離婚を繰り返す男性に共通する「遺伝子の変異」
◆子の時代が長いという弱点
人類が種を維持するためには、かなり長期間にわたってこの弱点を抱えて生活しなければなりません。
子が弱点だと言ってしまうことには、反対意見もあるでしょう。けれど、人間の子は一人ではなかなか生き延びられません。子がいれば、時間も注意のかけ方も変わってきますから、労力も必要です。これは子を抱えている家庭の方なら当然、実感し、理解をしているはず。議論の余地はないと思います。
実際、子を抱えたまま戦闘をするということは不可能でしょう。外敵からしてみれば、一番弱い子どもを狙って攻撃をしてくるであろうと考えられます。子を外敵から守るのはなかなか大変なことです。
そうすると何が起こるかというと、子を持っていないほかの個体たちが、守ろうとして相互的に協力をする、協働的に動くわけです。そうでなければ生き延びられない。協働的に動かない集団がもしあったとすれば、その集団は次世代が残りにくく、いずれ滅びることになります。つまり、生物は、次世代を残すために共同体をつくるのです。もっと言えば、より協働的な、協調的な性質を持っているほうが繁栄するということになります。
すると、協調させるための遺伝子が人間社会の中にどんどん濃縮されていきます。その遺伝子、ないしは協調させるために脳内で起こる仕掛けの源になる神経伝達物質は、ホルモンの作用をするペプチドホルモンであるオキシトシンです。「愛情ホルモン」とも呼ばれていて、ストレスを緩和し、幸せな気分をもたらします。
そしてもう一つ重要な物質が、オキシトシンと同じく、人を含む多くの哺乳類に見られるペプチドホルモンであるアルギニン・バソプレッシンです。海外の研究によって、この遺伝子の変異がある男性は、変異がない男性に比べて離婚を繰り返したり、家庭生活で問題を抱えている確率が高いという報告があります。
この2種類のホルモンによって、私たちは仲間のために行動をしたり、家族でない、血縁でないにもかかわらずその相手に対して好意的に振る舞ったり、困っているときに助けようとしたり、ほかの相手よりも優先してその人に対してメリットをもたらそうと何らかの働きかけをするということが起こります。家族の絆というのはこの最も濃いものと言うことができます。