「バブル的な値動き」は損失が拡大する危険も大きい
今回は、純粋な損切りの実例を紹介します。「純粋な」と付けたのは、銘柄を乗り換えるための資金が必要で売却したわけではなく、購入後に「やはりこの銘柄ではダメだ」と判断した例だからです。
取り上げるのはクルーズ(2138)です。クルーズは、スマートフォン向けのゲームなどを企画・開発・配信する企業で、ネット通販なども展開しています。市場はジャスダック。売上高は約208億円(2015年3月期)で小型株に分類される銘柄です。
スマホ向けゲームの銘柄は、ガンホーからコロプラと次々に上昇してきましたが、2014年1月下旬からはクルーズが新たな牽引役として注目されるようになりました。当時、同社は世界配信をスタートしたスマホ向けレーシングバトルゲーム「ACRDRIFT」への期待が高まっていたことと、第三者割当による新株予約権の発行を発表したことで株価が急騰。出来高や売買高が大きく増加していました。
こうした理由に加えて、2014年は4月に消費増税を控えていたことから主力株が買われる相場ではなく、3〜5月にかけては再度ゲーム関連のほうが値幅が取れると予想しました。最初から、長期ではなく3カ月程度の中期投資で考えていました。買い推奨日は2014年2月24日、買い推奨株価は6000円です。
ただ、大きな値幅が取れると考える一方で、当初から「ダメな場合は早めに見切るべき銘柄」という考えも持っていました。
※「30万円コース」ではなく資金100万円から始めるコースでの実例です。
<売り推奨をした日>
2014年2月28日
<売り推奨株価>
5800円(2月28日の高値6080円、安値5700円)
<売り推奨をした理由>
●バブル的な値動き 購入後の値動きが非常に激しく、1日に10〜15%も株価が乱高下。デイトレ資金も大量に流入。さらに、4月27日には信用取引残高の公表を毎日行う「日々公表銘柄」に指定され、下落懸念も強まったため。
☆藤村コメント・・・上昇期待は引き続きあったのですが、短期資金が多く流入してバブル的な値動きになっていることから損失が拡大する懸念も大きく、早めの売却という判断になりました。1日の値幅が1000円を超える状況では、落ち着いて投資できる相場ではなかったというのも理由です。
<その後の展開>
売却後、3月の前半にかけて株価は上昇し、一時は7300円の高値を付けました。しかし、その後は大きく下落し、2014年12月には株価は2000円を割り込みました。2015年に入ると再び材料が出て株価は上昇する局面もありましたが、2015年の年初来高値は5790円。買値まで戻ってはいません。
[図表]クルーズの株価
<売買のまとめ>
●買い推奨日・株価 2014年2月24日6000円
●売り推奨日・株価 2014年2月28日5800円
●損益率 ▲3.33%
●損失(100株) ▲2万円
※売買のタイミングは弊社で扱っているコースの一例です。
失敗したら保有期間にとらわれず早めに損切りを
<まとめ>
株価の勢いのある銘柄をたった4日で損切りするというのは、どちらかと言えばイレギュラーです。しかし、後から振り返ると、早めに損切りしたことは正解でした。もし、勢いがあるからとそのまま4月まで持ち続けていたら、損失は20万〜30万円以上に膨らんでいました。
そうなると、次に買いたい銘柄を買うための資金も減ってしまいます。早めに損切りしたことで、損失額を抑えるとともに、次の銘柄を買う資金を十分に確保することができました。
さらに、クルーズを保有し続けることで資金が滞ってしまうというのもデメリット。その後に買えるはずだった有望な銘柄を買うチャンスを逃すため、ダブルで損失を被ってしまうのです。
失敗したと思ったときには、保有期間にとらわれず早めに見切ることが重要なのです。