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今回のECBの決定を受け、株式市場では資産(債券)購入拡大の見送りに失望売りが見られた一方で、ユーロ圏国債市場ではおおむね利回りが低下しました。債券購入の拡大が株式市場の上昇要因という連想が働きやすいことから失望売りにつながったと思われます。ただ、政策全体を見渡すと工夫のあとも見られます。
ECB政策理事会:債券購入拡大は見送るも、長期性資金供給策で金融緩和を強化
欧州中央銀行(ECB)は2020年4月30日に政策理事会の結果を公表し、主要政策金利などについては市場予想通り据え置きました(図表1参照)。
一方で、銀行に長期資金を貸し付ける条件を緩和し、最低ではマイナス1%という超低金利で資金供給が可能となる政策を発表しました。今回の政策はECBがマイナス金利で銀行にお金を貸し出すため、金利負担は中央銀行側にかかることになります。なお、資産購入規模の拡大は見送りましたが、ECBのラガルド総裁は会見で、必要に応じてプログラムを拡大または延長する用意があると述べています。
どこに注目すべきか:ECB、TLTRO3、PELTRO、PEPP、OMT
今回のECBの決定を受け、株式市場では資産(債券)購入拡大の見送りに失望売りが見られた一方で、ユーロ圏国債市場ではおおむね利回りが低下しました。債券購入の拡大が株式市場の上昇要因という連想が働きやすいことから失望売りにつながったと思われます。ただ、政策全体を見渡すと工夫のあとも見られます。
今回注目した点は、長期的資金供給の拡充と、債券購入の方針が若干明確となったことです。まず、長期的資金供給の拡充については、ECBが銀行に長期資金を貸し出す「TLTRO3」の条件を緩和することにより、銀行の貸出促進が期待されることから、利下げのような効果が期待されます。具体的には、ECBはTLTRO3の適用金利をマイナス0.5%へと0.25%引き下げたほか、一定の条件を満たす銀行については、適用金利を預金ファシリティ金利マイナス0.5%つまり、現段階ではマイナス1%としています。
加えて、ECBはPELTRO(パンデミック緊急長期資金供給オペ)を導入しました。5月以降に7度のオペ(資金供給)の実施が予定されています。特色は、TLTRO3のような条件が無く利用できることです。適用金利は主要政策金利マイナス0.25%です。なお、マイナス金利政策について補足すると、預金ファシリティ金利は銀行がECBに預ける際の金利をマイナスとすることで、貸出を促進することを意図していますが、銀行がコストを負うため評価はされない面もあります。しかし今回の政策ではECBがマイナス金利(金利を払って)で銀行に貸すため資金供給を改善させる効果が期待されます。
次に、債券購入は購入額の増額等は見送られました。また、ユーロ圏で著しい信用悪化に見舞われた国の国債を無制限に買う制度であるOMTについて、ラガルド総裁は消極的でした(図表2参照)。反対に、現局面では新型コロナ感染対策で導入されたPEPPを主体とすることを明確にすると共に、場合によってはPEPPの期限(年末)の延長なども示唆しました。OMTは特定の国の支援という意味合いがある中、イタリアとスペイン(さらにはフランス)と多くの国が困難に直面する状況では慎重になる必要があったのかも知れません。または、常々申していることですが、ユーロ圏は財政政策との一体感にもう一歩、改善が必要な中、切り札として残したのかもしれません。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『ECBの決定に市場の不満も見られますが』を参照)。
(2020年5月1日)
梅澤 利文
ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト
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