インカムゲインもキャピタルゲインも狙えない新築物件
新築と比較した場合、中古物件にはメリットがたくさんあります。なかでも、不動産投資の成否に直結する価格面において、中古物件は非常に優れています。端的にいえば、中古物件には余計な費用が上乗せされておらず、適正価格で購入しやすいのです。
すでに説明してきたように、新築物件にはさまざまな費用が上乗せされています。デベロッパーや販売会社の利益はもちろん、建材費や工賃、広告宣伝費や人件費なども決して小さくありません。それらすべてが価格に反映されています。
そうした物件を購入すると、投資状況はどうなってしまうでしょうか。利回りは低くなり、かつ月々のキャッシュフローはほとんど出ないか、場合によっては赤字になります。
投資適格性という観点から考えても、新築物件を購入するのは得策でないとわかります。不動産投資における投資適格性は、得られる家賃収入が多いか、あるいは物件価格が安いことです。さらに、入居者が安定的に獲得できることが条件となります。
たしかに新築であることは、築年数を気にする入居者へのアピールにはなります。同じ家賃水準であるなら、築年数が古い物件よりも優先的に選ばれる可能性もあると考えられます。しかし、それがいつまでも続くわけではありません。
そうなると、新築プレミアムを支払ってまで新築物件を購入するメリットがどこまであるのかは、投資適格性という観点からも疑問です。むしろ、すでに入居者が付いている優良中古物件を購入したほうがいいのは明らかでしょう。
新築プレミアムのインパクトがどのくらいあるのかをイメージしてもらうために、よくあるケースで考えてみましょう。たとえば3000万円で新築区分マンションを購入し、すぐに売却した場合、どのくらい価格が下落するでしょうか。
もちろん、物件の立地や建物のブランドなどによっても変わりますが、おおむね物件価格の20~25%ほど、つまり600万円前後は下がると考えて間違いありません。要するに、それだけの金額が上乗せされているということです。
二次請けや三次請けというかたちで販売会社に委託している場合は、各社の利益がさらに上乗せされるケースもあります。そのような場合は運用利回りも3%前後がいいところ、投資対象としてかなり厳しいのがわかります。
さらに最近では、住宅だけでなく「新築区分オフィス」というものも販売されています。建物の用途が違うだけなのですが、販売会社の売り方としては区分マンションとそれほど変わらず、投資用としてすすめている業者もいるようです。
いずれにしても、新築区分で利益を上げるのはむずかしく、所有し続けなければ旨味がありません。すぐに売却しても赤字になってしまうので、結局は保有するという選択肢以外、取れないことになります。
そうなると、投資としての柔軟性が失われるばかりか、最初からビハインドを背負っているのと同じことになります。やはり中古物件のように、実勢価格で購入・売却ができる不動産に投資してこそ、不動産投資をやる価値があるといえます。