「夫といると具合が悪くて」妻が激白。更年期障害と思いきや…

定年を迎えれば、夫婦水入らずの時間が増えます。長年寄り添った相手だから心穏やかに過ごせるかと思いきや、実際には「心が休まるのは配偶者がいないといだけ」という妻や夫が珍しくありません。なかには、配偶者が近くにいるだけで具合が悪くなるというほど深刻な状態にある人も…。※本連載は、脳科学・心の問題の専門家である高田明和氏の著書『定年を病にしない』(ウェッジ)より一部を抜粋し、定年をきっかけとする深刻な問題を抱えた人々の事例をもとに、第二の人生を明るく歩むための「定年後の自分を育てる」ヒントを紹介します。

モラハラ夫になじられ、家政婦のようにこき使われる妻

【事例1】

信用金庫の融資部長を務めていた武志(60歳)は、妻に対して常に上から目線だった。まじめで几帳面ということもあって、「おまえはだらしがない」「育ちが悪い」といったモラハラ発言も多かった。気の弱い妻が反論することはなかったが、それでも定年するまでは武志の帰りが遅かったため、なんとかなっていた。

 

ところが定年後、武志が朝からずっとリビングにいたので、妻の気持ちは休まらなかった。昼ごはんもきちんとしたものをつくるよう命令し、味だけでなく食材にお金がかかっても怒られたため、これまでひとりで昼食をすませていた妻のストレスは大きかった。武志が定年退職してから妻の体調は悪く、ずっと更年期障害が続いていた。それでも、武志が長時間外出しているときだけは、いくらか体調がよかった。

 

昼食の準備が最大のストレス
一切手伝わずに、ただ命令と文句ばかり…昼食の準備が最大のストレス

頭痛、腹痛、動悸、ほてり…体調不良の原因は「夫」

夫源病とは、夫の何気ない言動に対する不満や、夫の存在そのものが強いストレスとなって溜まり、妻の心身にさまざまな症状を引き起こす病気のことです。医学的な病名ではなく、よく似た症状に主人在宅ストレス症候群があります。大阪樟蔭女子大学の石蔵文信教授が、男性更年期外来で中高年の夫婦の患者を診察するなかで気づき、命名しました。

 

40~60代に起こりやすい不定愁訴である更年期障害にも似ているため、更年期障害と診断されてきた中年女性の多くが、本当は夫が原因ではないかとの見方もあります。そのため夫源病は夫を持つ女性なら、だれもがかかる可能性があるといえます。

 

とくに夫が家事をしない、子育てに文句をいう、モラハラ的な発言が多いなどの問題がある妻は注意が必要といわれています。主な症状として考えられているのは、次のとおりです。

 

自律神経やホルモンのバランスを崩すことによる、めまい、動悸、頭痛、不眠、本態性高血圧症(原因が特定できない高血圧)、突発性頭痛、突発性難聴、メニエール病(めまい、耳鳴り、難聴を伴う原因不明の病気)の疑い、うつ病

 

これらの病気と診断され、通常の治療を続けてもなかなか症状が改善されない場合は、夫源病の疑いがあるとされています。具体的には、次のようなケースが報告されています。

 

●夫がいないときは症状が出ず、夫の帰宅時間になると、腹痛や頭痛、動悸などが起こる

●夫が家にいる週末は頭痛で、平日は夕方になるとイライラする

●夫の身勝手な発言を聞くと、顔がのぼせたりほてったりする

 

これらの症状がいくつか当てはまることから、武志さんの奥さんは夫源病の可能性が高いといってもいいでしょう。

「夫源病」にしてしまう夫、「夫源病」になりやすい妻

夫源病の症状を知って、もしかしたら自分の妻も夫源病かもしれないと不安になった人は結構いるのではないでしょうか。夫源病の名づけ親の石蔵教授は『妻の病気の9割は夫がつくる』(マキノ出版)という本を出していますが、私も妻の健康には夫が大きく関係していると思っています。そのため『夫の存在が妻の寿命を縮めている』(きこ書房)という本を出しました。

 

すでに説明したとおり、老後に夫と暮らす妻の死亡リスクは約2倍になります。もちろん、すべての夫が当てはまるわけではありませんが、定年後に深刻な状態になることもあります。妻を夫源病にしてしまう夫の特徴というのは、たとえば次のとおりです。

 

