプロレス」が日本のツイッタートレンドで1位を飾るほどの大盛り上がりを見せた。

 

そこでの主役のひとりが、“キング・オブ・ダークネス”EVIL(本名、渡辺高章)だ。それまでは所属ユニットのロス・インゴベルナブレス・デ・ハポンで4番手とみなされていた。32人が参加したトーナメントNEW JAPAN CUPの2回戦後「新しい新日本」とマイクアピール。生中継された準決勝で当時所属していたユニットの同僚、SANADAを容赦なくパイプ椅子攻撃などの反則など手段を選ばすに撃退。7月11日の決勝で実質的な新日本プロレスのエースであるオカダ・カズチカも破り、NEW JAPAN CUP初優勝を果たした。それまで所属していたロス・インゴを裏切りバレットクラブにユニットを鞍替えした。翌日、内藤哲也の持つIWGPヘビー級、IWGPインターコンチネンタルのダブルタイトルに挑戦。急所蹴りやセコンド乱入など手段を選ばず、それまで所属していたロス・インゴのリーダーの内藤から、タイトルを奪取した。7月25日にはIWGPジュニアヘビー級王者の高橋ヒロムの挑戦を退け、2冠の初防衛に成功した(図表6)。

 

 

新日本プロレスは8月29日に明治神宮球場で21年ぶりに野外の大会を開催する。コロナ禍のピンチをチャンスに変えるべく、プロレス界の盟主は真夏の野外決戦に打って出る。そこで、EVILは内藤哲也のリターンマッチを受け2冠の防衛戦をおこなう。明治神宮球場大会では2冠王座とは別路線の「KOPW」(キング オブ プロレスリング)の、予選を勝ち抜いてきた選手での初代王者決定戦が4WAY戦で行われるという。1回戦の試合形式をファン投票で決定するなど、面白いルールで従来にない面白いものを探求するという。ベルトは作らず、年末時点での王者にトロフィーが贈呈される。コロナ禍のピンチをチャンスに変えるべく、プロレス界の盟主は様々な挑戦を行っているようだ。

 

見せるスポーツであるプロレスは時代を映す鏡と言われる。手段を選ばない戦いぶりながら、トーナメント優勝とタイトルを手にし、自ら新しい立ち位置を確立したEVILは、結果でもって自身の行動を正当化したとも言える。コロナとの共生が求められる混沌とした世の中で、EVILがプロレスファンに支持されている理由がそこにあるように思われる。

元大関・照ノ富士が大相撲七月場所で序二段から復活優勝。七月場所の懸賞は1,000本にとどまる

大相撲七月場所の懸賞は1,000本になった。昨年7月に開催された名古屋場所1,552本との比較で▲35.6%となった。事前申し込みでも1,200~1,300本程度と報じられていたが、それを下回った。新型コロナ感染症の影響で企業も広告費を削減する傾向にあるところに加え、両横綱休場などの影響で弱含んだ(図表7)。

 

 

しかし、大相撲七月場所では新型コロナに苦しむ世の中を元気づける話題もあった。元大関で東前頭17枚目の照ノ富士が御嶽海を破って13勝2敗とし2015年夏場所以来となる2度目の優勝を遂げたことだ。ファン投票第1位の取り組みにかかる森永賞は、千秋楽結びの朝乃山VS正代ではなく、照ノ富士VS御嶽海の一番に懸かった。

 

照ノ富士は「イケイケだった」関脇で初優勝し、大関に14場所在位した。しかし、その後は膝のけがや病気で休場が続き、序二段まで転落した。何度も引退を申し出たが、「必ず幕内に戻れる」と師匠から粘り強く説得を受け、そこから再出発、2年半ぶりに幕内の土俵に上がっていた。幕内優勝後に十両以下に落ち、再び優勝を果たしたのは史上初。30場所ぶりの賜杯獲得は琴錦の43場所に次ぐ、史上2番目のブランクでの優勝になった。照ノ富士のコメントの中に「膝の状態は4割くらいには戻ってきた」とあったが、悪い膝と付き合いながら復活してきた。「こういう時期だから、みんなに勇気と我慢を伝えたいと思って一生懸命やった」、その結果が花開いた。

JRA売得金前年比▲0.3%まで戻す。SixTONESに続き、嵐2週連続でCD売り上げ初動50万枚超

身近なデータで明るい話題も出た。将棋の世界では藤井聡太七段が17歳で棋聖のタイトルを獲得した。

 

JRA(中央競馬会)の今年の売得金・年初からの累計金額の前年比は2月29日から無観客レースとなり、ネット(ごく一部が電話)でしか馬券が購入できなくなったため、5月3日の週までの累計で▲6.2%まで悪化した。しかし、そこから改善し、8月2日までの週の累計では前年比▲0.3%まで戻した。

 

ジャニーズの人気グループKing & Princeが6月10日にリリースした最新シングル「Mazy Night」は初動51.8万枚と50万枚超となり、6月が景気拡張局面に入った可能性があることを示唆する数字となった。ジャニーズ勢のCDの初動50万枚超が続いている。7月22日発売のSixTONES「NAVIGATOR」が62.2万枚、7月29日発売の嵐「カイト」が91.1万枚を記録した。嵐のこれまでの初動売り上げの自己最高だった2013年発売の「Calling / Breathless」(75.6万枚)を更新した(図表8)。嵐のシングル曲で最も売れたのは、デビュー曲「A・RA・SHI」で97.3万だが、同曲はすでに廃盤になっている。通常版にカップリング曲として、昨年11月の『天皇陛下御即位をお祝いする国民祭典』で披露された奉祝曲「Journey to Harmony」も収録されている。活動休止まで残り5ヵ月を切った嵐だが、初のミリオン達成となるかが注目される。

 

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『嵐「カイト」初動91万枚!JRA売上改善は景気回復の兆しか?』を参照)。

 

(2020年8月3日)

 

宅森 昭吉

株式会社三井住友DSアセットマネジメント 理事・チーフエコノミスト 

 

三井住友DSアセットマネジメント株式会社 理事・チーフエコノミスト

旧三井銀行(現三井住友銀行)で都市銀行初のマーケットエコノミストを務める。さくら証券チーフエコノミストなどを経て現職。
パイオニアである日本の月次経済指標予測に定評がある。身近な社会データを予告信号とする、経済・金融のナウキャスト的予測手法を開発。その他、「景気ウォッチャー調査」などの開発・改善に取り組んできている。「より正確な景気判断のための経済統計の改善に関する研究会」など政府の経済統計改革にも参画。「景気循環学会」常務理事。
著書に『ジンクスで読む日本経済』(東洋経済新報社)など。

著者紹介

連載【宅森昭吉・理事・チーフ エコノミスト】エコノミックレポート/三井住友DSアセットマネジメント

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