新興国の量的金融緩和

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新興国の中央銀行はリーマンショックとも言われる世界金融危機などの局面で非伝統的金融政策による流動性対策を導入したことはありますが、現地通貨建債券による量的金融緩和がここまで拡がったことは過去に例を見ない状況です。これまでのところ、結果の評価は国により異なりますが、おおむね成果が見られます。ただ、今後も続けるべきか議論が分かれると思われます。

新興国中央銀行:伝統的な金利の操作に加え債券購入も政策手段として導入

先進国の中央銀行ではほぼ通常の金融政策となりつつある中央銀行の国債購入ですが、新興国では導入が遅れていました。

 

しかし、新型コロナウイルスの感染拡大で景気が深刻化する中、金融市場の安定や資金調達支援を理由に新興国の中央銀行でも量的金融緩和(債券購入)を拡大する様相を見せています(図表1参照)。

 

出所:BIS、各種報道を参照してピクテ投信投資顧問作成
[図表1]債券購入を最近導入した主な新興国 出所:BIS、各種報道を参照してピクテ投信投資顧問作成

どこに注目すべきか:新興国、量的金融緩和、引受、インフレ率

新興国の中央銀行はリーマンショックとも言われる世界金融危機などの局面で非伝統的金融政策による流動性対策を導入したことはありますが、現地通貨建債券による量的金融緩和がここまで拡がったことは過去に例を見ない状況です。これまでのところ、結果の評価は国により異なりますが、おおむね成果が見られます。ただ、今後も続けるべきか議論が分かれると思われます。

 

新興国の中央銀行による量的金融緩和、もしくは債券購入政策の多くが3月から4月ごろ導入、もしくは再開されています。図表1は最近国際決済銀行(BIS)から発行されたレポートを参照していますが、全てのケースではなく、あくまで主な例を示しています。他の新興国中央銀行で債券購入を表明しているところとしてはインド、韓国、ポーランドなどがあります。また、ブラジルは5月に憲法改正を行い中銀が債券購入政策を可能とする対応を行っています。

 

ひとつの例として、インドネシアを取り上げます。インドネシアは債券を流通市場だけでなく、発行市場から購入することも4月末から行っています。中央銀行が直接引き受ける格好で、今までの常識では「禁じ手」でした。4月月初の「通常」の国債購入政策から引き受けまで、通貨市場の動向を見ると、ルピアはおおむね上昇傾向です。ルピア上昇の大きな原因は米国が大胆な金融政策などを実施したことや、新型コロナウイルスの感染ペースが落ち着いてきたことが主な理由ですが、債券購入は通貨上昇を妨げなかったとも見られます。

 

国によりばらつきはあるものの、新興国の量的金融緩和が受け入れられた背景は、新型コロナウイルスにより新興国に引き起こされた資本流出と大幅な通貨安に直面する中、慎重に利下げを進める一方で量的金融緩和は現地通貨建債券利回りを全般に低下させたものの、通貨安の抑制によりインフレ期待も高まらないというラッキーな面が見られました。また、一部の国では期間を定め財政悪化への配慮を見せました。しかしながら、当初の予定より量的金融緩和政策が市場の想定を超え長期化し財政拡大が懸念となった場合にはしっぺ返しを受ける公算も高く、注視が必要と思われます。

 

日次、期間:2019年6月3日~2020年6月3日 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表2]インドネシアルピア(対ドル)の推移 日次、期間:2019年6月3日~2020年6月3日
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『新興国の量的金融緩和』を参照)。

 

(2020年6月4日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

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