日経平均株価は節目の2万円を目前に上値が重く、再び跳ね返されそうです。一方、動きが出そうなのは米ドル円であり、徐々に上値の重さがみられ始めました。107円~109円のレンジ相場を下抜ける可能性もありそうです。その背景などを考えてみます。

NY原油先物6月限は-24.56%の下げ幅

4月28日(火)の東京株式市場では、日経平均株価は前日終値を挟んでもみ合いとなっています。節目の2万円を手前に戻り売りの圧力は強く、また、これを跳ね除けて上昇していくにはモメンタムが弱いといった印象です。米国金利上昇を受けて銀行株が堅調ですが、全体相場を押し上げるには至っていません。

 

27日(月)の昼過ぎに日本銀行から追加の金融緩和が公表されましたが、海外の反応は「ない」といった感じです。国債買い入れ枠を上限80兆円から無制限へと変更しましたが、もともと年間十数兆円しか買っておらず、「影響なし」という解釈がマーケットのコンセンサスです。社債やコマーシャルペーパー(CP)の買い入れについても、市場関係者の見方は冷ややかのようです。

 

日本の国会では補正予算についての議論が行われていますが、現在報じられている内容では企業の延命の「足し」にはなっても、物足りないといった見方が海外メディアなどでも伝えられているもようです。

 

新型コロナウイルス感染で休んでいた英国のジョンソン首相が公務に復帰した。
新型コロナウイルス感染で休んでいた英国のジョンソン首相が公務に復帰した。

 

27日(月)の海外市場は堅調でした。米国のNYダウの終値は24,133.78ドル(前営業日比+358.51ドル)で、ドイツなど欧州市場も上昇しました。良いニュースとしては、新型コロナウイルス感染で休んでいた英国のジョンソン首相が公務に復帰しました。首相は今週中にもロックダウン(都市封鎖)の緩和計画を示すと報じられています。

 

一方、気がかりなのは原油価格です。NY原油先物6月限(WTI)は1バレル=12.78ドル(前営業日比-4.16ドル)でこの日の取引を終えています。-24.56%の下げ幅で、不安定な地合いであることに変わりはありません。

米ドル円は米国市場で一時107円を割り込んだ

為替市場において、米ドル円の上値が重くなってきました。2月から3月にかけて10円の下落、そして10円の上昇と乱高下があり、その後は107円~109円の3円の値幅でレンジ相場に移行していました。足もとではレンジの下限に位置していますが、27日(月)の米国市場では一時107円を割り込む場面がありました。

 

米ドル円・日足チャート 【提供:楽天証券マーケットスピードⅡ】
米ドル円・日足チャート
【提供:楽天証券マーケットスピードⅡ】

 

「コロナ・ショック」の相場急変時に、米ドルが全面高となる際の理由(背景)は「ドル不足」でした。戦争や災害などでマーケットが極度に委縮し、「恐怖状態」になると、企業や投資家の多くは資産を売って、米ドルに資金を移します。米ドルがなければ原油や石炭を買えないし、貿易を営む企業は決裁ができません。いわゆる「有事のドル」というものです。

 

これに対応するため、世界中の中央銀行は協調して米ドル資金をマーケットに供給し、マーケットの動揺は収まりました。実需の米ドル需要が薄まり、徐々に米ドルは対主要通貨で弱含んでいましたが、一転して「米ドル余り」になりそうという見方が広がりつつあります。

 

米国のトランプ大統領は「経済再開」の意向です。このところ、新型コロナウイルスの感染者数増加にアタマ打ち感が出ていることもあって、市場関係者や海外メディアの一部も「徐々に再開していこう」という気持ちが出てきているようです。

 

こうなると、持っている米ドルを売って、株や債券、コモディティ(商品)といった金融商品、リスク資産に資金を移していく動きが出てきます。すなわち、米ドル安につながります。先週あたりから、マーケットのムードが良くなると米ドル安になるという地合いです。「リスク選好のドル売り」となっていて、米ドルのひっ迫感は明らかに後退しました。

 

米ドル円は目先で、107円ちょうど付近での攻防になりそうです。上値の重さから買いでは入りにくく、逆に売りで仕掛けるにも買い支えが入りそうで、ためらいます。

 

しかし、107円を明確に割り込むと、ロング(買い持ち)筋の投げ売りなどポジション解消の動きが出るとみられ、下押し圧力は強まりそうです。トレーダーの在宅勤務でもともと相場が薄いところで、日本ではゴールデン・ウィークに入ります。ちょっとした投機筋の仕掛けで相場が大きく動きやすい状況であるため、注意したいところです。

 

※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、著者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

 

 

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