基礎知識なく始める人々…「投資失敗」は当然の帰結
不動産投資に対する否定的なニュースが増えている昨今、これから不動産投資を始めることに不安を感じている人も多いことでしょう。たしかに不動産投資に失敗している事例が目に付きやすくなっているのは事実ですが、だからこそチャンスがあるともいえます。
あらゆる投資やビジネスは失敗する人と成功する人がいます。そしてその成否を分けるのは、基本的な知識を身に付けているかどうかと、正しい行動が取れているかどうかに集約されます。つまり、大事なのは原理原則です。
不動産投資も同様で、原理原則に基づいて意思決定を行い、行動していれば、それに応じた結果が得られます。失敗している人の多くは、どこかの段階で原理原則から外れており、失敗するべくしてしているのです。
そして、その原理原則の一要素となるのが市況です。市況とはつまり不動産を取り巻く経済状況のことですが、そこには大局観が求められます。より噛み砕いていうと、「これから先、日本経済はどうなるのか?」という視点です。
今後、「市況」なくして不動産投資の成功は不可能
未来を正確に予測することは不可能ですが、どのような方向に向かうのかをイメージすることは可能です。事実、そのための材料はたくさんあります。たとえば人口の推移。経済活動も住まいも人口に大きく影響されていることはいうまでもありません。
特に日本の場合、世界でも高い水準にある少子高齢化の進行により、高齢化と人口減少は避けられそうにありません。つまり、社会全体として高齢者が増えていくことと、人口そのものが減っていくことは、一つの事実として捉えられるわけです。
不動産という観点からは、まず住まいとしての需要が少なくなっていきます。すでに地方では空き家問題が深刻になっているように、これから先、不動産需要は都市部に集中していくことでしょう。その点に関しても知っておくことが大切です。
事実、2019年時点で都市部の不動産価格は高騰しています。東京都心はもちろんのこと、周辺都市でも駅近物件を中心に価格が上昇し、高止まりしているのが現状です。この先もしばらくは高水準で推移していくと予想されます。
その根拠となるのは、やはり2020年の東京オリンピック・パラリンピック※でしょう。すでに会場の建設やインフラの整備、さらには外国人観光客の誘致も進んできています。建設業や旅行業は非常に活況です。
※本書『最強「レアボロ」不動産投資』執筆当時の情報です。2020年6月現在、2021年に延期となっています。
国内産業が伸び悩んでいる日本において、インフラの整備という“経済の土台”と外国人観光客という“外需”は、未来の不動産投資を占う大きなポイントになるかもしれません。少なくともそれらが景気に与える影響は大きいでしょう。
あとは、オリンピック・パラリンピック後にも活用されるようなレガシーをいかに残せるかがカギとなります。その点においては、今後の動向について引き続き注視していく必要があるといえそうです。
4つの観点から分析…「儲かる物件」のポイント
不動産投資にまつわる成功と失敗、そしてメリットやデメリット、さらには原理原則などを学んでいくと、不動産投資の全体像が見えてきます。そのうえで、自身の状況と目標設定に基づく戦略と戦術を明確にし、正しく実践すれば、より成功確率が高まります。
そもそも、不動産投資にはいくつかの種類があります。具体的には「建物」「規模」「建物の状況」「地域」という4つの観点から、不動産投資を分類することが可能です。
これらの分類が不動産投資にどのような影響を及ぼすのかを考慮しておくことで、投資の精度は確実に高まります。むしろ、これらの違いを理解していなければ正しい投資スタンスを取ることはできないと考えておいたほうがいいでしょう。
次に、具体的な相違点について見ていきましょう。まず、建物の種類については、大きく「アパート」と「マンション」があります。不動産投資の基本は、集合住宅に投資して入居者を獲得し、家賃収入を得ていくものです。そのため、集合住宅としてのアパートとマンションが挙げられます。
また、購入する規模に関しては「一戸(区分)」と「一棟」があります。通常、アパートへの投資は一棟となり、マンションの場合は一戸も一棟もあり得ますが、購入価格の面で区分での販売が主流です。そのため、アパートへの投資にはそれなりの資金が必要となります。