●外面がいい

●上から目線

●家事は手伝わないが口は出す

●家族を養ってきた自負が強い

●感謝、謝罪の言葉を滅多に言わない

●妻の予定や行動をよくチェックする

●仕事関係者以外の交友や趣味が少ない

 

いくつか思い当たる夫も少なくないと思いますが、夫だけの責任ではありません。夫源病になりやすい妻の特徴というのもあります。これは性格が大きく関係しているといっていいでしょう。たとえば、次のとおりです。

 

●我慢強く、弱音を吐くことが少ない

●几帳面で責任感が強い・外面や世間体を気にする

●理不尽なことにも反論できない

●ちょっとしたことにも気に病む性格

夫婦円満の第一歩は「妻の話に耳を傾けること」

妻が夫の言動を変え、夫源病を克服するには、夫婦げんかを恐れずに自分の要求を上手に伝えることが大切です。夫に対するイライラを我慢してため込んでいると、夫源病が悪化してしまいます。定年後は夫と過ごす時間が増える妻がほとんどなので問題は深刻です。夫も妻を夫源病にしないためには、これまで以上に妻の話には耳を傾けるなどの努力が必要です。

 

武志さんの場合、昼食も低予算できちんとしたものをつくるよう奥さんに命令していますが、これではつくるだけでなく献立を考えるだけでも大変です。そうでなくとも、定年後に夫と昼食をとるのが苦痛という妻はめずらしくはないくらいです。

 

もしかしたら、武志さんは奥さんとの時間を楽しみたかったのかもしれません。これからは一緒に昼食をとることができるのをよろこんでいたのかもしれません。しかし、奥さんからすれば、武志さんが定年するまで昼食は簡単にすませていたかもしれません。それでも几帳面な性格の武志さんが夫ですから、家事は大変だったでしょう。常に上から目線、モラハラ的発言をする武志さんが朝からずっとリビングにいたのでは、奥さんの気持ちが休まることはないでしょう。

 

この問題は、武志さんが奥さんを夫源病にしたことに気づき、改めるのがもっとも重要です。武志さんほどでなくとも、妻を夫源病にしてしまう夫は少なくないということを覚えておきましょう。

 

<50代から「定年後の自分」を育てるヒント>

●夫の定年を機に夫源病にかかる妻は多い。「夫の存在が妻の寿命を縮めている」ことをよく理解し、50代のうちから妻を夫源病にさせない配慮が大事。

●定年後は、夫婦で一緒に過ごす時間が増える。これまで以上に妻の話に耳を傾けることが夫源病を遠ざけ、夫婦円満の第一歩につながる。

●妻との時間を大切にすることも大事だが、妻の行動を監視するような言動はとらない。妻の時間を邪魔しないことも大切。

「このジジイ、臭いったら!」妻の悪態に苛まれる夫

【事例2】

一朗(63歳)よりひと回り年下の妻は、夫のことを“汚い老人”扱いしていた。役職定年した58歳からこのような扱いが始まり、なにかにつけて文句を言い、定年してからは一緒にいる時間が増えたため、この傾向はひどくなった。トイレの蓋を閉めなかったり、家事の手伝いをしても食器を定位置に戻さなかったりしただけでもうるさく言われた。さらに妻は一朗の加齢臭を嫌って、一緒に食事をとらなくなった。そのため、妻が近くにいるだけで一朗はストレスを感じるようになり、心休まるのは朝の散歩だけになってしまった。

 

最近、一朗はめまいや頭痛、不眠に悩まされるようになり、通常の治療をしてもなかなか改善しなかった。消えてしまいたいと思うこともあった。そのため医者から心療内科を受診するよう勧められた。

夫婦だからこそ「ひとりの時間」を作り、距離感を維持

【事例1】の夫源病と同じような症状に夫のほうが悩まされるのが妻源病で、こちらも年々増えています。奥さんはひと回りも年下とはいうものの、一朗さんを老人扱いするのはやめるべきです。妻源病になる夫で、何気ないひと言が応える人は多いからです。ただ、朝の散歩以外に心が休まる時間がないという一朗さんにも問題があります。安らぐ外出の時間を増やさなければ、奥さんもストレスがたまってしまいます。

 

ほとんどの夫婦が定年を機に1日の大半を一緒にいるようになると、いままで気づかなかったいろんなことが目についてしまうのは不思議ではありません。これでは夫婦の力関係によって、どちらかが夫源病か妻源病になってもおかしくはないでしょう。

