中国全人代、毎年恒例の成長目標の公表を見送り

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今回の全人代での注目点は経済政策と香港政策です。成長率目標の公表見送りは市場の予想通りですが、経済政策の中身はやや消極的な印象です。一方、香港については「香港国家安全法」を制定する方針が示されました。香港で昨年デモが激化したことを踏まえて制定を目指す構えですが、香港並びに米国など国際社会からの反発は必至でその動向が注目されます。

中国全人代:経済成長率の目標設定を見送り、開幕期間も短縮

中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)は北京で2020年5月22日に開幕しました。冒頭で李克強首相は政府活動報告で、中国の20年GDP(国内総生産)成長率について数値目標の設定見送りを明らかにしました。李首相は特定の目標を設けない理由として新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)と世界経済・貿易環境に関する巨大な不確実性を挙げています。

 

なお、今年の全人代の閉幕は28日が予定されています。新型コロナウイルス感染拡大の影響で開催が約2ヵ月遅れたうえ、例年(約2週間)より開催期間が短縮されています。

どこに注目すべきか:全人代、成長目標、失業率、香港国家安全法

今回の全人代での注目点は経済政策と香港政策です。成長率目標の公表見送りは市場の予想通りですが、経済政策の中身はやや消極的な印象です。一方、香港については「香港国家安全法」を制定する方針が示されました。香港で昨年デモが激化したことを踏まえて制定を目指す構えですが、香港並びに米国など国際社会からの反発は必至でその動向が注目されます。

 

中国の20年1-3月期GDP成長率は前年同期比でマイナス6.9%でした(図表1参照)。19年通年の成長率+6.1%から大幅に減速しました。もっとも月末に公表予定の5月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は4月に続いて50超えが予想されており、4-6月期成長率の反発は見込まれます。

 

四半期、期間:2005年1-3月期~2020年1-3月期、前年同期比 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表1]中国のGDP成長率の推移 四半期、期間:2005年1-3月期~2020年1-3月期、前年同期比
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

ただ、全人代の経済政策からは「無理して」過去の成長目標の延長線上に(今回見送られた成長率目標を)設定する意欲は低い印象です。財政政策を見ると20年の財政赤字対GDP比率は約3.6%と前年目標の2.8%より拡大させ、また、財政赤字と特別国債で地方政府を支援し、地方政府が企業などを支える方針が示されました。しかし、財政政策の規模は対GDP比で8%台と見られ、10%を予想していた市場の期待を下回りました。一方、金融政策は預金準備率引下げ融資拡大など積極姿勢で政策の主役とみられます。

 

経済政策で強化されそうなのが雇用対策です。李首相の政府活動報告では貧困の解消と共に、雇用の安定を優先するとしています。なお目標の失業率は6%で、昨年の5.5%から上昇(悪化)させています。目標の後退を迫られるほど、中国の民間需要は苦しい状況と当局も認識していると見られます。

 

次に、香港で再びデモ拡大の原因となっている香港国家安全法についてです(図表2参照)。昨年香港では逃亡犯条例を巡りデモが激化しました。逃亡犯条例改正は香港政府が主体でした。今回の香港国家安全法は香港基本法下での制定ながら全人代で審議入りが求められるなど「中国」の主体性が強まっている印象です。昨年のデモを踏まえ、中国が治安上から対応を強めた格好ですが、香港から見れば「悪者」は中国となり、対決姿勢の動向を注視しています。

 

日次、期間:2017年5月25日~2020年5月25日(日本時間正午) 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表2]香港ハンセン指数の推移 日次、期間:2017年5月25日~2020年5月25日(日本時間正午)
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

米国をはじめ国際社会からの反発も強まりそうです。特に米国はコロナ感染拡大などから対中圧力を強めている時期だけに、中国の対応は格好の攻撃材料となりそうです。このような時期に香港国家安全法の導入を急ぐ背景を知るには、より踏み込んだ情報や分析が必要ですが、中国は外から見える姿よりも、追い詰められているのかもしれません。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『中国全人代、毎年恒例の成長目標の公表を見送り』を参照)。

 

(2020年5月25日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
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日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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