香港特有のライセンスによって3つに分類される銀行
同じ銀行でも政府から発行される「ライセンス」によって業務内容が異なります。たとえば、銀行の場合は香港特有の分類があり、次の3つに分類されることになります。
●Deposit-taking Companies(貯蓄金融機関)
預入金額が10万香港ドル(約157万円、2015年11月現在)相当額で、預入期間3カ月以上の定期性預金を取り扱うことができる金融機関。現在、香港では20程度の貯蓄金融機関があり、比較的長期の預金ニーズに応えています。
●Restricted Licence Banks(限定免許銀行)
預入期間の制限はないものの、最低預入金額が50万香港ドル相当額となっています。総額で50万香港ドル(約788万円、同)以上あれば、通貨は自由に選択可能です。この限定免許銀行を使って、ゴールドマン・サックス、モルガンスタンレー、シティバンクなどが子会社を通じて、プライベートバンキングやウェルスマネジメントの業務を展開しています。
●Licensed Banks(普通銀行)
金額や期間に制限がなく、当座預金や普通預金といった流動性預金も扱うことができるため、小切手が必要な人は普通銀行を利用します。また、普通預金には「預金保険」の適用があります。現在、香港で普通銀行のライセンスを持って営業している金融機関には、HSBC、シティバンク、スタンダードチャータード銀行、バンク・オブ・イースト・エージア(東亜銀行)、恒生(ハンセン)銀行(HSBCグループ)、中国銀行、DBS銀行、中国商工銀行(ICBC)などがあります。
ちなみに、上記3つのタイプの銀行は、いずれも「香港証券先物取引委員会(SFC)」
に登録することで、証券業務を行うこともできます。香港の銀行は、金融機関の営業方針
や対象顧客の層などによって、ライセンスの種類や取扱商品などが決まってきます。こう
したライセンスの違いも理解しておくといいでしょう。
最低預入金額を下回ると「口座維持手数料」が必要に
一方、金融機関のシステムも日本とは大きく異なります。簡単に紹介しておくと、次のような違いがあります。
●最低預入金額
香港に限らず海外の銀行口座には、預け入れるときに金額の下限が決まっており、たとえば最低預入金額1000万円以上の場合、その資金がなければ口座を開設できません。預けた後も、残高が最低預入金額を下回ると「口座維持手数料」などが必要になります。
●口座維持手数料
最低預入金額を下回ると、月額数ドルから数十ドル程度の維持管理費用がかかる銀行が少なくありません。なかには、最低預入金額にかかわらず口座維持手数料がかかる金融機関もあるので、確認が必要です。
●共有名義口座
日本にはない口座の一つです。夫婦あるいは共同経営者など、複数の名義で1つの口座を持つことができます。
また、海外の金融機関には、口座の利用目的に応じていくつかの口座の種類が用意されています。有名なHSBCの口座の場合、「プレミア」「アドバンス」「パーソナルインテグレーテッド」に分かれ、それぞれ最低預入金額や口座維持手数料が異なります。口座開設後のサービス内容なども変わってくるため、自分の目的に合った口座を選択しなければなりません。ちなみに、HSBCの窓口で非居住者が開設できる口座はプレミアかアドバンスに限定されます。
さらに、それぞれの口座でリスクの少ない決済中心の機能を優先した「Banking Account(銀行口座)」とリスク商品にも投資ができる「Investment Account(投資口 座)」に分かれます。それぞれ投資できる金融商品の例は、次の通りです。
●Banking Account
普通預金、当座預金、外貨預金、定期預金など決済が中心
●Investment Account
株式、債券への直接投資、投資信託、その他のリスク商品