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一人暮らしの高齢者は要注意…「偏食」の認知症リスク
前項のような低血糖による脳の症例を1つ紹介します。
川田さん(75歳)は、一人暮らしの男性です。10年前に奥さんに先立たれ、その後、認知症のお母さんのケアをかいがいしく続けてきましたが、そのお母さんも5年前に亡くなりました。川田さんはお子さんには恵まれませんでした。しかし、近くにいる弟さん夫婦がよく面倒を見てくれます。
川田さんは元大工さんでした。気っ風のよい方です。「俺は、宵越しの銭は持たねえ」とよく言っていました。自叙伝を2冊も著し、終活もしています。
クリニックには月1回、定期的に通って来ていました。ところが、ある日から、よく道を間違えるようになりました。自分がどこにいるのか、わからなくなってしまうのです。それでも、どうにかクリニックにはたどり着いていました。しかし、そのうち予約の日を間違えるようになり、ついに来院できなくなってしまいました。オリエンテーション(見当識)が悪くなったのでした。アルツハイマー病です。
川田さんにFreeStyle リブレproを付けてもらいました。これは腕に貼っておくだけで、血糖値を24時間、2週間にわたって記録してくれる便利な機器です。もちろん、付けたままお風呂に入っても、シャワーを浴びても大丈夫です。
すると、川田さんの偏った食生活が明らかになりました。なんと1日1食ですませ、腹が減ると軽くお菓子などの間食をつまんですませていたのです。一人暮らしの気安さから、いつの間にかこんな生活になってしまったのでした。
毎日の血糖値の変化を観ると、夜間の低血糖が見られ、食事の後には大きなスパイクが見られました。
一人暮らしの高齢者には、食事の用意をするのが面倒だからと、こういった食生活になってしまう方が少なくないようです。
現在は、保健師さんと薬剤師さんとが協力し、食事の改善に努力してもらっています。素直な川田さんは皆さんから愛され、どうやら認知症の進行は止まったようです。