ECBの決定に市場の不満も見られますが

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今回のECBの決定を受け、株式市場では資産(債券)購入拡大の見送りに失望売りが見られた一方で、ユーロ圏国債市場ではおおむね利回りが低下しました。債券購入の拡大が株式市場の上昇要因という連想が働きやすいことから失望売りにつながったと思われます。ただ、政策全体を見渡すと工夫のあとも見られます。

ECB政策理事会:債券購入拡大は見送るも、長期性資金供給策で金融緩和を強化

欧州中央銀行(ECB)は2020年4月30日に政策理事会の結果を公表し、主要政策金利などについては市場予想通り据え置きました(図表1参照)。

 

一方で、銀行に長期資金を貸し付ける条件を緩和し、最低ではマイナス1%という超低金利で資金供給が可能となる政策を発表しました。今回の政策はECBがマイナス金利で銀行にお金を貸し出すため、金利負担は中央銀行側にかかることになります。なお、資産購入規模の拡大は見送りましたが、ECBのラガルド総裁は会見で、必要に応じてプログラムを拡大または延長する用意があると述べています。

 

週次、期間:2015年4月20日週~2020年4月22日週 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表1]ECBの主要政策金利推移 週次、期間:2015年4月20日週~2020年4月22日週
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

どこに注目すべきか:ECB、TLTRO3、PELTRO、PEPP、OMT

今回のECBの決定を受け、株式市場では資産(債券)購入拡大の見送りに失望売りが見られた一方で、ユーロ圏国債市場ではおおむね利回りが低下しました。債券購入の拡大が株式市場の上昇要因という連想が働きやすいことから失望売りにつながったと思われます。ただ、政策全体を見渡すと工夫のあとも見られます。

 

今回注目した点は、長期的資金供給の拡充と、債券購入の方針が若干明確となったことです。まず、長期的資金供給の拡充については、ECBが銀行に長期資金を貸し出す「TLTRO3」の条件を緩和することにより、銀行の貸出促進が期待されることから、利下げのような効果が期待されます。具体的には、ECBはTLTRO3の適用金利をマイナス0.5%へと0.25%引き下げたほか、一定の条件を満たす銀行については、適用金利を預金ファシリティ金利マイナス0.5%つまり、現段階ではマイナス1%としています。

 

加えて、ECBはPELTRO(パンデミック緊急長期資金供給オペ)を導入しました。5月以降に7度のオペ(資金供給)の実施が予定されています。特色は、TLTRO3のような条件が無く利用できることです。適用金利は主要政策金利マイナス0.25%です。なお、マイナス金利政策について補足すると、預金ファシリティ金利は銀行がECBに預ける際の金利をマイナスとすることで、貸出を促進することを意図していますが、銀行がコストを負うため評価はされない面もあります。しかし今回の政策ではECBがマイナス金利(金利を払って)で銀行に貸すため資金供給を改善させる効果が期待されます。

 

次に、債券購入は購入額の増額等は見送られました。また、ユーロ圏で著しい信用悪化に見舞われた国の国債を無制限に買う制度であるOMTについて、ラガルド総裁は消極的でした(図表2参照)。反対に、現局面では新型コロナ感染対策で導入されたPEPPを主体とすることを明確にすると共に、場合によってはPEPPの期限(年末)の延長なども示唆しました。OMTは特定の国の支援という意味合いがある中、イタリアとスペイン(さらにはフランス)と多くの国が困難に直面する状況では慎重になる必要があったのかも知れません。または、常々申していることですが、ユーロ圏は財政政策との一体感にもう一歩、改善が必要な中、切り札として残したのかもしれません。

 

※APPは資産購入プログラム、PEPPはパンデミック緊急購入プログラム ※OMTはユーロ圏で信用不安に見舞われた国の国債を無制限に購入 出所:ECB、各種報道等を参考にピクテ投信投資顧問作成
[図表2]ECBの主な債券購入プログラム ※APPは資産購入プログラム、PEPPはパンデミック緊急購入プログラム
※OMTはユーロ圏で信用不安に見舞われた国の国債を無制限に購入
出所:ECB、各種報道等を参考にピクテ投信投資顧問作成

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『ECBの決定に市場の不満も見られますが』を参照)。

 

(2020年5月1日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
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日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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