ただ、区分投資は少額でも始められる反面、投資効率の点で一棟投資に劣ります。なぜなら一棟投資であれば不動産投資にかかる管理費や修繕費を分散できますが、区分投資では一戸を所有するごとに負担しなければなりません。
加えて、一棟投資では建物全体としての空室率を計算に入れて投資戦略を構築できるものの、区分投資では「空室=家賃収入ゼロ」という状況になってしまいます。建物全体としての投資ができないのは、投資効率としても劣るわけです。
別の視点からも考えてみましょう。建物の状況としては「新築」と「中古」があります。新築の不動産価値は、購入してからの下落率が大きいという特徴があります。なぜなら建築費用やデベロッパーなど建築会社の利益に加え、販売会社の営業利益、さらには物件を販売するための高額な広告宣伝費なども上乗せされているからです。それらは「新築プレミアム」と呼ばれており、その分、投資適格性は劣ります。当然、利回りも下がる傾向にあります。
一方の中古物件は、利回りは高くなる傾向があるものの、建物の経年劣化に注意が必要です。購入する際には建物本体はもちろん、設備関連の経年劣化に注目しつつ、投資を判断していく姿勢が求められます。
最後に「都心」と「地方」についてはどうでしょうか。大きな違いとして挙げられるのは価格と人口です。人口が多い都心は入居者を獲得しやすい分、物件価格は高くなります。反対に地方は人口が少ない分、物件価格は安くなります。
そのような違いがあることを認識したうえで、不動産投資をしていくことが大切です。重要なのは一つの視点から物件を精査するのではなく、複数の視点からメリット・デメリットを見極め、適切な判断をしていくことでしょう。
もはや「高額な失敗物件」…新築プレミアムという幻想
不動産投資の種類とそれぞれの特徴について理解したうえで、筆者がおすすめするのは何といっても「中古物件」です。中古物件のなかでも特に「中古のアパート」は、地域を問わず、投資に最適な物件がたくさんあります。
現状、問題となっている不動産投資の多くは、新築物件を取り扱っているものです。サブリース問題のところでも触れているように、新築物件を購入して運用していくと、どうしても失敗する確率が高まってしまいます。
前述したように、新築物件にはさまざまな費用が上乗せされています。それだけ余計な価格が上乗せされているにもかかわらず購入者がいるのは「新築プレミアム」という価値だけで入居者を獲得しやすいという利点があるからです。
特に、日本人は新しいものを好む傾向が強く、中古よりも新築のほうが価格も高くなっています。諸外国では長く使われている不動産のほうが価格が高いケースもあり、日本人の嗜好とは異なる部分があるようです。
さて、そのような日本人なりの傾向があるにもかかわらず、中古物件に投資するべき理由は、投資効率がよいことに尽きます。不動産投資で購入する物件は、基本的に自分で住むためのものではありません。まずはその点を誤解しないようにしてください。
また、購入した物件は賃貸に出すわけですが、現存する賃貸物件の多くが新築でないことはご存じのとおりです。つまり中古であっても、立地や家賃、物件の状況がよければ問題なく入居者を獲得できるということです。
すでに述べているように、日本における不動産投資の肝は「利回り」になります。つまり、いかに安定的に入居者を獲得できるかどうかが大事なのです。そのような物件を見極めるためにも、中古物件は最適といえるでしょう。
新築の場合、新しいから入居者を獲得できると思うかもしれませんが、実際に募集をかけてみなければわかりません。また、運用してからの動向についても、周辺物件の状況を見つつ、運営しながら判断していく必要があります。
しかも、新築プレミアムが上乗せされているため、その分のビハインドを背負いながら投資しなければならないのです。そうなると、これから不動産投資を始める人にとってはハードルが高いといわざるを得ません。
一方で、中古物件は過去の入居状況がわかります。併せて周辺物件や周辺環境等をリサーチしておけば、どのような推移で投資が進んでいくのかも明確にイメージしやすいでしょう。つまり、より詳細なシミュレーションが可能となるのです。
事前に詳細なシミュレーションができるかどうかは、投資判断の精度に大きく影響します。しかも、現実的な数値でのシミュレーションができるのであれば、より不動産投資の成功確率は高まると考えられます。
マンションよりも価格が安い傾向にある中古アパートは、今後不動産投資の主流になるかもしれません。次回以降で、さらに詳しく見ていきましょう。