新興国で久しぶりの格上げだが

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新興国で久しぶりの格上げだが新型コロナウイルスに伴う深刻な景気の落ち込みと原油価格の下落で多くの新興国が格下げされました。ウクライナの格上げは新興国としては久々の格上げです。ウクライナ国債価格も上昇(利回りは低下)傾向です。ただ、今回の格上げはウクライナ固有の理由もあり、朗報ではあっても、新興国全体に格上げが波及する可能性は低いと思われます。

ウクライナ格付け:多くの新興国で格下げが続く中、久々の格上げ

米国格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービス(ムーディーズ)は2020年6月12日にウクライナの発行体格付け(自国通貨建て、外貨建て共に)をCaa1(CCC+に相当)からB3(B-に相当)に格上げしました。見通しは安定的(ステーブル)としています。

 

ムーディーズは格上げの要因として国際通貨基金(IMF)の支援プログラム並びに他の国際機関等からの支援により、当面の返済懸念が後退したと説明しています。

どこに注目すべきか:新興国、格上げ、格下げ、SBA、DSSI

新型コロナウイルスに伴う深刻な景気の落ち込みと原油価格の下落で多くの新興国が格下げされました。ウクライナの格上げは新興国としては久々の格上げです。ウクライナ国債価格も上昇傾向です(図表1参照)。ただ、今回の格上げはウクライナ固有の理由もあり、朗報ではあっても、新興国全体に格上げが波及する可能性は低いと思われます。

 

この点を確認する意味で、ウクライナの格上げの理由を簡単に振り返ると、ムーディーズは格上げの背景として、ウクライナが新たな銀行法や土地改革法案の成立などを実施したことから、IMFと新たな18ヵ月のスタンドバイ取極(SBA)を取り交わし、50億ドルの支援を受け取る道が開かれたと説明しています。50億ドルのうち21億ドル分については緊急に(要は今すぐに)支援され、残りの29億ドルについても合意の条件を満たせば追加して受け取れる内容です。

 

このため、ウクライナは当面の債務返済に余裕が出来たとムーディーズは判断した模様です。

 

ウクライナでは14年にロシアが支援する親ロ派武装勢力との紛争が始まり、通貨が暴落、外貨準備も急減しました。そこでIMFは15年にウクライナ向けに4年間で総額175億ドルの融資を承認し経済再建を支えてきています。19年終わりにも55億ドルの融資を受けるなどウクライナは支援頼りです。

 

ウクライナの銀行改革などの成果は認めつつも、格付け自体はB3と低水準で、自律回復は程遠い状況です。

 

次に新興国全般についてです。コロナ感染拡大などで多くの新興国が財政悪化、格下げに直面しました。そこでIMFなどの国際機関が新興国を救済しています。現段階の支援の中心は時間優先となる緊急融資でウクライナのケースとはプロセスが異なるようです(図表2参照)。

 

失業手当など緊急を要する資金は融資でカバーされたとしても、今後は債務返済の負担に別の対応も必要です。例えば、G20を中心に債務支払猶予イニシアティブ(DSSI)が検討され、返済を一時的に免除する内容がひとつの方法です。

 

緊急融資やDSSIなど新興国の財政負担軽減への期待はあります。ただ、DSSIに懸念もあります。例えば民間債権者への返済が影響を受ける場合、返済の遅れは債務不履行(デフォルト)に該当するか格付け会社の間で解釈も割れています。ムーディーズはDSSIに参加した国にネガティブウォッチ(格下げ方向で検討)を付与するケースもある一方、他の格付け会社は様子見姿勢です。財政が苦しい新興国の支援プロセスには、まだ注意すべき点が残されていると思われます。

 

期間:2019年6月17日~2020年6月17日、利率7.75%、24年9月償還 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表1]ウクライナのドル建5年国債利回りの推移 期間:2019年6月17日~2020年6月17日、利率7.75%、24年9月償還
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

時点:2020年6月11日現在、69ヵ国、約247億ドル ※RCF(ラピッド・クレジット・ファシリティ)、RFI(ラピッド・ファイナンシング・インストルメント)共に所得国を対象とした緊急融資、ECF(拡大クレジットファシリティ)国際収支の悪化に対応、EFF(拡大信用供与措置)ECFと同様  出所:国際通貨基金(IMF)のデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表2]IMFの新興国緊急支援の概要 時点:2020年6月11日現在、69ヵ国、約247億ドル
※RCF(ラピッド・クレジット・ファシリティ)、RFI(ラピッド・ファイナンシング・インストルメント)共に所得国を対象とした緊急融資、ECF(拡大クレジットファシリティ)国際収支の悪化に対応、EFF(拡大信用供与措置)ECFと同様
出所:国際通貨基金(IMF)のデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『新興国で久しぶりの格上げだが』を参照)。

 

(2020年6月18日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

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