母が遺した預金通帳…不審な引き出しを発見
A子さんの葬儀がひと通り終わったあと、娘たちは実家でひと呼吸ついていました。
長女「お母さんのお葬式、良かったわね」
次女「お母さん自身が段取りしていたお葬式だったからね」
三女「そんなことまで用意しておくなんて、お母さんらしいよね」
母との思い出を振り返る三姉妹。そのとき、三女が「テープを聞こう」といいだしました。
次女「テープ!?」
三女「そう。いつだかのお正月、お母さん、万が一のことがあったらと、遺産分割の話をしたじゃない。確かお母さん、テープに録っていたわ」
長女「そうそう、そうだったわね。テープは確か……」
長女が母の残したと思われるテープを探しに母の寝室に向かいました。そして「あった!」と大きな声で次女と三女を呼びました。テープを再生すると、母の声が流れてきました。
三女「なんか、もう懐かしく感じちゃうわね、お母さんの声」
長女「そうね」
三女「そうそう、お仏壇に貯金通帳があるのよね。持ってくるわ」
三女はそういうと、貯金通帳を探しに仏間に向かいました。そして「あった!」と大きな声で長女と三女を呼びました。貯金通帳を開くと、残額は3,000万円ほど。そのとき、三女が「ちょっとおかしくない?」といいました。
長女「何がおかしいの?」
三女「ほら、ここを見て、500万円も引き出してあるの。2ヵ月前よ。このころ、お母さん、入院していたよね」
長女「そうよね。入院中に、そんな大金、必要かしら?」
三女「でしょ。おかしいよね」
次女「でも何に使ったなんて、お母さんしかわからないんだから。とりあえず、これを含めて三人で均等に分けましょ」
どこか引っかかる長女と三女でしたが、考えていても答えはできないので、とりあえず、今後の予定を含めて話し合い、三人は実家をあとにしようとしました。そのときです。近所の顔見知りが声をかけてきました。
知り合い「この度はご愁傷様です」
長女「あっ、おばさん。先日はお葬式に来ていただいて、ありがとうございました」
三女「おばさんときちんとお話するの、何年ぶりかしら」
知り合い「そうね。5年ぶりくらいかしら。C子ちゃん(=次女)とは、この前会って、結構おしゃべりさせてもらったけど」
長女「えっ、そうなの?」
知り合い「そうよね、2ヵ月くらい前だったかしら。お母さんの着替えを取りに来たのよね」
次女「そう、そうでしたね」
しばらく母との思い出話に花を咲かせたあと、長女が次女に迫りました。
長女「ねえ、さっき2ヵ月前にここに来たっていったわよね。何しに来たの?」
次女「それは……」
三女「わざわざ、一番遠くに住んでいるあなたに、お母さん、頼むわけないし。何しに来たのよ」
次女「それは……」
長女・三女「白状しなさい!」
結局、500万円の引き出しは、次女の仕業だということが判明。子どもの大学進学などが重なり、お金が必要だったとのこと。長女と三女から大目玉をくらったそうです。