「築古アパート物件」なら、家賃急落リスクは低い
不動産投資の利回りが「年間家賃収入÷物件価格×100」で計算されていることからも明らかなように、賃料水準と物件価格はそれぞれ投資の成否に影響を与えます。ここであらためて、不動産投資物件の価格について掘り下げておきましょう。
新築でも中古でもそうですが、物件の価格はいくつかの要素が絡んで決められています。賃料のように相場を目安にしている部分もあれば、地域に根ざして価格が決められているケースもあります。重要なのは、“一様ではない”ということです。
具体的な価格の決まり方について見ていきましょう。中古市場で流通している不動産の価格は、主に三つの方法で算定されています。その三つとは、「収益還元法」「積算法」「取引事例比較法」です。
収益還元法とは、物件ごとの年間家賃収入を不動産投資家が期待する利回り(還元利回り)で割ることによって求められます。ちなみにこの場合の利回りは、取引事例から算出されたものではなく、「キャップレート」と呼ばれる指標が使われています。
●収益還元法
年間家賃収入÷不動産投資家が期待する利回り
この計算式からも明らかなように、収益還元法は年間家賃収入と利回りという、不動産投資において重要な各指標(家賃と利回り)を基に算出されています。その点、より不動産投資家のイメージに近い物件価格になると想定されます。さらに収益還元法は、「直接還元法」と「DCF法」に分類されます。
次に積算法についてですが、こちらは主に金融機関の評価で使われています。具体的な計算方法としては、土地と建物の原価を割り出したうえで、それぞれを合計して不動産全体の価格として捉えるものとなります。
●積算法
土地の価格+建物の価格
ちなみに土地の価格に関しては、「路線価」を基に算出されます。路線価とは、相続税(相続税路線価)や固定資産税(固定資産税路線価)の算定に使われる指標で、毎年7月1日に国税庁から発表されています。路線価が定められていない地域は、市区町村の「評価倍不動産価格について収益還元法直接還元法取引事例比較法積算法DCF法不動産価格の算出方法率表」を用いて算出されます。
一方で建物の価格は、「再調達原価」を基に算出されています。再調達原価とは、現時点で同等の建物を建てた場合に必要とされる金額のことで、築年数に応じた減価償却を加味して計算されます。
このような計算方法の違いから、収益還元法と積算法で同じ不動産を評価した場合、違いが出るケースが多くあります。たとえば、人気エリアの物件などで土地の面積が小さく、建物が古い場合、収益還元法のほうがはるかに高く見積もられます。
最後に取引事例比較法についても触れておきましょう。取引事例比較法とはその名のとおり、当該物件の周辺にある類似物件を基に、それぞれの成功事例を比較検討して調整される計算方法です。具体的な計算式は次のとおりです。
●取引事例比較法(比準価格)
取引事例の価格×事情補正×時点修正×標準化補正×地域要因比較×個別要因比較
計算式を見てもらうとわかるように、取引事例比較法の計算はかなり複雑です。主にエンドユーザー向けの住宅売買に使われる指標なので、不動産投資家はそれほど意識しなくても問題ないでしょう。計算の仕組みだけ知っておけば十分です。ちなみに、取引事例比較法による評価額は「比準価格」と呼ばれています。