ブラジル中銀の利下げの背景と今後の方針

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新型コロナウイルスの感染者数が12万6,000人以上(5月7日現在)と、中南米で最も多くなっているブラジルは経済への影響が懸念されます。ブラジル中銀も今回の利下げの背景として、海外並びに国内の景気見通しの悪化を指摘しています。今回の利下げの背景には、ブラジルの直面する問題が浮き彫りとなっています。

ブラジル中央銀行:市場予想を上回る引き下げで、政策金利は過去最低を更新

ブラジル中央銀行は2020年5月6日、政策金利を0.75%ポイント引き下げて過去最低の3.00%としました(図表1参照)。利下げは7会合連続市場で、市場では大半が0.5%ポイントの利下げを予想していました。新型コロナウイルスの感染拡大でインフレ圧力が抑制された中で大幅利下げとなりました。

 

日次、期間:2015年5月7日~2020年5月7日(日本時間正午)  出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表1]ブラジルの政策金利とレアル(対ドル)レートの推移 日次、期間:2015年5月7日~2020年5月7日(日本時間正午)
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

なお、格付け会社フィッチ・レーティングス(フィッチ)は5月5日にブラジルの格付け見通しを従来の「安定的」から「弱含み(ネガティブ)」に引き下げました。長期債格付け(自国通貨建て、外貨建て共に)は、BB-に据え置いています。

どこに注目すべきか:ブラジル中銀、利下げ、感染拡大、財政政策

新型コロナウイルスの感染者数が12万6,000人以上(5月7日現在)と、中南米で最も多くなっているブラジルは経済への影響が懸念されます。ブラジル中銀も今回の利下げの背景として、海外並びに国内の景気見通しの悪化を指摘しています。今回の利下げの背景には、ブラジルが直面する問題が浮き彫りとなっています。

 

まず、市場予想を超える大幅な利下げが可能となったプラス面の要因としてインフレ率の低下傾向があげられます(図表2参照)。ブラジルの代表的な物価指数であるIPCA指数は3月が前年比3.3%でした。ブラジル中銀のインフレ率予想を見ると20年は2.4%と年後半に向け原油価格の下落などを背景に(ブラジルは原油輸出かつ石油製品輸入国)、インフレ率の低下が見込まれます。ブラジル中央銀行は3月の政策決定会合では20年のインフレ率を3.0%と見込んでおり、今回の下方修正が利下げ余地を生んだと見られます。

 

月次、期間:2015年5月~2020年3月、GDPは四半期、前年同期比 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表2]ブラジルのGDP成長率とインフレ率(前年比)の推移 月次、期間:2015年5月~2020年3月、GDPは四半期、前年同期比
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

一方で、利下げを迫られたマイナス面の要因は、新型コロナウイルスの感染拡大による景気悪化見通しです。ブラジルの成長率は15年後半から16年頃のマイナス成長から、17年ごろにようやくプラス圏に回復しましたが、その後も前年比1%前後の低成長となっています。しかし、感染拡大に伴い景気見通しは悪化し、格付け見通しを引き下げたフィッチはブラジルの20年成長率をマイナス4%程度と見込んでおり、数年前の水準に戻る恐れが高まっています。

 

ただ、ブラジル中銀の次の一手は小幅な利下げにとどまる可能性が声明で示唆されています。南米で最も感染が拡大し経済への影響も深刻なことから、今回大幅な利下げを選択し、次回の利下げを示唆するも小幅な利下げにとどめることを示唆した背景は、声明には直接言及していませんが、レアル安、潜在的なインフレ率上昇への懸念が考えられます。

 

また、財政政策の不透明性についても、やや間接的な表現ながら指摘しています。コロナ対策による一時的な財政悪化については、構造(財政)改革の姿勢が残っているならば、インフレ懸念は抑制される可能性もあります。しかし政権と議会などが対立する今のブラジルの政治状況では、将来の構造改革に不安がよぎります。格付け会社フィッチが見通しを引き下げた背景に財政改革への不安が見え隠れしています。ブラジル中銀はこのような状況の中、慎重な利下げスタンスを選択する必要があると判断したのかもしれません。

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『ブラジル中銀の利下げの背景と今後の方針』を参照)。

 

(2020年5月7日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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