日本にはない海外金融機関の「独特のルール」を理解
ここまで、資産運用に適した国という観点から、いかに日本の金融市場が不自由であるか、そして香港がどれほど優れているのかを確認してきました。本気で資産を守りたい日本人投資家にとって、香港はベストな選択のひとつであり、香港の金融機関に口座を持てば、日本とは比較にならないほどの有利な商品やサービスに触れることができます。
以降は、金融機関はどこを選べばいいのかという話になりますが、具体的な説明に入る前に、基礎として海外銀行の常識を理解しておきましょう。海外の金融機関には日本にはない独特のルールが数多くあります。
まずは、銀行の種類です。日本の銀行の場合、「都市銀行(メガバンク)」「地方銀行」「信託銀行」「信用金庫」「郵便局」といった分類になっていますが、海外は異なります。
香港では一般的な「ユニバーサルバンク」に注目
海外銀行の代表的なパターンは次の3つです。
●商業銀行(Merchant Bank, Commercial Bank)
最も一般的で、間接金融の中核を担い、預金集めと企業への融資を主要業務とする銀行です。個人投資家から幅広く資金を預金として集め、企業などに融資して、利息の差=利鞘を稼ぎます。日本の銀行の大半が同様のスタイルですが、海外では日本の銀行ほど厳しい制限はなく、国や地域によっては証券業務や自己勘定部門での運用も扱っているために「リーマンショック」時には大きなダメージを受けた商業銀行も少なくありません。もともとHSBCやシティバンクは商業銀行に該当しますが、現在では証券業務を兼ね備えたユニバーサルバンクになっています。
●投資銀行(Investment Bank)
日本でいう証券会社。国や公共機関そして企業などを対象に、債券や株式などの発行業務を引き受けて、別の投資家に販売するフィービジネス、コンサルティングなどが一般的な業務内容です。投資銀行の過激な投資活動がバブルを引き起こしたとして、リーマンショック以降、その過激なビジネスが問題視されて米国の大手投資銀行5行はすべて商業銀行に転向しました。ゴールドマン・サックス、モルガンスタンレー、メリルリンチなどは投資銀行に該当します。
●ユニバーサルバンク(Universal Bank)
商業銀行と証券会社、双方の機能を備えている銀行のことです。欧州では一般的な銀行であり、自己勘定での投資比率も高いという特徴があります。米国でも、グラス・スティーガル法(※1)によって商業銀行と投資銀行の区別が曖昧となり、リーマンショックで再びグラム・リーチ・ブライリー法(※2)によって見直され、表面的には廃止されました。香港のHSBC、シティバンクなどはこのカテゴリーに属します。
この中で注目したいのは、ユニバーサルバンクです。欧州や香港、シンガポールといったグローバルスタンダードな金融市場では、ごく一般的な銀行の形態といっていいでしょう。投資銀行などは個人向けのリテール業務は行わないため、富裕層を対象とするような海外口座の大半はユニバーサルバンクと考えて間違いありません。
香港の場合は、様々な種類の金融機関がビジネスを展開しており、たとえば投資資産の管理・運用を行う場合は、クレジットカードの決済など流動性預金の口座を作れる「普通銀行」、そして株式や投資信託などで運用できる「証券会社および投資顧問(IFA)」といった金融機関を利用することになります。
※1グラス・スティーガル法
1933年に制定された連邦法。預金銀行業務と証券業務の兼営、連邦準備制度加盟銀行が証券会社系列に置くこと、兼務する役員を置くことなどを禁止していた。
※2グラム・リーチ・ブライリー法
1999年に制定された連邦法。グラス・スティーガル法の一部を無効にするための法律。これによって、商業銀行、投資銀行、証券会社、保険会社それぞれの間での統合が許可された。