「年金・保険代わり」「節税対策」は赤字物件の常套句
新築のなかでも、特に危険なのが「区分マンション」への投資です。新築区分マンションは業界のなかでもメインで取り扱われていることもあり、不動産投資の最初の一歩として始めてしまう人は少なくありません。
しかしそこに落とし穴があるのです。新築区分マンションをいくつも購入し、入居者が獲得できないばかりか売却もできず、最悪の場合には破産してしまうケースがあります。それだけ新築区分マンション投資は厳しいということです。
では、なぜ新築区分マンション投資は厳しいのでしょうか。その理由はすでに述べているように、利回りが低くなる傾向があることに加え、場合によってはキャッシュフローがマイナスになってしまう可能性があるためです。
思い出してください。そもそも新築物件には新築プレミアムが上乗せされています。それでも入居者を確実に獲得できるならいい、と考える人もいるかもしれませんが、購入価格が大きくなるということは、それだけ運用が厳しくなることを意味します。
表面利回りの計算式が「年間家賃収入÷物件価格×100」であることからも明らかなように、年間の家賃収入が大きいか、あるいは物件価格が安くなければ、利回りは大きくなりません。つまり新築というのは、最初から利回りが低いと想定されている物件なのです。
そのうえ、月々のキャッシュフローがマイナスになる。つまり得られる家賃収入よりローン返済+諸経費の額が大きくなるとすれば、不動産投資家には持ち出しが必要となります。持ち出しとはシンプルに表現すれば、赤字額の補填です。
本来、利回りが低く赤字になるような対象に投資したいと考える人はいません。しかし、新築区分マンションの営業マンたちは「年金代わりになる」「保険代わりになる」「節税になる」などのトークで、巧みに販売しているのが実情です。
たしかに、それらの理由も不動産投資を始めるきっかけにはなるのですが、裏を返せば「不動産投資そのものの収益は得られないのですが…」といういい訳が透けて見えます。つまり、本来の投資対象としては厳しいということなのです。
この点については何度も強調しておきたいのですが、不動産投資をすることの目的はあくまでも“収益を得る”ことです。その点から外れてしまうと、何のために不動産投資をしているのかがわからなくなってしまいます。
目的がブレてしまえば、投資判断にもブレが生じます。それはすなわち、投資のゴールをイメージできていないことと同じであり、かつ自らの資産形成をコントロールできていないのと同じです。それでは投資をする意味がありません。
将来の資産形成のために不動産投資をするのであれば、自分の資産がどこに向かっているのかを考えながら、採算が取れる投資を着実に行うことが大切です。そこから外れている物件は、不動産投資本来の意味を成さないと理解しておきましょう。
繰り返しになりますが、「年金代わりになる」「保険代わりになる」「節税になる」などの営業トークは、キャッシュフローが出ない可能性を示唆しています。そしてそのような物件は、新築区分マンションに多いのです。
まともな投資物件であれば、きちんとキャッシュフローは出るということを忘れないようにしてください。