株価の「ジグザグ」が損切りのタイミングを狂わせる
株式投資で、資産を減らさないために最も重要なことのひとつが「損切り」です。簡単に言うと、含み損の状態が続くようなダメな銘柄をいつまでも持ち続けないということです。
しかし、損切りを実行するのはそう簡単ではありません。個人投資家の6〜7割は、損切りできずに含み損を抱えているのではないでしょうか。
ではなぜ、損切りができないのでしょうか。限りある資金を有効活用するためには、次々によい銘柄に乗り換えていく必要があると説明しました。冷静に考えれば、上昇力が鈍っているどころか、マイナスに陥っているような銘柄を持ち続ける理由はありません。できるだけ早めに切って、次の銘柄に乗り換えるのは当然のことです。
実は、誰でも頭では理解できているのだと思います。とは言え、損失を確定することは精神的なダメージが大きいため、なかなか踏み切れずにいるのです。
また、株価は必ずしも一直線に上がったり下がったりするわけではなく、ジグザグと上げ下げを繰り返しながら上昇あるいは下落していくことが少なくありません。そのため、「今の下落は一時的なもので、また上がるのではないか」「せめて、買値に戻ってから売却しよう」と考えたくなるのも、損切りに踏み切れない理由かもしれません。
その結果、ズルズルと下げ続けて含み損が増え、株価を見るのも嫌になって放置したまま塩漬けになるという事態に陥ってしまいます。
一律ルールに従った「損切り」はベストではない!?
そこでよく言われるのが、「損切りライン」を設けて、そのラインを下回ったらとにかく損切りするという方法です。
「買値を〇%下回ったら売る」というルールを決めておけば、迷うことなく売却(損切り)できるというわけです。投資のマニュアル本などでもこうした方法を勧めている本が多いようです。
早めの損切りは非常に大切ですから、初心者であれば自分なりのルールで損切りするのは悪いことではありません。
ただ、本当のことを言うと「〇パーセントの下落で損切り」というルールを一律に決めてしまうのは必ずしもベストではありません。
前述のとおり、株価は上昇するときでもジグザグ上下を繰り返すことがよくあります。ジグザグの下落した瞬間に、たまたま全体相場が悪い日が重なったりすると、大きく下落するケースがあります。その結果、「買値から○パーセント下がった」と売ってしまうと、本当に一時的な下落という場合もあるからです。
いちばん大切なのは、その銘柄を買おうと決めたときのシナリオが崩れていないか、そのシナリオが実現するための事業環境や相場の状況が変わっていないかということです。
その部分が崩れていたら、2〜3%の下落であっても損切りしたほうがよいし、買ったときの前提が崩れていなければ本当に損切りしたほうがよいかもう一度検討したほうがよいでしょう。
本連載の投資法の基本スタンスでもありますが、「総合的に判断する」ことを常に心がけることが、最終的に資産を大きく増やしていくことにつながると考えています。