各分野のスペシャリストが連携して在宅医療を支援
在宅医療の特徴の一つに「多職種連携」があります。在宅医療には医師だけでなく、医療・介護分野のさまざまな職種の専門家が関わり、患者さん本人もご家族もチームの一員としてサポートします。在宅医療は、医師だけでは絶対にできません。チームの全員が職種ごとにそれぞれの特徴を活かして親身になって関わることが大切です。むしろ在宅医療の中では、医師以上に重要な役割を担っている職種もあるのです。
在宅での介護に最初は不安を感じていたご家族も、「たくさんの人が自宅に来て声をかけてくれることを知り、在宅でやっていく自信をもてた」と話される方がよくいます。在宅医療に関わる専門職には、次のようなものがあります。
●医師(在宅医)
高齢者やがんの患者さんが在宅療養をするとき、全般的な医療の方針を決めるのが、在宅医です。定期的に患者さん宅を訪ねる訪問診療や往診をするほか、必要に応じて地域の病院の医師と連携し、入院手配や退院後の治療の引き継ぎなどを行います。
●訪問看護師
定期的に患者さんの自宅を訪れ、血圧や体温などのチェック、身体の衛生や排泄などの日常生活のケア、医師の指示による医療処置などを行います。また患者さんや介護をするご家族の相談にも応じます。医学的な知識をもつ訪問看護師は、医師と患者さんをつなぐ要であり、在宅医療では欠かせない存在です。
●薬剤師
必要に応じて患者さん宅を訪問し、薬の飲み方の指導や副作用の説明、残薬のチェックなどをします。患者さんの状態が変わってきたときは、薬を飲む回数や薬の形状の変更などを医師に提案することもあります。
●歯科医師、歯科衛生士
口の中が不衛生だと、口内の細菌が肺に入り、誤嚥性肺炎を起こしやすくなります。それを防ぐための口腔ケアを行うのが訪問の歯科医師、歯科衛生士です。虫歯や歯周病の治療、入れ歯の調整などのほか、嚥下(飲み込み)の訓練を行うこともあります。
●管理栄養士
在宅療養をするときの栄養面のサポートをする専門家です。必要に応じて自宅を訪問し、患者さんの栄養状態の確認や病気に応じた栄養指導を行います。家庭で食事を用意するときの献立の工夫や、調理の指導なども受けられます。
●リハビリテーション専門職種(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)
医師による指示や患者さんの希望がある場合、リハビリの専門職が訪問することがあります。起きる、立つ、歩くなどの基本動作を改善するのが理学療法士、着替えや食事、家事などの日常生活動作の機能訓練を行うのが作業療法士、会話や食べる・飲むといった口の機能の改善を図るのが言語聴覚士です。
●ケアマネージャー(介護支援専門員)
介護保険サービスの全体のまとめ役がケアマネージャーです。医療については在宅医や訪問看護師と連携するほか、高齢者が自宅で療養するための住宅改修、ホームヘルパーによる訪問介護や、デイサービスをはじめとした通所介護など、高齢者とご家族の生活を支えるための最適な介護保険サービスの計画(ケアプラン)を考えます。
●ホームヘルパー(訪問介護員)
ケアプランに基づいて自宅を訪れ、身の回りのことや家事の手助けをしてくれるのがホームヘルパーです。調理や洗濯、買い物などの生活援助のほか、食事や入浴、排泄、移動などの身体介護を行い、要介護の人が生活を続けられるように支えます。