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今回の豪中銀の声明におけるポイントは、経済見通しに改善が見られたこと、3年国債の利回りに対するイールドカーブコントロール(YCC)など今後の金融政策について間接的ながら大枠の方針がうかがえたことです。結論からいえば、豪中銀は当面、現在の政策金利の水準を維持する可能性が高いと思われます。

豪中銀:市場予想通り政策金利は据え置き、経済見通しは慎重ながら改善期待も

オーストラリア(豪)準備銀行(RBA、中央銀行)は2020年6月2日の金融政策理事会で政策金利と3年国債利回りを市場予想通り0.25%で据え置きました(図表1参照)。

 

日次、期間:2019年6月3日~2020年6月2日 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表1]豪国債利回り(3年、10年)と政策金利の推移 日次、期間:2019年6月3日~2020年6月2日
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

豪中銀は声明で豪経済について、(世界大恐慌の影響を受けた)1930年代以来、最大の不況を経験していると前置きしながら、経済見通しについて想定を上回る改善となる可能性を示唆しています。豪中銀は前回(5月5日)の理事会で20年前半にマイナス10%、今年全体の成長率がマイナス6%となるとの見込みを述べていました。

どこに注目すべきか:イールドカーブコントロール、新規感染者数

今回の豪中銀の声明におけるポイントは、経済見通しに改善が見られたこと、3年国債の利回りに対するイールドカーブコントロール(YCC)など今後の金融政策について間接的ながら大枠の方針がうかがえたことと見ています。結論からいえば、豪中銀は当面、現在の政策金利の水準を維持する可能性が高いように思われます。

 

まず豪経済については、08年の金融危機(リーマンショック)でもテクニカルな景気後退(2四半期連続のマイナス成長)を回避しており、景気後退となったのは1991年にまでさかのぼる必要があります。3日に発表された1-3月期GDP(国内総生産)成長率は11年1-3月期以来のマイナスとなる前期比マイナス0.3%でした。4-6月期もマイナス成長となる見込みで、景気後退の公算が高まっています。

 

豪中銀も今年前半の大幅なマイナス成長を見込んでいます。特に豪経済は海外経済の動向に左右されやすい面もあるだけに、基本は慎重姿勢です。ただし次の点をプラスに評価しているようです。

 

まず、新型コロナウイルスの感染拡大が抑制されていることです。新規感染者数を見ても4月月初から低下傾向です(図表2参照)。社会活動の規制緩和も急ピッチで、当初5月中旬までとしていた社会的距離戦略も前倒しで緩和しました。同じく収束が進むニュージーランドとの間で入国制限の緩和も開始されています。

 

日次、期間:2020年1月2日~2020年6月2日 ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成)
[図表2]豪ドル(対米ドル)と新規感染者数の推移 日次、期間:2020年1月2日~2020年6月2日
ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成)

 

その他プラス要因に、雇用市場で労働時間の低下に歯止めがかかったこと、消費の一部改善を声明で指摘しています。

 

次に、金融政策では3月19日の臨時理事会で導入した政策の継続が示唆されています。この19日は3月月初に続く2回目の利下げと、YCC、中小企業向け融資であるターム物資金供給ファシリティなどが導入されました。

 

3月に0.25%にまで引き下げた政策金利は事実上の下限との認識を維持している模様です。幸いなのは、3年国債利回りによるYCCが機能していることです(図表1参照)。声明でも前回4月の会合から1回国債を買っただけと明言していますが、それでも3年国債利回りと、さらに長期国債利回りも抑制された格好で、政策ツールとして有効と考えているようです。

 

中小企業の資金ニーズが強いことからターム物資金供給ファシリティの利用拡大も見込んでいます。政策金利を下限に据え置きつつ、他の政策手段を活用して今後の動向に対応するのが、豪中銀の基本スタンスと思われます。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『かすかながら回復に自信を見せた豪中銀』を参照)。

 

(2020年6月3日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

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