患者数1700万人!?飽食の時代に蔓延する「低血糖」
食事の後に眠くなる人は、「血糖値スパイク」が起きている可能性があります。「血糖値スパイクが危ない。ガン、心筋梗塞、脳梗塞、アルツハイマー、その他の病因をつくる」と言われたら、どう思いますか。
糖尿病でもないのに低血糖の症状を起こす「自発性低血糖」(より正確には「本態性自発性低血糖」)は、あまり聞いたことのない病名だと思います。これはインスリンや血糖降下剤を服用したこともないのに、なぜか血糖値が80mg/dl以下に下がってしまう病態です。主にすい臓の異常や、すい臓に腫瘍ができたりすることがその原因といわれています。
厚労省研究班が2009年に発表した資料によると、その数は全国で推定350人(たった!)とされています。日本の人口1億2000万人から見ると、極めてレアな疾患です。しかし、本当にそうでしょうか。
実は私たちの小さなクリニックだけで、すでに自発性低血糖症の患者さんが900人ほどいます(2020年2月現在)。私たちの推定では、日本全国に1700万人ほどいる計算になります。
病因がわからず困った結果、「心の病」と誤診
では、なぜこうした患者さんが自発性低血糖症としてカウントされないかというと、その多くはうつ病や神経症などの精神疾患に誤診されたり、「自律神経失調症」など、適当な病名が見当たらないときに使われる「病名のクズカゴ」に入れられてしまっているのです。
多くの医師は高血糖を示す糖尿病には強い関心を持ちます。しかし、低血糖というと、糖尿病患者さんがインスリンを打ち過ぎたとか、血糖降下剤を飲み過ぎたなどの医療ミスで起こる低血糖(糖尿病性低血糖)にしか興味を示しません。
ですから、自発性低血糖症のような病態はめったに存在しないと思われてきたのです。しかし、私たちのクリニックでの症例からも明らかなように、糖尿病が原因ではない自発性低血糖はよくある疾患です。いわば、だれも気づかない病気、「見えない病気」です。低血圧や、起立性低血圧、甲状腺疾患も同様です。
患者さんは低血糖の症状による苦痛を訴えるのに、医師は病因を絞りきれずに困り果て、精神疾患にしてしまったり、自律神経失調症にしてしまったりします。その結果、向精神薬が処方されて、患者さんの病態はよりいっそう悪化していきます。正しく治療すれば治るものが、治らなくなってしまいます。