新型コロナワクチン開発謎に包まれた「ワープ・スピード作戦」

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米トランプ政権は今月15日、新型コロナウイルスのワクチン開発・生産・供給を加速させる「ワープ・スピード作戦」の概要を明らかにした。トランプ大統領は、第二次世界大戦中に原爆を開発した「マンハッタン計画」を引き合いに企業や政府機関を総動員する考えを示したが、その作戦の実態はベールに覆われている。

「ワープ・スピード作戦」は米国防総省も絡む官民連携プロジェクト

「ワープ・スピード作戦」は新型コロナウイルスのワクチン開発・生産・供給を加速させることを目標としたPublic Private Partnership(PPP、官民連携)だ。HHS(米保健福祉省)や傘下のCDC(米疾病対策センター)、FDA(米食品医薬品局)、NIH(米国立衛生研究所)、BARDA(米生物医学先端研究開発局)に加え、米国防総省や米農務省、米エネルギー省、米退役軍人省、そして民間企業を巻き込んだ横断的なプロジェクトになっている。さらに、米国防総省からはDARPA(米国防高等研究計画局)の研究開発機関も関与するとされている。

 

この「ワープ・スピード作戦」では、4大ワクチン・メーカーの一角である英医薬品大手グラクソ・スミスクラインのワクチン部門トップだったモンセフ・スラウイ博士が首席顧問として就任、さらにギュスターブ・ぺルナ陸軍大将がCOO(最高執行責任者)として任命されている。財源については、「コロナウイルス支援・救済・経済安全保障法(CARES法)」における補正予算で、約100億ドル(約1兆700億円)が確保されている。2021年1月までに安全で有効なワクチンを確保することを目標としており、今年11月までに1億回分、12月までに2億回分、来年1月までには3億回分のワクチン供給を目指すと報道されている。

 

すでに、100以上のワクチン候補から14種類まで絞込みが行われており、そこから小規模の臨床試験を行うために8種類まで選別され、大規模な臨床試験段階ではさらに3~5種類まで厳選される予定だ。ちなみに、この「ワープ・スピード」とは、SF作品等で度々使用される「光速を超えたスピード」という意味で、SF好きの関係者が名付けたといわれている。

しかし、その実態は謎に包まれている

BARDAは5月21日、英医薬品大手アストラゼネカと新型コロナウイルスのワクチン開発で提携することを発表、BARDAは12億ドルの支援を行い、アストラゼネカは少なくとも3億回分のワクチン供給を目指す。早ければ今年10月に最初のワクチン供給を行う予定だ。HHSは今回の提携を「ワープ・スピード作戦」のマイルストーンと位置づけている。

 

しかし、この選定プロセスや選定理由については必ずしも明らかにされていない。そもそも、この「ワープ・スピード作戦」の指揮系統がどのようになっているのか、権限はどこまで付与されているのか、予算の割り当てはどうなっているのかなど、不明な点が多いのだ。

 

また、その他のワクチン候補の選定状況も公表されておらず、BARDAが既に提携を発表したアストラゼネカ以外のワクチン候補が、「ワープ・スピード作戦」の選定プロセスに入っているのかさえも定かではない。極秘の国家軍事プロジェクトといわれればそれまでだが、株式市場はこの謎に包まれた組織から良くも悪くも目が離せない状態が続くだろう。

 

2020年5月29日時点 ※ハイライトしたワクチン候補は「ワープ・スピード作戦」に関連  出所:Medical Countermeasures.govよりピクテ投信投資顧問作成
[図表]BARDA(米生物医学先端研究開発局)新型コロナワクチン開発支援状況 2020年5月29日時点
※ハイライトしたワクチン候補は「ワープ・スピード作戦」に関連
出所:Medical Countermeasures.govよりピクテ投信投資顧問作成

 

 

※記載された銘柄はあくまでも参考として紹介したものであり、その銘柄・企業の売買を推奨するものではありません。

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『新型コロナワクチン開発謎に包まれた「ワープ・スピード作戦」』を参照)。

 

(2020年5月29日)

 

田中 純平

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト

 

 

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ピクテ・ジャパン株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系運用会社に入社後、14年間一貫して外国株式の運用・調査に携わる。主に先進国株式を対象としたアクティブ・ファンドの運用を担当し、北米株式部門でリッパー・ファンド・アワードを受賞。アメリカ現地法人駐在時は中南米株式ファンドを担当し、新興国株式にも精通。ピクテ入社後は、ストラテジストとしてセミナーやメディアなどを通じて投資家への情報提供に努める。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

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