本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。

 

●世界的にコロナ感染の収束はまだ程遠く、米国でも南部で感染拡大が続き予断を許さない状況。

●米中関係の懸念は強いが、米国は香港に関する対中制裁を限定し通商合意破棄も回避しよう。

●朝鮮半島リスクもまだ小さく、やはりコロナに注意だがロックダウン再開でなければ株価急落は回避。

世界的にコロナ感染の収束はまだ程遠く、米国でも南部で感染拡大が続き予断を許さない状況

今回のレポートでは、足元のリスク要因をいくつか検証します。具体的には、①新型コロナウイルスの感染動向、②米中関係、③朝鮮半島情勢です。いずれも事態が悪化すれば、市場に深刻な影響を及ぼす恐れがあるため、現状を整理しておくことは重要と考えます。まず、①について、世界の新規感染者数の推移は図表1の通りで、感染収束にはまだ程遠い状況であることが分かります。

 

米国の感染者数動向も予断を許しません(図表2)。米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のファウチ所長は6月23日、米下院エネルギー・商業委員会の公聴会で、米国内の新型コロナウイルスの新規感染者に関し、「憂慮すべき急増」がみられると述べました。また、米南部諸州で感染拡大が続いている点を指摘し、感染が夏季に沈静化する可能性は低いとの見解を示しました。

米中関係の懸念は強いが、米国は香港に関する対中制裁を限定し通商合意破棄も回避しよう

次に、②の米中関係について整理します。日本時間6月23日の午前、ナバロ米大統領補佐官が「米中貿易協議は終わった」と発言したことを受け、市場で株安、円高が進行しました。しかしながら、直後にトランプ米大統領が米中の第1段階の合意は「全く変わっていない」とツイッターに投稿すると、すぐに株高、円安に転じ、米中関係の行方に極めて敏感な市場の様子が改めて確認されました。

 

米中関係での市場の関心は、香港をめぐり対立が深まるか、第1段階の米中通商合意が破棄されるか、の2点とみられますが、いずれも状況悪化の公算は小さいと考えます。現時点で、トランプ米大統領の最優先事項は選挙での勝利であり、選挙前の混乱は避けたいのが本音と思われます。そのため、中国には強硬姿勢を維持するものの、香港の統制強化への制裁は限定し、国内経済への影響が大きい通商合意の破棄には踏み込まないと推測します。

朝鮮半島リスクもまだ小さく、やはりコロナに注意だがロックダウン再開でなければ株価急落は回避

最後に、③朝鮮半島情勢を考えます。北朝鮮は6月16日、南北融和の象徴だった開城(ケソン)にある南北共同連絡事務所を爆破し、朝鮮半島情勢の緊張が再び高まりました。今回の北朝鮮の行動については、米国の経済制裁が続き、新型コロナウイルスの影響で中国との国境が遮断されるなか、経済協力を進められない韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権に強い姿勢を示したとの見方が多いように思われます。

 

北朝鮮が経済制裁の解除を重視する限り、韓国との交戦は慎重になるとも考えられ、実際、北朝鮮は6月24日、韓国への軍事行動計画を保留したと発表しました。今のところ市場も朝鮮半島情勢の行方を冷静に見守っています。以上を踏まえると、やはり新型コロナウイルスの感染動向には最も警戒が必要と思われます。ただ、各国で再び都市封鎖(ロックダウン)が実施されるような状況にならない限り、パニック的な株安は避けられるとみています。

 

(注)データは2020年3月1日から6月23日。中国を除く。7日間の移動平均。 (出所)WHOのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表1]新型コロナウイルスの新規感染者数(世界) (注)データは2020年3月1日から6月23日。中国を除く。7日間の移動平均。
(出所)WHOのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

(注)データは2020年3月7日から6月23日。7日間の移動平均。 (出所)WHOのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表2]新型コロナウイルスの新規感染者数(米国) (注)データは2020年3月7日から6月23日。7日間の移動平均。
(出所)WHOのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『リスク要因の検証~コロナ感染動向や米中関係など』を参照)。

 

(2020年6月24日)

 

 

市川 雅浩

三井住友DSアセットマネジメント シニアストラテジスト

 

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