科学的に判明した「子がいても『父親』になれない人間」の正体

子を妬む母、愛し方が分からない父――「毒親」とも呼ばれる大人の姿。子が自分より優秀だと薄らぼんやり気づいてしまったそのとき、彼らは自身の子を「弱点」と捉え、否定してしまう。書籍『毒親 毒親育ちのあなたと毒親になりたくないあなたへ』(ポプラ社)を上梓した脳科学者の中野信子氏は、「パンドラの箱を開けるような気持ち」で、毒親の実態を語っている。

離婚を繰り返す男性に共通する「遺伝子の変異」

◆子の時代が長いという弱点

 

人類が種を維持するためには、かなり長期間にわたってこの弱点を抱えて生活しなければなりません。

 

子が弱点だと言ってしまうことには、反対意見もあるでしょう。けれど、人間の子は一人ではなかなか生き延びられません。子がいれば、時間も注意のかけ方も変わってきますから、労力も必要です。これは子を抱えている家庭の方なら当然、実感し、理解をしているはず。議論の余地はないと思います。

 

実際、子を抱えたまま戦闘をするということは不可能でしょう。外敵からしてみれば、一番弱い子どもを狙って攻撃をしてくるであろうと考えられます。子を外敵から守るのはなかなか大変なことです。

 

そうすると何が起こるかというと、子を持っていないほかの個体たちが、守ろうとして相互的に協力をする、協働的に動くわけです。そうでなければ生き延びられない。協働的に動かない集団がもしあったとすれば、その集団は次世代が残りにくく、いずれ滅びることになります。つまり、生物は、次世代を残すために共同体をつくるのです。もっと言えば、より協働的な、協調的な性質を持っているほうが繁栄するということになります。

 

我が子を愛せない理由は
我が子を愛せない理由は

 

すると、協調させるための遺伝子が人間社会の中にどんどん濃縮されていきます。その遺伝子、ないしは協調させるために脳内で起こる仕掛けの源になる神経伝達物質は、ホルモンの作用をするペプチドホルモンであるオキシトシンです。「愛情ホルモン」とも呼ばれていて、ストレスを緩和し、幸せな気分をもたらします。

 

そしてもう一つ重要な物質が、オキシトシンと同じく、人を含む多くの哺乳類に見られるペプチドホルモンであるアルギニン・バソプレッシンです。海外の研究によって、この遺伝子の変異がある男性は、変異がない男性に比べて離婚を繰り返したり、家庭生活で問題を抱えている確率が高いという報告があります。

 

この2種類のホルモンによって、私たちは仲間のために行動をしたり、家族でない、血縁でないにもかかわらずその相手に対して好意的に振る舞ったり、困っているときに助けようとしたり、ほかの相手よりも優先してその人に対してメリットをもたらそうと何らかの働きかけをするということが起こります。家族の絆というのはこの最も濃いものと言うことができます。

 

脳科学者

1975年、東京都生まれ。脳科学者、医学博士、認知科学者。東京大学工学部応用化学科卒業。東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。2008年から2010年までフランス国立研究所ニューロスピンに博士研究員として勤務。2015年、東日本国際大学特任教授に就任。テレビのコメンテーターとしても活躍中。

著者紹介

連載毒親~毒親育ちのあなたと毒親になりたくないあなたへ

本記事は、中野信子著『毒親』(2020年3月25日・ポプラ新書刊)より一部を抜粋・編集したものです。最新の情報には対応していない場合がございますので、あらかじめご了承ください。

毒親 毒親育ちのあなたと毒親になりたくないあなたへ

毒親 毒親育ちのあなたと毒親になりたくないあなたへ

中野 信子

ポプラ新書

家族についての悩みはあなたのせいではない! 気鋭の脳科学者が、ついに「パンドラの箱を」開ける! 「毒親」の正体とその向き合い方を分かりやすく説きます。 ●親を憎んでしまうのは、自分のせい? ●なぜ、子どもを束…

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