大口の海外送金では送金目的などの明示が必要
金融機関によって定められた限度額を超える金額を送金したい場合は、いくつかの手続きと書類が必要になります。
大半の銀行は1カ月当たり200万~500万円以下という具合に限度額を設定していますが、500万円超の送金の場合、金融機関経由で日本銀行への報告が必要です。同時に金融機関の窓口で送金目的など問われ、パスポートなどの本人確認書類も提出しなければなりません。
たとえば新生銀行の「Goレミット」は、1回当たりの送金限度額が30万円となっています。それを超えると「送金限度額変更届」を提出して、新たに送金限度額を設定することになります。設定する限度額は次の3種類です。
● 1回当たりの送金金額
● 月間送金金額の合計
● 年間送金金額の合計
この際、月間の送金金額が年間の送金金額の12分の1である必要はありません。さらに、年間の送金金額が1,000万円を超える場合は、届出内容の「妥当性」の確認という意味で次のような種類の書類の提出が求められます。
《カテゴリー1 年収、保有資産の確認書類》
● 収入を証明できる書類の写し(給与明細、確定申告書、直近3カ月の入出金記録など)
● 保有金融資産を証明できる書類の写し(バンクステートメントなど)
《カテゴリー2 送金目的の確認書類》
● 投資商品の購入の内容が分かる書類の写しなど
要するに、保有資産と送金目的が確認できる書類が必要になるということです。詳細は、海外送金に使う金融機関に問い合わせてください。新生銀行の場合は、3,000万円以下であれば比較的スムーズに海外送金ができますが、銀行によって手続きは異なるので確認が必要です。
お金が行方不明になるトラブルの可能性もゼロではない
日本で振り込みをする場合は、手続きをした後は特に心配することもなく、受け取り側の口座に入金されているのが当たり前です。しかし海外に送金する場合は、手続きから1週間たっても着金の確認が取れないということも少なくありません。たとえ送金元である国内の金融機関に問い合わせても、中継銀行への送金は完了しているといわれるばかりで、お金の行き先を追跡することはできません。調査を依頼すると別途手数料がかかることもあります。とはいえ、自分で中継銀行や受け取り側の海外金融機関に問い合わせるのは簡単ではありません。一度お金が行方不明になってしまうと、極めてやっかいなのです。
海外送金のトラブルで多いのは、口座番号が間違っていたとか、米ドルで送金したら相手の口座が香港ドルオンリーでお金が宙に浮いてしまった、といったトラブルです。事前にきちんと確認することで、トラブルの大半は避けられるはずです。
とはいえ、こちら側のミスだけではなく銀行側のミスで送金したお金が消えてしまうような事態も考えられます。こうしたトラブルは、大半が以下のようなトラブルのようです。その対応法も併せて紹介しましょう。
《送金指定の間違いで、お金がどこかのプロセスで止まってしまった》
対応策は、送金元の銀行に依頼して自分の資金をいったん自分の口座なり、送金元の銀行に戻したうえで、再度送金手続きを行う方法です。この場合、前述した「送金組戻手数料」や「送金内容変更手数料」といった手数料がかかります。
《送金先の銀行には届いているものの自分の口座に入金されていない》
金融機関の情報までは正しかったものの、その先の情報が間違っているために、送金先の銀行の段階で止まってしまっているケースです。その場合は、相手側の金融機関に電話やFAXで、送金の事実を伝えて、自分の口座に入金するように連絡します。
日本ウエルス銀行(NWB)のように日本語で対応してくれる金融機関の場合は、電話でもいいかもしれませんが、通常はFAXで依頼したほうが確実でしょう。場合によっては、振り込みの際の領収書などを一緒に送るといいかもしれません。
口座維持手数料などの発生にも注意
無事に送金が完了した後も、海外口座を維持するためのランニングコストに注意が必要です。国内金融機関であれば、一度口座を開いてしまえば放置していても手数料等はかかりませんが、海外金融機関では最低預入金額を割り込んだ場合に月々の「口座維持手数料」が発生します。
たとえばHSBCのプレミア口座は、最低預入金額が100万香港ドル(約1,480万円、2016年2月現在)、口座維持手数料が月額380香港ドル(約6,000円)、アドバンス口座では最低預入金額20万香港ドル(約317万円)、口座維持手数料が月額120香港ドル(約1,900円)となっています。
NWBの場合は最低預入金額が10万米ドル(約1,100万円)、口座維持手数料が月額300香港ドル(約4,700円)です。
金融商品への投資を進めていく中で、現金預金が最低預入金額を下回ることもあるので、日本の金融機関と同じような感覚で放置してしまうことがないようにしましょう。万が一、しばらく何の手続きもなく口座が凍結されてしまうようなことがあると、口座維持手数料ばかりがどんどん取られてしまうので要注意です。