心の底から愛していた「スーパー」で唖然の行動
【事例2】
中堅スーパーで店長をしていた栄一郎(66歳)は、激務ながらも定年まで仕事にやりがいを感じていた。定年してからもアルバイトとして地元のスーパーで働き、クレーム対応もうまかったので、店長や店員からも信頼されていた。とくに趣味がなかった栄一郎は、生涯スーパーの店員として働きたいと思っていた。
だが、膝を悪くした栄一郎は働けなくなってしまった。仕事をする意欲はまだあったが、スーパー以外の仕事に魅力は感じなかった。それでも杖をつきながら近所のスーパーに行き、店内を眺めているだけでも、いくらか楽しむことができた。
ところが、日々の寂しさが次第に増していたためか、かつて働いていたスーパーで万引きをしてしまった。店長が警察沙汰にはしなかったが、なぜ万引きをしてしまったのか、その理由が栄一郎にもわからなかった。
「50代・大企業勤めのお金持ち」が万引きをしたのは…
栄一郎さんのように魔がさして万引きをしてしまう人は、めずらしくはありません。『犯罪白書』(平成30年度版)を見ても、平成29年に万引きで検挙された65歳以上は2万6106人。そのうち初犯が約43%も占めています。この数字を見ても、栄一郎さんのように万引きしてしまう人が、いかに多いのかがわかるでしょう。
それだけ貧しい高齢者が増えたと思う人もいるでしょうが、悠々自適の生活を送っている人でも、万引きをしてしまう人は少なくありません。
65歳以上ではありませんが、私の知っている人にも、大企業に勤める50代半ばの部長で万引きをしてしまった人がいます。幸いなことに会社に知らされることはなかったのですが、本人は「万引きした理由がまったくわからない」と言っていました。
この知人はお金持ちなので、貧しさから万引きをしたわけではないのは明らかです。まさに「あの人が?」という人が起こした万引きといえます。