本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「宅森昭吉のエコノミックレポート」の『経済指標解説』を転載したものです。

 

4月分機械受注(除船電民需)はコロナ禍で前月比▲12.0%の大幅減

 

4月分機械受注(除船電民需)は大型案件1件で前月6件の反動あり

 

3ヵ月移動平均前月比2ヵ月ぶり減少、「足元は弱含んでいる」に下方修正

 

4~6月期見通しの前期比▲0.9%達成には、各月前月比+11.6%必要

 

 

 

●4月分機械受注(除く船舶電力の民需ベース、以下、除船電民需と表記)の前月比は▲12.0%と2ヵ月連続の減少になった。3ヵ月移動平均は前月比▲3.4%で2ヵ月ぶりの減少になった。また、機械受注(除船電民需)の前年同月比は▲17.7%で5ヵ月連続の減少になった。

 

●機械受注(除船電民需)の大型案件をみると、前回3月分は大型案件、造船業2件(内燃機関2件)、運輸業・郵便業3件(鉄道車両2件、運搬機械1件)、通信業1件(通信機1件)の合計6件と多かった。今回4月分の大型案件は、造船業1件(内燃機関1件)であった。4月分機械受注(除船電民需)の前月比が▲12.0%と大幅減になったのは、大型案件数の反動の影響もあろう。

 

●4月分製造業の前月比は▲2.6%と3ヵ月連続の減少だった。4月分の製造業では17業種中、6業種で増加し、減少は11業種だった。

 

●4月分非製造業(除船電民需)の前月比は▲20.2%と3ヵ月ぶりの減少になった。3月分電力業の大型案件は原子力原動機の4件、運搬機械1件、その他産業機械1件の合計6件で、電力業の前月比+18.9%だった。今回4月分の電力業の大型案件は火水力原動機の2件だった。電力業の前月比は+115.4%の大幅増加になった。そのため4月分の船舶・電力を含む非製造業全体では前月比+4.3%と2ヵ月連続の増加になった。非製造業12業種中、7業種が増加で5業種が減少となった。

 

●大型案件は、前回3月分では合計27件と多かった。内訳をみると、前述した機械受注(除船電民需)6件と電力業6件の民需合計12件の他に、官公需10件(運輸業1件〔鉄道車両1件〕、防衛省2件〔航空機1件、船舶1件〕、国家公務3件〔航空機3件〕、地方公務2件〔その他産業機械2件〕、その他官公需2件〔航空機1件、通信機1件〕)と、外需5件(航空機3件、電子計算機等1件、化学機械1件)でであった。今回4月分では合計4件だった。内訳をみると、前述した機械受注(除船電民需)1件と電力業2件の民需合計3件の他に、外需1件(電子計算機等1件)である。

 

●中小企業の動きを反映している部分がある代理店受注は4月分前月比▲8.9%と3ヵ月連続の減少となった。前年同月比は▲17.8%と12ヵ月連続の減少になった。

 

●外需は4月分前月比▲21.6%で2ヵ月連続の減少になった。前年同月比は▲16.8%と3ヵ月連続の減少になった。

 

●内閣府の基調判断の推移をみると、19年9月分では「機械受注は、持ち直しの動きに足踏みがみられる」という判断に下方修正された。その後10月分ではさらに下方修正され、18年12月分~19年3月分以来の「機械受注は、足踏みがみられる」という判断になった。11月分・12月分・20年1月分、2月分、3月分と、「機械受注は、足踏みがみられる」という判断であったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響が大きく出た4月分では「機械受注は、足元は弱含んでいる」という判断に下方修正された。

 

 

●4~6月期の前期比実績は、見通しに使う達成率の計算方法を変えた09年(平成21年)からの11年間でみると、見通しと比較して上振れ4回、下振れ7回であり、下振れることが多い四半期である。

 

●機械受注(除船電民需)4~6月期の見通しは前期比▲0.9%は、5月・6月の各月の前月比が+11.6%でないと達成できない。4~6月期の実績は見通しより下振れしやすい傾向があるが、今年もそうなりそうだ。

 

 

●景気ウォッチャー調査の設備投資関連・DIの最近の動きをみよう。20年1月の現状判断DIが52.8(同9人)と18年12月分の55.0以来の50超となった。グラフからは設備投資関連・現状判断DIの底堅さが感じ取れるようになってきていた。しかし、新型コロナウイルスの影響で現状判断DIは2月34.6(同13人)、3月11.4(同11人)、4月10.0(同5人)へと急落した。その後、緊急事態宣言解除もあり、5月は16.7(同9人)と底打ちしたようだ。ただし、5月のコメントはおおむね「新型コロナウイルスの影響もあり、サービス業全般の景気が悪くなっている。それに伴い、当社の取引先も設備投資を延期するというような話になっている。」(南関東、建設業〔営業担当〕)のような厳しいものがほとんどだった。

 

●一方、設備投資関連・先行き判断DIは19年11月には51.6(同16人)と1月以来の50超に戻ったが、12月は40.3(同18人)、20年1月は35.4(同12人)、2月は36.1(同9人)、3月は21.4(同14人)、4月は18.8(同8人)と弱含んでいる。新型コロナウイルスの影響によるところが大きそうだ。5月は26.4(同18人)に持ち直した。5月には「昨今の在宅勤務経験で働き方が変わると想定している。引き続き在宅勤務をする人が一定数存在することで、インターネット接続の需要があると考えられる。そのため、通信量の増加に対する設備投資計画を考えている。売上はさほど変化しないが、設備投資で減価償却費が増えるため、収支をどうするか考える必要がある。」(南関東、通信会社〔経理担当〕)という新型コロナ対策でのテレワークの増加への対応に関するコメントがあった。

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2020年4月分「機械受注」データの分析』を参照)。

 

(2020年6月10日)

 

宅森 昭吉

株式会社三井住友DSアセットマネジメント 理事・チーフエコノミスト 

 

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