心血管疾患で命を落とすリスクを激減させる方法は?
無数にある心血管疾患ですが、もし命に直接係わる事態が生じるとしたら、その原因はおそらく「血栓」です。
血栓とは読んで字のごとく「血の栓」であり、血管の内部にできる血の塊です。血栓ができると血流が妨げられてしまうため、臓器への血流が足りなくなり、そのことによって致命的な事態が引き起こされるということです。たとえば脳の重要な血管に血栓が詰まると脳梗塞を、心臓の重要な血管に血栓が詰まると心筋梗塞を引き起こします。
したがって、極論ですが、「血栓の形成さえ防げれば、心血管疾患で命を落とすリスクは激減する」ともいえます。では、血栓はどのように作られるのでしょうか?
【まとめ】
・心血管疾患で命を落とす原因の多くは「血栓」
コレステロールが多いと血管に「プラーク」が溜まり…
私たちの血液中には、マクロファージと呼ばれる一種の白血球があります。マクロファージにはいくつか重要な役割があるのですが、血中のコレステロールを「食べる」のもその一つです。
ところが、あまりにも血中にコレステロールが多いとコレステロールを食べすぎて死んでしまったマクロファージの死がいが血管の壁に溜まっていき、血管内に「プラーク」と呼ばれるゴミが作られてしまいます。
歯に溜まる歯垢をプラークと呼びますが、似たようなものだと考えてください。要するに、血管内にゴミが溜まってしまうのです。
ただし、プラークが直接に血管を詰まらせ、臓器にダメージを与える梗塞を引き起こすわけではありません。
このプラークは膜のようなもので包まれているのですが、その膜が柔らかく不安定だと、何かの拍子に破けることがあります。すると、血液内で血液を固める役割を担っている血小板が「あ、ケガをしてしまったな」と勘違いし、血管内にカサブタのようなものを作るのです。これが危険な血栓です。
血栓は、血栓が作られた場所でカサブタとなって血管を詰まらせることもあるのですが、剥がれて血管の内部を漂い、脳や心臓の重要な血管を詰まらせてしまうこともあります。それが脳梗塞や心筋梗塞です。
【まとめ】
・血管内のゴミであるプラークが破けると血栓ができる
・血栓が脳や心臓まで流れ、血管を詰まらせるのが脳梗塞や心筋梗塞
「プラーク」が溜まりやすい人、傾向は?
心血管疾患はたくさんあり、それぞれメカニズムも異なりますが、命に係わる事態を引き起こす原因の多くは血栓です。ならば、血栓に繋がるプラークが溜まることを防ぎさえすれば、少なくとも心血管疾患で命を落とすリスクは非常に低くなります。
そして、プラークが溜まることを防ぐ方法が、私の言う「余裕のある心臓としなやかな血管」を作ることなのです。
プラークが溜まり、血栓が作られやすい状態を引き起こす要因として、現在の研究では
●高血圧
●高血糖(または糖尿病)
●高コレステロール
●喫煙
●肥満
などがあることはわかっています。
前回の記事で「心血管疾患は慢性病である」と書いたのはこのためです(関連記事『「心臓病=突然死」は間違い!誤ったイメージが定着したワケ』)。ここに挙げたような状態や習慣がずっと続くと血管内にプラークが溜まり、血栓ができやすくなるということです。
したがって、心血管疾患の心配がある方は、こういった状態や習慣をできるだけ避けてください。
【まとめ】
・プラークは生活習慣によって作られる
山下 武志
心臓血管研究所・所長