新型コロナウイルス感染症対策として、3月頃から厳しい外出制限が行われてきたアメリカ。経済活動が再開されて約1ヵ月経過しましたが、不動産市場にはどのような動きがあったのでしょうか。今回は、現地リアルターである、パシフィック サザビーズ インターナショナル リアルティの石橋由美子氏が、アメリカ不動産の価格推移と、テレワーク普及によって米国富裕層に起こった変化について解説します。
再び活況を呈している米国不動産市場
全米各地では、多少の差は有るものの、様々なビジネスが再開してきました。筆者在住の南カリフォルニア州では、新型コロナウイルス第2波を危惧しながらも、6月2日よりビーチでの日光浴、散歩、ジョギング、海水浴が解禁され、12日よりジム、ホテル、飲食店、ワイナリー等色々な業種が規制の下でビジネスを再開し始めました。
下記の[図表]から読み取れるように、米国西部では、新型コロナウイルスの影響が出る前の、2月の不動産市場の数値にほとんど戻ってきました。米国中西部、南部、東部もかなり回復してきていることが分かります。
米国では全体的に売り物件が不足気味で、依然として売り手市場です。コロナ禍にも関わらず、4月には全米トップ50の大都市のうち35の都市で物件価格が上昇しております。例年どおりであれば、夏は不動産市場の繁忙期です。低金利が買い手の購買意欲を高めるでしょうから、このまま売り物件の不足が続けば今後も物件価格の上昇が続くと予想されます。住み替えを考えているホームオーナーにとっては正に今が売り時です。
しかし、全米どの都市でも物件価格の上昇が起きているかというと、その限りではありません。
5月に入り、南カリフォルニア州ロサンジェルス、ロングビーチ、アナハイム(ディズニーランド所在地)では物件の中央価格値が14.9%の上昇、ペンシルバニア州ピッツバーグでも14.0%,オハイオ州シンシナティでは12.1%上昇しておりますが、逆に、ミシガン州デトロイトでは物件の中央価格値が3.4%下落し、テキサス州サンアントニオでは3.2%の下落、ワシントン州シアトルでは3.1%の下落となっている都市もあります。
コロナ禍で「高級住宅価格」はどう変化した?
高級住宅価格の上昇はゆっくりではありますが、5月には高級住宅と位置付けられる価格が約3億1800万円からとなりました。これは、前月の4月と比較すると0.5%の上昇です。また1年前と比較すると6.1%上昇したことになります。
4月には、高級住宅の需要が前年比で9.5%減少したものの、5月に入ると物件価格1億円以上の住宅情報の閲覧数は前年度比で7.3%上昇しました。これは新型コロナウイルス発生前と比較すると6.2%の上昇です。
市場に出ている高級住宅売り物件数は、過去最低を記録した4月よりリバウンドしたものの、5月にはまだ前年比で15.6%の減少。価格1億円以上の住宅は、昨年5月には、売り手、買い手両者の売買契約合意後、物件登記登録完了までに平均約89日間を要したのが、今年5月の時点では約79日間に減少しました。
これはやはり、コロナ禍を懸念し売り手が物件を不動産市場から一旦おろしたり、売り時期を見送ったりしたために、売り物件の不足が生じ、需要が供給を上回りこの様な結果になったと考えられます。
テレワーク導入で「セカンドハウス」需要が急増
新型コロナウイルスの影響で自宅自粛令が出てからテレワークを余儀なくされ、個々のライフスタイルに変化が起きました。多くの人々が「家」の重要性を見直し、ホームオフィスや更に広いスペースの必要性を感じてきたために、住み替えやセカンドハウス購入を考える方が増加してきているというニュースを最近ではよく耳にします。
たとえば、大都市在住の富裕層は職場に近い自宅を構えながら、さらにセカンドハウスを近郊に所有する傾向があります。週末に都会を離れてセカンドハウスでリラックスしたり、又将来起こり得るであろう予期せぬ事態にも対応出来る様にというライフスタイルを見直した結果の現れでしょう。
超大物セレブが集うリゾート地で有名なニューヨークマンハッタン近郊都市ハンプトンでは売り物件の閲覧数が前年比で72%増加し、同様に他のマンハッタン近郊都市の住宅閲覧数も30〜40%増加したという結果が出ています。
セカンドハウスの住宅市場としてトップ5に含まれる、南カリフォルニア州のパームスプリングスはロサンジェルスから飛行機で約1時間弱、サンディエゴ市からは飛行機で2時間程の距離に位置する砂漠のリゾート地。米国のセレブの避寒地としても有名なパームスプリングスの物件閲覧数も1月より28%増加しています。
ここは日本でも知る人ぞ知る、高級ゴルフリゾート地で、数々のPGAのトーナメントが開催されています。PGAウエスト、ラキンタリゾート等の有名なゴルフ場があることも人気の要因になっています。
リモートワークの増加により、今後、米国の人々の「住居」に対する重要性がさらに増し、住み替えをしたり、セカンドハウスを購入したり、デュアルライフを楽しむ……というライフスタイルの変化が加速していくでしょう。
現在、日本に居住している方も、これらの影響を受け今後自身のライフスタイルを見直し、ビジネスや個々の人格を高める上でグローバル化を図りたいと考える方々も増えてくるはずです。そして日本と米国での「2拠点生活(デュアルライフ)」も選択肢の一つとなるのではないでしょうか?
※文中の数値結果:realtor.com® 引用
石橋 由美子
パシフィックサザビーズインターナショナルリアルティ不動産エージェント
エボルーション リアルティ コンサルティング
Evolution Realty Consulting
18年以上の経歴を持つアメリカの日本人弁護士と17年以上の不動産売買実績を有する不動産エージェントとのコラボレーションで生まれたEvolution Realty Consultingは専門家とのネットワークを活かしワンストップサービスを提供する総合的な不動産会社です。
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米国 南カリフォルニア州のサンディエゴでフルタイムの不動産エージェントとして活躍。自身も不動産投資家である。短大卒業後、富士通(株)に入社。1996年、赴任者の家族として北カリフォルニアのシリコンバレーにて赴任者家族として生活を開始。
知らない土地での住処探し、そして米国経済成長の良き時代に富裕層と関わったことがきっかけで、2006年にカリフォルニア州不動産エージェントの資格を取得。以来、米国内のお客様はもとより、海外のお客様の不動産取引(ご自宅、セカンドハウス、別荘、投資物件等の売買)をサポート。
豊富な知識と経験、不動産に関わる専門家との信頼のおけるネットワークによる「お客様のニーズに合わせた、納得のいくサービスのご提供」をモットーとした、ワンストップの不動産コンシェルジュサービスでお客様をサポートし、好評を得ている。
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