 

奥さんは一朗さんの加齢臭を嫌がっていますが、私の周りにも夫の加齢臭を嫌がる妻は結構います。臭いと言えないから、遠ざけるために夫を批判する妻は少なくありません。ただ、この問題は加齢臭に効くボディソープやシャンプーを使ったり、毎日、枕カバーを洗濯するなどすれば、改善が期待できます。夫婦なのですから嫌がるのではなく、まずはどうしたらいいだろうかと考える思いやりがほしいところです。

 

夫のいびきや歯ぎしりがひどい場合は、妻が寝不足などによって健康を害するかもしれませんので寝室を別にするのもいいのですが、これらの問題も睡眠外来で改善すればいいでしょう。ただ、一緒にいて妻源病がひどくなるのであれば、定年前のように妻といる時間を減らしたほうがいいでしょう。時間の長短で夫婦の愛情が決まるわけではありません。夫婦でともにする時間の質を上げるようにすればいいのです。少なくとも相手のイヤなところを目にする機会は減らせます。

 

夫も妻に感謝や謝罪のときは「ありがとう」「ごめん」と言葉に出すべきです。妻の手料理がおいしいときは、「おいしい」と言葉で伝えるようにするのです。これらの言葉がないことが夫源病のひとつの理由になっていますので、夫婦のコミュニケーションとして重要であることを覚えておいてください。

「妻源病」「夫源病」の放置は病気リスクに直結

一朗さんのように妻源病で体調を崩している人は、地域のボランティアやシルバー人材センターに登録するのもいいでしょう。これならお互いにひとりの時間を増やしたり、心地よい距離感を保ったりするきっかけにつながります。また、ストレスを発散する手段をいくつかもつ必要もあります。

 

妻源病は月日とともにじわじわと悪化していきます。薬を飲んだとしても、状況がよくなることはありません。一朗さんの場合、平均寿命で考えても、あと20年くらい残されているのです。年を取るほど病気のリスクは増しますので、この点だけを考えても、夫婦仲がよくなければ、不安がつきまとうことになるでしょう。

 

私は妻を亡くしていますので、妻源病や夫源病で悩むのはもったいないと思ってしまいます。夫婦でいる限り、お互いに楽しい時間を過ごしたほうがいいのはいうまでもありません。長年ともに暮らしてきたわけですから、お別れの日が来るまでの時間を大切にしてほしいと願わずにはいられません。

 

<50代から「定年後の自分」を育てるヒント>

●妻の何気ないひと言が応えるのなら、改善してもらうよう落ち着いて話し合うべき。

●夫婦の愛情は過ごした時間の長さより質。妻源病を避けるためにも、夫婦といえどもひとりでいる時間を大切にし、ほどよい距離感を保つようにする。

 

 

高田 明和
浜松医科大学 名誉教授


 

浜松医科大学 名誉教授

1935年静岡県生まれ。慶應義塾大学医学部卒業、同大学院修了。医学博士。米国ロズエル・パーク記念研究所、ニューヨーク州立大学助教授、浜松医科大学教授を歴任後、現在同大学名誉教授。

専門は血液学、生理学、大脳生理学。日本生理学会、日本血液学会、日本臨床血液学会評議員。

脳科学、心の病、栄養学、禅などに関するベストセラーを含む著書多数。最近はマスコミ・講演で心と体の健康に関する幅広い啓蒙活動を行っている。

自身もうつやHSP(超敏感気質)に長年苦しみ、HSPを扱い紹介した『敏感すぎて困っている自分の対処法』(監修、きこ書房)は日本での火付け役となり、話題を呼んだ。

最近の著書に『「敏感すぎて苦しい」がたちまち解決する本』『HSPとうつ 自己肯定感を取り戻す方法』『HSPと発達障害 空気が読めない人 空気を読みすぎる人』(いずれも廣済堂出版)がある。

著者紹介

連載孤独、引きこもり、うつ…定年後、男性を襲う様々な「危機」から人生を守るヒント

定年を病にしない

定年を病にしない

高田 明和

ウェッジ

すべては50代でのマインドセット次第! 定年後の男性を待ち受ける悩みは様々です。「意欲がわかない」「出不精になる」「自分を責める」「暴言を吐く」「焦燥感にかられる」「居場所がなく孤独を感じる」「人付き合いがうま…

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